第七話 "騎士"
アインの立てた策は単純な物量作戦であった。
...いうは易しと言うのはこの事だろう。実行するには余りにも人数が足りなかった。
理由は、今ティーバ様は、遠征中だからだ。
遠征の理由は単純だ。...かつてアヴァロンの地を蹂躙しようとした...
"悪神"メビウス
その悪神を蘇らせようとしている"転生教団"。
そいつらの居所が割れたからだ。
...別に存在しているだけなら、国が手を出す事態にはならない。...この教団は、盗賊よりもタチが悪い。
物を奪う為でもなく、脅されているからでもなく人を殺す。子供を攫って、傀儡にする。
その理由は..."どうせ死ぬから"と言うふざけた理由だ。
そんな連中だから、国に狙われる。
だか、もっとタチが悪いのは強いと言う事だ
だから、ティーバ様が出向く事になった。
...教団との戦いは熾烈な物になる。そうなれば自然と戦争に必要な人材が増える。
...恐らく盗賊は、騎士達が出払ったこの隙を狙っていたのだろう。そうじゃなければ辻褄が合わない
だからアインは、自分達でやるのではなく国民にも手伝ってもらうという、ある種恐ろしい作戦を立てた。
国民の情報の伝達は、俺達騎士が思ってる程甘い物ではないそうで、探し物をみんなに頼んだら数日中には絶対に見つかるぐらい早い物だと言っていた。
...俺は、情報の伝達よりも人の数が恐ろしいと思った。
どれだけ優秀な騎士といえども、結局は一人。一人でやるにはやはり限界がある。
...騎士に限りはあるが、民の数の限界は騎士の何倍もある。そんな数相手に逃げれる者は、限られてくる。
一体、何をしていたらそんな恐ろしい作戦を立てれるのか。...こっちのプライドのことは、全く考えていないが...
「まぁほら!姫が攫われるっつうミスを犯しといてプライドもクソもねぇってやつだよ!」
「しれっと人の思考に口を出すんじゃない!!」
...はぁ、無駄に勘がいいんだよな、こいつは。
「まぁまぁ、そうカリカリしなさんな!」
「誰のせいだと...」
「きっと見つかるさ!...見つけるさ。」
「...ふっ...」
その余裕は、何処から出てくるんだか...
「アイン殿!シュイノ殿!」
「ん?」
「なんだ?」
騎士がこちらにやってくる。...その表情は喜びよりも驚愕の方が勝っていた。
(まさか...ティーバ様が戻って来た?)
だとしたら、心配することはない。あの方だったら絶対にエリーテ様を見つけるだろうから。
「なんだ?なにがあったのだ?」
「そっ、それがっ!」
「何だよ、さっさと言えよ?」
「エリーテ様が帰って来ました!!!」
「「.................はぁっ????」」
「...えっとここなの?」
「うん!ここがおうち!!」
「......マジで?」
「まじ!」
...話は聞いていた。聞いてこう思っていた。
あぁ、この子はあれかな?城下町ってところの子なのかな?と
"それにしては、服がいいものだよなぁ"とも思っていた。簡素なものではあったが、多分良い布を使ってると言うのは分かっていた。だから、"貴族"と言うものかと思っていた。...まぁ、違ったけど。
...それにしても....それにしても.......
これだけは予想外だった。
...だって..........
聞いたことないよ!!!?
城が家だなんて!!!!!
「...?どうかした??」
「....はっ!....ナンデモナイヨ!!」
「うんなんかあったねそのかたことは!!!」
あ...あっぶない...!動揺しすぎて意識が吹っ飛ぶ所だった...!
「あの...えっと..あれかな?...第二の家ってやつ?」
...さすがに僕でも知ってる...城を家って言える人はまず攫われるなんて事絶対にない!!流石にない!!!
「?いや、おうちはここだけだよ?」
あぁ、これが......
"そんな風に思ってた時期が
俺にもありました"
...ってやつかぁ....
「エリーテ様!!!」
「エリーテちゃん!!!」
「あっ!シュイノ!!アイン!!」
................................
「ご無事でしたか!?」
「うん!」
「怪我とかはないよな?!?!」
「ないよぅ!だいじょうぶ!!」
.........................................
