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6 , 偵察

Class H201 feel Communication log{


 「おお、ここが万日国の首都か!面妖なもんばっかで面白いな!」


 「ジョイ!そんなはしゃいでたら、バレるでしょ!少なくとも、潜入捜査の目的で来たわけなんだから!」


 そういいつつ、ムーデナもしっかりといろいろな並べられた商品に目を配らせている。


 「ハハッ、ホリメアの人たちは賑やかでいいね。退屈しなさそうだよ。」


 プリンスはそう言うと、近くの装飾品が並べられた店に吸い込まれるように入っていった。


 私がシレネジュイから生還したあと、シレネジュイから友好条約の申請がきた。きっとホリメア国の政府はシレネジュイの軍事力が大幅に弱体化したことを知らなかったのであろう。元々、自国を支配していた国が、頭を下げて条約を申請しに来るといった好機は逃すはずあるまい。きっと二つ返事で了承したに違いないだろう。


 その後、私を助けた万日国の魔法使いの話が上がり、実際何のためにフィールの脱走の手助けをしたのか、分からない現状だった。そのため、今こうして潜入調査を行っているわけだが。


 「うちの隊長も大して変わらないけどね。君はいいの?折角の自由に外を動ける機会なんだし、その辺でアイスクリームなんてどう?」


 「馬鹿、私たちが人の食いもん食ったら死ぬだろ。」


 「おーい!フィールー!ダルヴァー!ローズー!プリンセスへのお土産としてネックレスを買いたいんだけど、どれがいいと思うかなぁ!」


 プリンスに呼ばれたため、近くへ寄りネックレスのほうを見てみると、どれも高額なものばかりだった。


 「また司令官へのプレゼント?以前プレゼントをあげた時に、もう要らないと遠慮されたのを忘れたのかよ。...ていうかプリンス、これ経費で落ちると思ってんの?こんな高いもん買ったら逆に司令官に怒られるのは明白だろうが。」


 ローズがそう言うと、ダルヴァが満面の笑みで自身満々に回答する。


 「買える手段なら一つあるよ!全員の燃料費で賄えばいいのさ!」


 「アンタそれ、実質食費を削れって言ってる?それで私たちの燃料が尽きたらどうしてくれんのさ。」


 「さぁ?その時はプリンスに全員担いでもらったらいいんじゃないかな?」


 「アハハ...ネックレスを買うのは諦めようかな...。」


 するとちょうど買い物を終えたムーデナとジョイが合流してきた。


 「見てくれよ!この置物、日が当たってる間は首をずっと振っているんだぜ!?面白いよな!」


 「全く...。余計なものばっかり買ってると、すぐに渡されたお金が底をつくわよ?」


 と言いつつ、ムーデナも二等身の犬だか猫だかどちらとも見て取れるようなぬいぐるみを買っている。


 「そういえば、第三小隊にはもう一人いたようだけど、その人はどうしたんだい?」


 「あぁ、デタールネは指揮官から何日も離れるのが耐えられないって理由で来てないわよ。全く、こんなに楽しいんだから来ればよかったのにね。」


 「ハハッ、面白い考え方だね。僕もプリンセスとの通話ができないってなると、来ないかもね。さて、そろそろ本題として今回の潜入調査の話に入るわけだが...」


 「お前たち、ちょっといいか?」


 突然背後から声がして、すぐさま振り向くと、そこには黒ずくめの顔を隠した大男が立っていた。


 「お前たち、この国の者か?さっきから見ていて怪しいと思っていたのだが、まさか他国から潜入した者ではあるまいな?」


 まずい、バレてしまう。ここから私たちが人間だと証明できるものはないし、もし万日国の魔法使いだと嘘をついたとしても、製品番号を読み取られれば知られてしまう。


 「いやっ、私たちは決して変な行動はしてませんし、決して魔法使いなんかじゃ...」


 ムーデナがしどろもどろになりながら言い訳をしている途中、プリンスが手をかざしてムーデナを制止させる。


 「彼らは、急ぎの用事があって今すぐにでも移動しなければならないのです。私が証明してみせますので、彼らは見逃してください。」


 「...良いだろう。では、お前の生体認証をさせてもらう。」


 プリンスは逃げるよう目配せをする。


 「今だッ!散れッ!」


 プリンスの号令で私たちは散り散りになる。路地裏まで逃げてきて、気が付くと近くには誰もおらず一人だけとなった。


 一刻も早く、皆と合流しなければと思考を張り巡らせていると、一つの人影がこちらを覗いた。私はすぐさま警戒態勢に入る。


 「ああ、いたいた!大丈夫だよ、君の敵じゃない。ほら、こっちにおいで。匿ってあげるから。」


 先ほどの黒ずくめの男の声ではなく、若い女性の声のようだ。近づいてみると、煙草を咥えた青い髪の女性は手を差し伸べていた。









 「君のことは事前に知ってるよ、フィール。君とは一度話してみたかったんだ。」


 そう言い、店頭のレジの椅子に座って机に脚を置き、さっきからと同じペースで煙草を吹かす。周りを見ると、刀をはじめとした、銃、槍などいったものが飾られている。


 先ほど手を引かれ、連れてこられたここは、どうやら武器屋のようだ。


 「自己紹介がまだだったね、私の名前は" 藍園 希実 "、ここ、武器屋ホーリーレリーフの店長だ。んまぁ、武器屋を名乗っている割には、どちらかというと機械修理の方の仕事のほうが多く来るんだけれどねぇ。」


