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あやかしの薬屋へようこそ  作者: 相楽未音
第四章 薫衣草とカミツレ(ラベンダーとカモミール)
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兄様と私と翡翠。

大人達が話しをしていた頃、桜花と哉牙と翡翠で楽しく話していた。


「桜花様はいつもは人界に居るのですか?」


「はい。人界で薬師として働いてます。翡翠ちゃんはいつからこの里に?」


「つい最近です。鋼牙様に連れられてここで哉牙(さいが)様のお世話をさせてもらってます。」


「翡翠は訳ありでね。僕の身の回りの世話をしながら今は色々学んでいるんだよ。」


「そうなのですね。」


「だからまだ不慣れな部分もあるけど頑張っているんだよ。」


「哉牙様にそう言われるともっと頑張りたくなります。」


何気に2人はいい感じなのかもしれない。

桜花はそう感じた。

今は家族みたいな感じかもしれないが、それでも良いのではと思う。


「桜花は母様と父様が居ない間も店を開いていたのかい?」


「はい。いつも利用してくださる方が居るので、あまり休まずに店を開けてました。今回は多めに渡して来たので暫くは大丈夫かと思います。それに何かあったら文を飛ばしてもらう約束もしてきました。」


「あやかしが身近にいる人達なんだね。」


「はい。なので何時でも戻れる様にしてあります。」


「来たばかりで帰る話は悲しいよ。」


「兄様…大丈夫です。ひと月分は渡してきたので。」


私がそう言うと、兄様は笑顔になった。


「じゃあ秋祭りまではいるんだね?」


「勿論です。秋祭りに参加するために帰ってきたんです。」


2人で話していると翡翠が疑問を投げかけてきた。


「秋祭りとは何ですか?」


「翡翠はこの里に来たばかりだから知らなくて当然だね。秋祭りとはね、五穀豊穣の感謝を伝える為に行われる祭りなんだよ。毎年巫女役を各家で決めて舞を踊るんだ。今年は桜花かな?」


「巫女役の話しは聞いてないので私では無いと思います。翡翠ちゃんになるんじゃないですか?」


「翡翠にはまだ早いよ。何せまだ尻尾が隠せないんだから。」


「はい…私はまだ上手く尻尾が隠せないんです…」


しょんぼりとして話す翡翠。私は慌てて話しを逸らす。


「秋祭りはまだ先ですからね。それに舞だけではなく、美味しい食べ物も出ますよ。」


美味しい食べ物という単語に翡翠の耳がピンとなった。


「美味しい食べ物ですか!?」


「ええ。美味しい甘味がいっぱい並びますよ。」


「甘味!楽しみです!!!!!」


翡翠の笑顔が戻ってホッとした。

確かにこの笑顔を守りたいと兄様が言ったのも頷ける。

ふと、兄様が真面目な顔をした。


「桜花、僕から頼みがあるんだ。」


「兄様、どうしましたか?」


「土砂崩れがあったと話したろ?実は今、離れに調香師の次代が保護されているんだ。」


「調香師の次代…?」


「あぁ。土砂崩れがあったのは調香師の里だったんだ。当代の調香師は誰だか知っているかい?」


「いいえ…」


「そうか。それなら当代の調香師の事は僕から話せない。だが、次代の調香師の事なら話せる。」


「はい…その…次代の調香師が何故離れに?」


「先代の調香師。次代の父君が土砂崩れに巻き込まれて儚くなってしまったんだ。それで今は離れに保護されている。保護された時は全身怪我を負っていたしね。」


「なるほど…」


「次代はこの屋敷でも1番奥の離れに保護されているんだ。桜花。彼を見舞いに行ってきてはくれないか?」


「事情は分かりましたが、理由が…」


「多分だけど、桜花なら彼の心の傷を癒せるんじゃないかと思うんだ。彼は今、土砂崩れの光景のせいで言葉が話せなくなってしまっているんだ。香りにも効能があると気が付いた桜花なら…」


兄様はそれだけを言うと口を噤んだ。

兄様も無茶な事を言っているのは理解しているのだろう。


「父様と母様に相談してから決めます。」


私はこう返事する事しか出来なかった。


読んでくださってありがとうございます。

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