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あやかしの薬屋へようこそ  作者: 相楽未音
第四章 薫衣草とカミツレ(ラベンダーとカモミール)
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入浴剤を楽しむ

今回は哉牙の話になります。

桜花が退室したのを見計らって翡翠が戻ってきた。


「哉牙様。何かございましたか?」


「何でもないよ。桜花が来ていたんだ。」


「桜花様がですか?」


「うん。見舞いに来てくれたんだよ。」


翡翠に説明して、桜花が持って来てくれた入浴剤を見せる。


「今日は入浴剤を差し入れしてくれたんだよ。花の形をそのまま使用した入浴剤なんだってさ。」


「これは…珍しい入浴剤ですね。桜花様は凄い方なんですね。」


「目で楽しんで、香りも楽しめるみたいだよ。桜花は発想が面白くて傍で見ていたくなるよ。」


「桜花様に里で暮らして欲しいのですか?」


「いや。桜花には自由に過ごして欲しいね。里で暮らすには向いてないよ。」


「そうなのですか?」


「薬師として生きていきたい桜花に里で孫姫として生きていけるとは思わないよ。僕は時期長として幼い頃から里で暮らしているから自分の立場というものが分かっている。」


僕は時期長として幼い頃から里で生きて学んできたから里での立場も理解ている。だけど桜花は違う。人界で生きてきて偶に里に帰ってくるだけ。それ故に里での立場を未だに理解出来てはいない。薬師として自由に生きてきた桜花には里で規則に縛られながら生きていくのは窮屈だろう。それを狡いと思った事もあったが成長するにつれ、両親が殆ど居ない人界で生活している桜花の方が不便なのではないかと思うようになった。頻繁に里を訪問する両親に御祖父様が居た僕と、あの広い屋敷に1人の桜花。1人だったからこそ自由な発想が生まれたんだと僕は思った。


「哉牙様?」


ふと、考え事をしていて翡翠の存在を忘れていた。


「ともかく桜花には人界でのびのび暮らして欲しいと思っているよ。この入浴剤を楽しみたいから湯殿の準備をしてきてくれるかな?」


「畏まりました。準備してきます。」


この家には御祖父様専用と来客専用、家族専用と用途に分かれた湯殿がある。温泉があるからできる事なんだけど…湯殿が多すぎると思うのは僕だけかな?特に御祖父様専用と家族専用は結界も強く、外敵どころか登録されている者以外入れない仕様となっている。


「哉牙様、この時間は湯殿が空いておりました。入浴剤はこちらを使いますか?」


「うん。そのつもりだよ。」


「分かりました。ではご案内させていただきます。」


翡翠に案内してもらい湯殿に向かう。翡翠はまだ登録されてないので入り口で待機してもらう。

湯船に入浴剤を入れる。すると一度沈んで花が咲く様に入浴剤が花開いた。これは見ていて楽しい。素早く身体を洗うと湯船に浸かる。


「これは…」


花が溶けて匂いが拡がっていく。香りに癒されていく…ここまで計算されている入浴剤は今までにない。そしてこの睡蓮の香りに癒されていく…今まで張り詰めていたものが解されていく感じだ。

ここに来て一度も泣いた事など無かったのに無性に泣きたくなる。これが桜花の入浴剤の効果なのか…あの土砂崩れで琥珀を亡くして柊真を保護した。僕もあの土砂崩れに巻き込まれ怪我をした。妖力を使い過ぎて傷は治ったものの妖力が中々戻らないもどかしさ。

琥珀を助けられなかった悔しさが心に広がっていた。それをこの香りは洗い流してくれるように、僕は涙を流していた。この香りは優しく包み込んでくれるようで、僕の心の醜い部分を洗い流す様に涙が出てきた。

これが桜花の薬師としての能力だと思うと、素晴らしい薬師に成長したんだな。

桜花なら心まで癒せる薬師になれるだろう。そして、柊真の心を癒してくれる事を祈りながら湯に浸かっていた。

読んでくださってありがとうございます。

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