兄様に会いに行きます。
翌朝も湯浴みを済ませて、母様に着付けをして貰う。今日の着物は藍色に桔梗模様だった。今日は兄様と柊真様に会いに行く。
「哉牙は自室にいますよ。柊真さんはこの離れの奥の離れにいます。」
母様に教わってまずは兄様の自室に行く事にした。まだ自室で療養中の兄様。身体の傷は癒えているのか分からないのに入浴剤を届けるのが正しいのか分からない。この間は練り香水を届けたのでもう入浴剤しかない。
「兄様、桜花です。入っても大丈夫でしょうか?」
「入っていいよ。」
兄様の返事を待って部屋に入る。兄様は着流しを着て文机に向かっていた。
「もう起き上がっても大丈夫なのですか?」
「うん。身体の傷は癒えているからね。」
「良かったです。今日は兄様にお土産を持ってきました。私が作った睡蓮の入浴剤です。」
そう言って兄様に入浴剤を渡す。
「これが入浴剤?」
「はい。湯に溶かすと花が開いて少しずつ溶けていって香りが広がる仕掛けになっているんです。」
「桜花は面白いことを考えるね。」
「切っ掛けは藤の花だったんです。」
「藤の花?」
「はい。初めて練り香水を作った時に藤の花を湯に溶かして入ったのが始まりなんです。」
「蓮の花の練り香水が初めてじゃなかったの?」
「はい。急な依頼でしたがちゃんと藤の花の練り香水を作ることが出来ました。」
「そうか…そこから練り香水作りを作るようになったのかい?」
「そうです。今は薄荷の練り香水を作ろうかと考えてます。」
「桜花の発想は面白いね。」
「そうでしょうか?」
「うん。結界や魔除けの意味もあるけど、それを感じさせない練り香水を僕は見たことないよ。桜花の発想は調香師にはない発想だよ。」
「そうなんですね。私は結界や魔除けでも好きな香りを纏いたいと思う方も居るんじゃないのかと藤の花の練り香水を作った時に思ったんです。」
私が練り香水を作るきっかけになった藤の花の練り香水。これを作った後に思っていたことだった。
「女の子ならではの発想だね。薬師よりも調香師に向いていたのかもしれないね。」
「私に調香師は無理です。薬師として生きていきたいですから。」
「そっか。琥珀も似たような事を言っていたよ。」
「琥珀様…がですか?」
「そう。自分には調香師は向いていないってね。」
「そうなんですね。お会いした事はないけど、話しを聞くと薬師向きの方だったのかもしれませんね。」
「そうだね。そういう意味では桜花に似てるよ。花が好きなところとかね。」
「琥珀様は花がお好きだったのですか?」
「うん。良く練り香水をつけていたよ。」
「兄様。辛いかもしれませんが琥珀様が好きだった花を教えて貰えませんか!?」
「…柊真の為だね?」
「はい。柊真様の為に何か出来ないか、少しでも役に立ちたいのです。」
「分かった…琥珀はカミツレを好んで飲んでいたよ。」
「カミツレ…初めて聞きました。」
「まだ人界には中々ないものでね。花が咲く前に採取してお茶にして飲むんだ。琥珀はよく飲んでいたんだよ。」
「そうなのですね…カミツレですか…」
「後は…最近北の里で栽培に成功した紫の花の練り香水を使ってたかな。花の名前は思い出せないけど。」
「本当ですか!?それだけ分かれば探してみせることが出来ます!」
「桜花、無理はしちゃダメだよ?」
「分かってます。それだけ分かればどの辺の本を探せばいいのか分かりましたから無理はしません。」
「それなら良いんだけど…取り敢えずこの入浴剤は今日楽しませてもらうよ。」
「はい。私は書庫で調べてきます。兄様貴重な時間をありがとうございました。」
「また何時でもおいで。桜花なら歓迎するよ。」
「ありがとうございます兄様。では失礼致します。」
こうして兄様から重大な情報を得た私は書庫に急いで向かうのであった。
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