プロローグ
はじまりは、七年前のことだった。
人類は、ある日を境に、魔法少女を目撃するようになった。それは、世界を守るべくしてもたらされた力、すなわち魔法使いという存在を認知した。
程なくして、一国は魔法少女の捕獲に成功し、幾度となく実験を繰り返されるようになる。
魔法少女の人体実験から、人を疑似的に妖精化させるワクチン、「フェールライド11.25」の開発。そして、人をフェールライド接種者の配属下になる魔法使いと化すワクチン「マーリンG.O.S」の開発に成功。
マーリンG.O.Sの完成により、魔法使いを使用した、国同士の戦争が勃発。やがて国は統合されていき、「万日国」、「シレネジュイ」、「ホリメア」、の三か国が誕生する。
軍事的戦力を持たないホリメアは、シレネジュイは同盟を結び、一時的な休戦状態へと移行する。
その後、ホリメアは、シレネジュイとの戦争で戦死した魔法使いを基に人工義体、それに伴った人工知能を開発。また、マーリンG.O.Sを元に、人工知能に魔法使いとしての遺伝子を入れ込み、また、喜怒哀楽といった感情を魔力に変換できる、「マーリンR.O.S,1.0」を開発。
マーリンR.O.S,1.0によってシレネジュイは魔法使いの更なる人員増加によって、戦争に終止符を打つ手前まで来たが、万日国はシレネジュイとの戦争のさなかに、機能停止した人工魔法使いを回収し、能力の処理係数を向上させた「マーリンR.O.S,1.4」を開発することに成功。形勢が一気に万日国に傾いた。
この戦況の変化に、シレネジュイはホリメアが万日国に情報を売ったと勘違いをし、同盟は破綻し、ホリメアは意図せず独立国となる。
双方の国と敵対関係となったホリメアは、緊急対策として、マーリンR.O.S,1.0を軸とした「国家魔法軍事戦力部隊」を結成。
その一年後、戦争が停滞状態となっている中、ホリメアは「マーリンR.O.S,2.0」を開発。これまでのマーリンR.O.S,1.0は、一つの感情を変換することしかできないのに対し、マーリンR.O.S,2.0は複数の感情を変換させることが可能に成功した。
人類初であるマーリンR.O.S,2.0の導入機体、H201/CNフィール。
彼女は、プロトタイプ故に感情が乏しく、本来であれば廃棄されるはずだった。だが、ホリメア国第三小隊司令官のアランが、彼女を引き取り、第三小隊隊長として第三小隊に加入する。
* * *
Class Alen Communication log{
「初めまして。僕は、ホリメア国第三小隊のアランだ。これから君には、僕の部隊の隊長となって、国のために戦ってもらう。
きっと君は、これから度重なる運命と直面するだろう。心が折れそうになった時、この言葉を胸に刻むといい。
"己の枷を見つけろ、死が訪れるその時まで。"
これは、私の友人の言葉だが、良い響きだろう? それに、きっと君たち魔法使いこそ、この言葉に適した人物はいない。
さて、起動前のブリーフィングは、以上だ...
ああ、そうだ。君には、まだ、名前が必要だったね。では、命名しよう。
フィール。これから、ここでの君の名前は、 "H201/CNフィール" と呼称させてもらうとしようか。
意味かい?そうだなぁ...。
君は、まだ、感情が乏しいものの、これから様々な経験をするだろう。そんな経験の中で、培ったものを感じてほしいんだ。
意味がよくわからなかったかい?
時期にわかるさ。きっと、僕たち人間よりも、ずっと深くね。
さて、今度こそ起動前ブリーフィングを終わりにしようか。
これからよろしく、 "フィール" 。」
}