 そう言いながら、一呼吸するように煙草を口にする。すると、店の裏側につながるであろう暖簾の奥から、声が聞こえた。


 「...希実さん、お客さんがいるときくらい、煙草は止めませんか?」


 暖簾の奥から、一人の女性が姿を現した。彼女の姿が、妙に見覚えがあると考え、すぐに答えが出る。


 「貴方は脱走の時の...!!」


 彼女は、私がシレネジュイに幽閉されたとき、助け出してくれた魔法使いだった。


 「あ、誰かと思えばフィール君だ。久しぶり、調子はどう?」


 彼女は少し頬を綻ばせて、嬉しそうに手を振る。


 「あの後メンテナンスしたから、後遺症とかは特になかった。ありがとう、ええと...」


 何て呼べばよいか、言葉に詰まっていると、希実と名乗る人物が口を挟む。


 「この子の名前はネフェムだよ。なんだ、教えてあげてなかったんだ?」


 「だって、依頼対象とは言え、少なからず味方ではない人ですよ?尻尾がつかまれたらどうするんですか。」


 「アハハ、律儀だねぇ。そういや言ってなかったけれどあの依頼、私が個人的に君にお願いしたの。だから別にフィールに情報握られたところで、フィールがここにやって来さえすれば結果オーライだったわけよ。」


 「...はぁ、それなんでもっと早く言ってくれなかったんですか。もし希実さん直々にお願いされたのであれば、もっと慎重に事を進めていたのに...。」


 「それだと、見ているこっちがつまんないじゃないか。それに、この世界で生き残るには勢いと衝動性が大切なんだ。考えるよりも先に、手を動させってね。」


 「勉強になりますッ!!」


 ネフェムはそう言い、紙とペンを取り出し、メモを取り始め、その行動に対して希実は爆笑している。


 「...サポートシステムログに記録したほうが早いと思う。」


 「フィール君はわかってないなぁ。形あるものに残さないと、自身という存在が消えた後も言葉が残らないじゃないか。世の中、タイムイズマネーなことばかりではないんだよ。全く、これだから国の犬は...。」


 そう言い残すと、ネフェムはメモを取ることに集中する。ふと彼女の書字をのぞき見すると、私の目から見ても何を書いているのかわからないほどのミミズの這ったような字だった。


 笑い終えた希実は、先ほどと同様の笑顔で私に話しかける。


 「さて、フィール。君に込み入った相談がある。少し時間をくれるかい?」


 「私は、仲間と合流しなければならない。いますぐにでも出なければ...。」


 「ああ、あの男は私が君をここに誘導したいがためだけに、外部から雇った人間だ。君のお仲間さんたちは、今頃適当にその辺をウロウロしているだろうねぇ。」


 この様子ではきっと、無理に立ち退こうとしても、なにかしらで制止してくるだろう。


 「...要件はなに?」


 「おお!聞いてくれる気になってくれて助かるよ!」


 そういうと、またしても一息と一服をする。


 「単刀直入に言うとね、君さ、うちに転隊しない?」


 急に言われたことに、私は困惑を隠しきれなかった。魔法使いというものは、使われる身ということもあって、転隊なんて事例、聞いたことがない。ましてや、魔法使いによる自由意志となると...。


 「私は見てもらったら分かる通り、武器屋を経営していてね。より、客層に寄り添った製品を作るのにはデータが必要なんだよね。そこで君だ。これから君に内蔵されてあるマーリンR.O.S,2.0が主流になっていくにつれて武器自体も進化していく。そんな中、君には傭兵としての集金兼実験を手伝ってほしいんだ。」


 「...私の代わりは、これからいくらだって出てくる。」


 「いいや、これは君だからこそ、君にしかできない仕事だ。それに、私のところは国にも軍にも属していない。いわば企業の傭兵ってわけ。ここに属すれば、少なくとも今ある戦争には関与しなくても良くなるわけだ。どう?いい条件だと思わない?」


 「...申し訳ないけど、今はそれを決められない。返事は保留させて。」


 「あら、振られちゃった。まあいいや、後々返ってくる良い返事を期待しとくよ。ああ、勿論のことお客さんとしても大歓迎だからね。」


 希実は笑顔でそういうと、また煙草を咥える。


 店から出ていこうとすると、希実は引き留めるように私に話す。


 「ああ、そうだ。君に紹介したい人物がいるんだ。お仲間さんと一緒にでもいいから、会いに行ってみてくれるかな?話はこっちで通しておくよ。」


}

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