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あやかしの薬屋へようこそ  作者: 相楽未音
第四章 薫衣草とカミツレ(ラベンダーとカモミール)
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夕餉まで探します。

母様が書庫から出て行った後も書物を読み漁っていた。目的は紫の花の正体を調べる為だ。ごく最近里に入ってきたのなら、調べやすいのだが、中々見つからない。今日見つからなかったら明日お願いする時に二度手間になってしまう。焦っているのも自分でも分かっている。焦っていては見つけられるものも見つけられない。分かってはいるけど焦ってしまう。


「今日は無理かな…」


そう切り上げて書庫を出る。

こんな時は湯浴みがしたいが、正装は自分一人ではまだ着られない。部屋に戻り冷茶を飲んでひと息つく。


「ふぅ…落ち着いてきた。」


焦っていた気持ちが落ち着いてきた。書庫を調べるのにも限界がある。今日の夕餉の時に御祖父様や父様に聞いてみよう。

そう思っていたら母様が迎えに来た。


「桜花ちゃん、そろそろ夕餉の時間よ。」


「はい母様。今行きます。」


母様と一緒に食事の席に行く。

私と母様以外はもう席に着いていた。


「遅れて申し訳ありません。」


「大丈夫じゃよ。まだここで暮らして2日しか経ってないのだから1人で来たら迷子になるだろう。それに桜花の居る離れは桃花が迎えに行かねば入れないからね。」


「僕が迎えに行くより、桃花さんが迎えに行った方が何かと良いからね。」


御祖父様と父様にそう言われて納得してしまった。


「それでは食べようか。」


「はい。」


御祖父様の一言で夕餉を食べ始める。


「桜花よ。調べ物は進んでいるのかい?」


「はい。1つは兄様の助言で見つけられました。ですが、採取したくても時期が過ぎていまして…」


「ほう。いつ頃採取しなくてはいけないんだい?」


「春の開花前に採取しないとお茶に出来ないそうなんです…」


「花の名前は?」


「カミツレという花なんです。」


「それなら最近東の里で栽培が始まった薬草だね。」


「そうなのですか?」


「うん。僕が見に行った時に採取しているのを見たよ。」


「鋼牙よ。それは今でも採取出来るのかね?」


「出来ると思います。他にも桜花は探しているんだよね?」


「はい。最近里に入ってきた紫の花を探しています。琥珀様が好きだったらしい花なんです。」


「花の名前は?」


「それが兄様も分からないらしくて…」


「もしかして薫衣草かしら?あれも香りが良いのよね。これも東の里で栽培が始まったと聞いたわ。」


「本当ですか!?」


「ええ。桜花ちゃん見てみたい?」


「見てみたいです!」


「しかし桜花をまだ里に出すのは早いのぉ」


「そうね…まだ早いわね。」


御祖父様と母様にまだ里に出るのは早いと言われてしまった。


「桜花は儂の孫娘としての自覚がまだ足りぬ。きついことを言うが、人界で育った桜花にはまだ里に出せるほどの教養が身に付いてない。それ故によからぬ事を考える者もおる。そういった者達から身を守る術すら持たない桜花を屋敷から出すことは今は無理だ。」


御祖父様の言う事は正しい。私は里の事を知らな過ぎるし、親族の顔も分からない。


「そうね。桜花ちゃん、鋼牙さんに採取してきてもらうのはどうかしら?」


「父様にですか?」


「えぇ。鋼牙さんに頼めばここに居てもお茶を作るのも練り香水を作るのも反対しないわ。」


母様の提案。いつもは自分で採取していたが、今回は場所が違う。頼むしかないのかもしれない。


「父様、お願い出来ますか?」


「勿論いいよ。実験もしたいだろうからいっぱい取ってきてあげるよ。」


「そうじゃの。桜花が行くより鋼牙が出向いた方が良いじゃろ。」


「はい。ありがとうございます。」


こうしてカミツレと薫衣草が入手出来ることになった。私が本当の意味で立場を理解出来るまでは屋敷から出してもらえらない事も分かった。もっと礼儀作法や歴史を学ばないといけない。薬師の勉強しかしてこなかった私に原因があるのだから仕方ないことだが歯痒くして仕方ない。そんな夕餉だった。

読んでくださってありがとうございます。

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