湯上りのひと時
読んでくださってありがとうございます。
藤の花の湯を堪能して、身も心もスッキリした後は、藍染めの浴衣で身を包み、冷やしておいたお茶で喉を潤す。
火照った身体に冷たいお茶は気持ちがいい。
お茶を飲みつつ夕餉は簡単なものにしようと決めて、雑炊の準備をする。
土間に降りて、狐火で竈に火をつける。
鍋に米と水を入れ、煮だってきたら味噌で味をつけ、葱をいれる。
そこに梅干しをつければ立派な夕餉の完成だ。
「いただきます。」
味噌のいい香りと葱の相性は抜群だ。
時折、梅干しも食べながら雑炊を楽しむ。
質素だが、これが最高に良い。
雑炊をおかわりしながら、梅干しを堪能する。
妖力をいっぱい使った時は何時もより食欲がある。ので、鍋いっぱいに作った雑炊を1人で食べきれてしまう。
「ご馳走様でした。」
あっという間に完食してしまった。
食後にタンポポ茶を飲みながらまったり過ごす。
洗い物はもう少し後でも良いだろう。
そんな事を考えながらお茶を飲む。
今日は伽耶さんの治療が上手くいってよかった。
そんな事を考えながら、2杯目を飲む。
妖力の譲渡は父様から学んだ事だ。
学んだ事が活かせて本当に良かった。
母様は薬作りは得意だが、妖力の譲渡は不慣れだった。
薬作りは母様から、妖力の扱い方は父様から学んだ。
今、あの二人は何処を旅しているのだろう。
冬に入る前に南の方に行くと連絡があったきりなんの音沙汰もない。
そのうちこちらから伝書を飛ばすのもいいかもしれない。
そんな事を考え、洗い物をするために外に出る。
これ以上暗くなると洗い物ができなくなるからだ。
外の井戸で洗い物を済ませ、家の中に入る。
家の中に入って文机を見ると伝言蝶がいる。
伝言蝶とは、あやかし同士で短い文のやり取りをする時に使う妖術のひとつだ。
「誰からだろう?」
伝書蝶を確認すると、藤の花を卸した宿屋の旦那様からだった。
『明日の朝、宿まで来て欲しい。詳しくはその時に話します。鶯亭より。』
「明日の朝…なんだろう。行けば分かるか。」
文を飛ばしてきたということは余程の事なのだろう。私はすぐに返信をした。
『分かりました。明日の朝お伺いします。蓬莱堂。』
厄介なことでなければ良いのだけど…
一抹の不安を感じながら、返信を飛ばした。
~第一章はじまり 完~
ここで第一章は終わります。
第二章は宿屋の依頼から始まります。