日常
「ねぇ、私の好きな人知ってるでしょ?」
あの時に戻れたらどんなに良かったかなんて
今思っても仕方がないのに
ただあの日に戻れたら
僕の人生はどう変わっただろう?
目まぐるしく変わる日常の中でふと思ったんだ
人生は片道切符だって
何でもない、おそらく大多数の人と同じ生活を送っていく僕のちょっと不思議な物語
僕の名前は山本
社会人2年目である
今日も今日とて会社に行く、満員電車に揺られながら
毎日ぎゅうぎゅう詰めの車内で憂鬱になりながらも
女性が傍にいようものなら痴漢冤罪にビクビクしながら乗っている
過去に目の前で痴漢した人が周りから白い目で見られながら次の駅で駅員さんと女性と降りて行ったのを今でも覚えている
あの時の事が衝撃的で何故か今も忘れられない、自分が何かした訳でもないのに
ましてや本当に冤罪かもしれないのに
そんな毎日である
「あぁ、本当に憂鬱だな・・・
毎日毎日人がパンパンだし、半分くらいいなくなってくれないかな・・・」
なんて思っても仕方ない
傍から見たら僕もその半分なのにね
なんて心の中で笑いながら職場へと向かう
「おはようございまーす」
とりあえずの挨拶
出る杭は打たれると言うが出なければいい
みんなが思う普通の人になりさえすればいい
そうすれば何事もなく一日を無事に終えられる
それが365日続けばいい
その中に小さな幸せさえ見つけていければ後は何でもいい
人並みの人生でいいんだって
でも人並みって何だ?
人と同じ事がそれ程大事な事か?
みんな違ってみんないい、本心はそう
「でもそんな世の中じゃないよね~」
誰に向かって言ってるのか
自分でも笑えてくる
「おはようー、今日もダルそうだねぇ」
そんな声を掛けてくれるのは一個上の先輩、五月さんである
「おはようございます、先輩ダルくない日なんてありますか?」
こうやって僕の仕事は始まっていくのだ
「んや、毎日ダルいよねぇ
でもそれが会社ってもんでしょ」
ごもっともだ、返す言葉もない
「まぁ・・・そうなんですけど」
歯切れの悪い返事
最早この問答やりすぎて定例行事の様になっている
「じゃー今日も頑張りますか」
「はい」
「ーーっ!」
まただ
いつものやつ
いつ来るかも分からないやつ
僕には時々頭を一瞬針で刺される様な痛みに苛まれる事がある
中学生からこの症状との付き合いだ
不安になって病院にも行ったが特に大きな病気ではないらしい
天候だったりメンタルだったり、原因は分からないまま今に至る