第八話
*田中直樹*
令和7年3月1日土曜日 晴れ
異世界来たーーーーっ!!!!
剣と魔法の世界っ!!
レベルにスキルっ!!
ワクワクしかないっ!!
異世界ってホントにあったのね!!
そんな気持ちを今日から日記にします!!
田中直樹、15歳。
この日記の主人公。
僕はいわゆる巻き込まれだと思う。
卒業式の準備で生徒会室に行った時、視界が急に真っ白になって気づいたら異世界に召喚されていた。一緒に召喚された人がいる。生徒会長と、その取り巻き二人。学校で話した事は無い。自分は陰キャで向こうは陽キャだ。
幸運にも鑑定スキルがあったので皆を鑑定したらこんな感じだった。
ーーーーーーーーーーーー
名前:桐生 隼人(15)
種別:人間
職業:聖騎士
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
名前:早乙女 結衣(15)
種別:人間
職業:白魔道士
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
名前:如月 蓮(15)
種別:人間
職業:黒魔道士
ーーーーーーーーーーーー
僕はこんな感じ。
ーーーーーーーーーーーー
名前:田中 直樹(15)
種別:人間
職業:商人
ーーーーーーーーーーーー
陽キャだからか名前までキラキラしてる。それに引き換え僕の名前は至って普通。職業も明らかに差を感じる。ただ、スキルがど定番の鑑定に収納だ。商人らしいと言えばそれまでだけど、ラノベと言えば鑑定に収納。
『巻き込まれ勇者は外れ職業だが定番スキルで無双する』
こんなタイトルが頭に浮かぶ。ここに追放要素が加われば言う事無いけど、それが無くても十分主人公要素を満たしてそう。むしろ、こんなに分かり易くて逆に怖い。
そんな事よりこの世界!!
色々書きたい事があるけど、今日は色々あり過ぎて疲れてもう限界……。明日からこの世界について書いて行きます!!
また明日。
⭐︎⭐︎⭐︎
令和7年3月2日日曜日 晴れ
とんでも情報きたーーーー!!
今日はお殿様との謁見だったけど、このお殿様、『石川五右衛門』って名前らしい!!
この国は、四百年前に召喚された英雄の一人が造った国『和国』。その人がなんと石川五右衛門で、名前は代々継承され、現在は十六代目石川五右衛門なんだって。ヤバっ。
異世界だから色々構えて聞いてたけど、いきなり斜め上からの情報にビックリ。石川五右衛門って、あの石川五右衛門?
更に更に、石川五右衛門以外に召喚された方々も有名な方がズラり。十六代目が名前と職業を説明してくれたので忘れないうちに書いておくっ!!
・石川五右衛門 忍者
・伊藤一刀斎 剣客
・島左近 将軍
・つちみかどなんちゃら 陰陽師
最後の人は聞き覚えの無い人だったから忘れたけど、みんな歴史上名前を残してる方々ばかり。とても有名と言う訳では無いけど、知る人ぞ知ると言った方達だろう。しかも石川五右衛門が泥棒では無くて忍者だったのはビックリ!! 後は陰陽師。安倍晴明なら聞いた者はあったけど、この方もきっと凄い方なんだと思う。
名前の継承と一緒に、この世界の成り立ちも聞く事が出来た。その話がこんな感じ。
この世界は人族、魔族、獣族、エルフ、ドワーフ等、様々な種族が共存しており、その頂点に龍族が君臨していた。部族間の仲は悪く至る所で小競り合いが起きていた。その均衡を破ったのが龍族の王ドゴラン。突如暴れ出したドゴランが世界の半分を滅ぼした。辺境の地まで追い詰められた各種族は団結し、四大精霊に力を借りるべくありったけの魔力を精霊召喚に注ぎ込んだ。その結果、精霊界を突き抜け異世界の扉を開き、四人の異世界人を召喚する事になった。
異世界人は強く、ドゴランとの闘いは熾烈を極めた。それでもドゴランを倒す事が難しいと判断した異世界人は、ドゴランを迷宮に誘い込み封印する事にした。結果、封印には成功したものの、その代償も大きかった。異世界人の一人はドゴランに結界を張り続け、一人は結界を張っている仲間を守る盾となり、一人は迷宮に出入が出来ないように結界室を作成した。そして最後に残った一人、石川五右衛門がこの出来事を世界に伝え、その迷宮を監視する為に和国を興し、この辺境の地に現在の礎を築いた。迷宮に残った異世界人は英雄として現在まで語り継がれている。
そして今回僕達を召喚したのは、近々ドゴランの封印が解けるので、再度封印、もしくは討伐をして欲しいといった内容だった。
いやいやいやいやいや、無理でしょ。僕達は先代英雄達に比べ、間違いなく地力が劣っている。僕達は戦争や争い事に無縁な日本の学生だ。基礎にあるのはラノベ知識くらい。それがいきなりこの世界の頂点である龍の王、ドゴランの封印や討伐なんてよく言えたと思う。ホント無理ゲー。
早くレベル上げしないとね。ちなみに先代達はこちらの世界に来た時点でレベルが45あったらしい。戦国時代から来た人達だから強いよね。そして現在この世界の最高レベルは40、僕達を召喚したサモナーさんだ。せめて先代達を越えなければ話にならないと言う事で早くレベル上げをしたい。
明日から戦いの基礎を学ぶらしい。色々不安だけど仕方無い。今はこの世界に慣れるのが先だよね。明日も頑張るぞ。