依頼主の正体
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その頃の鶯亭最上級の部屋
「こちらが桜花さんのお作りになった藤の花の練り香水になります。」
鶯亭の旦那が上客に依頼の品を渡す。
「ほぉ…初めてにしては香りよし、結界の効力も抜群と…素晴らしい出来上がりですね。」
「本当に…素晴らしい出来上がりですわ。」
「やはりお二人の娘ですね。薬師である桃花様と調香師である鋼牙様の才を受け継いでおられる。」
「桜花は鋼牙が調香師だったのを知らないのよ。趣味で作ってたと思ってるわ。」
「そうなのですか。てっきり知っているものだとばかり思ってました。」
「この人ったらワザと教えてないのよ?」
「その方が面白いでしょ?」
そう言いながら茶を飲み干す。
この2人は桜花の両親の桃花と鋼牙だ。
そして今回の依頼主でもある。
2人は桜花が何処まで出来るのか試したのだ。
「ちゃんと助言もしたわよ?」
「あれを助言と言って良いのやら…」
「あれだけで気が付かないのならもう一度修行のやり直しですわ。なんせ私の娘なんですから。」
ころころと笑いながら話す桃花。
鶯亭の旦那はこの2人は娘を可愛がりながらも厳しく指導しているのだなと苦笑する。
「僕も桜花が成長したのが見れて楽しかったですよ。次も頼もうかな。」
「鋼牙様まで…お手柔らかにしてあげてくださいね。」
「可愛い娘ほど厳しく指導するのが我が一族のしきたりですからね。薬師としても調香師としても成長して欲しいものです。」
「桜花ならどちらもいけますわね。本人は薬師として仕事してますけどね。」
「僕はどちらでもいいですよ。桜花がやりたい様にやらせるだけです。」
この2人を両親に持つ桜花の将来を少し心配する旦那様だが、あやかしの調香師がこの町に居るのは有難いと思ってしまう。
3人は楽しく話しながらお茶の時間を楽しんでいた。
ー第二章完―
依頼主の正体は両親でした。
桃花さんはおっとり、鋼牙さんはしっかりしてます。