「帰って来たと聞いて急いでやってきたのですが...」
「あっ、そうなの!いやぁ、にんきものですな〜ワタシ!!」
「いや、悪い意味でだけどね」
「アイン!!余計なこというな!!!」
.......................................................
「ところで...そちらの子供は?」
「....おい、コイツ固まってねぇか???」
「へっ?...あれ、ティーザくん?」
............................................................はっ!
「でびるまーーん!!!」
「ひゃあ!?」
「なに?!」
「おわっ?!」
......しまった。衝撃を受けすぎて訳のわからん事を...
「あぁいや申し訳ありません突然膨大な情報量を頭に叩きつけられてしまい少し困惑してしまって訳のわからない事を言ってしまい誠に申し訳ございませんでした。」
「お、おぉそうか...」
「ものすんごい早口だったな...」
「すごいね〜!」
あぁ凄いでしょう?もっと褒めなさい、だってこれを言わせたのは他でもない君なんだからね!!!
「ふたりとも!このこがたすけてくれたんだよ!」
エリーテがシュイノとアインと言う人らに僕の事を紹介してくれている。
...この二人の格好、もしかして...
「...こんな子供が...?」
「シュイノ、ティーバ様の例があるぞ。」
「あぁ、それもそうか...いや、だとしても...」
「言いたい事は分かるけど、侮辱になるぞ〜」
...ひょっとして、ちっちゃいとか言うつもりだったのだろうか?...なくよ?
「...姫を助けてくれてありがとう。
私は騎士のシュイノだ。」
「同じく騎士のアインだ。エリーテちゃん助けてくれてありがとな坊主。」
! やっぱり...これが妹がなりたいって言ってる...ってか今さらっと姫って言葉が出たなやっぱりか!!
「おいアイン!バカにするなと言っておきながら何を言っているんだ!?」
?...どうしたんだろうか?シュイノと言う騎士の人が大砲のようにボンと怒り始めた。
「はぁ?お前こそ何言ってるんだ?俺何も言ってねえぞ??」
そうだ、アインさんは何も間違ったことは言っていない。...一体なにで怒っているのだろう?
「バカ者!!!」
「女の子を坊主と呼ぶか普通!!!」
...................................................................
「......そんなんだからモテないんだぞおまえ...」
「はぁ?!何をいっている!!!」
「コイツ男だぞ。」
「...............えっ???」
「いや、勘違いするのはわかるけどよ...その間違いはないわ〜」
「えっ......いやだって......えっ?」
あっどうしよう...急に涙が溢れて来た...
「あぁ〜あ泣ぁかせた泣ぁかせた、ティーバ様に言いつけよ〜」
「いやいやいや?!?まて!!...えっ!?本当に?!!?」
「いや、俺も驚いたけどよ?...えっこんな可愛い坊主この世にいたの!?とは思ったけどさ〜。」
「えっ、まって?!え、エリーテ様!?本当ですか!??」
「...だいじょーぶ!...ワタシもまちがえたから.....」
「あっ.....えっと...............少年、あの......申し訳ない......」
...........................
「ダイジョーブ!ゼンゼン!!キニシテナイカラ!!!!」
「わぁ!たいへんだ!?きずついた!!!」
「えっと......泣き止んだ?」
...情け無い...涙が止まらなくてエリーテに心配されるなんて...
「......ありがと.....」
「どーいたしまして!」
あぁ、本当にこの子は優しいなぁ...
シュイノさんはアインさんに怒られているようだ。
でも怒鳴ると言うより、諭す様な言い方だから、シュイノさんは、結構キツそうだ...
...何でこっちに来てから、こんな目にあうんだ...?
「あ、もどってきた!」
二人が帰って来た。...アインさんがシュイノさんの首根っこ掴んで。
「わりぃな坊主!コッテリ絞っといたから!!...ほら!」
「ホントウニモウシワケナカッタ」
結構ヤラレたのか、片言になっていた。
「あぁ...大丈夫ですよ...本当に......」
「......まぁそうなら良いんだけどさ。」
エリーテはシュイノさんの介護に行った。...いや本当に優しいなこの子!?
変なのに騙されなきゃ良いけど...
「そういやアンタの名前を聞いてなかったな?坊主、名前は?」
名前を聞かれた。そう言えば、この人達は言ったけど僕はまだだったな...
「そうでしたね、すみません忘れて...」
「あぁ、気にすんな!ほぼアイツが悪いから!!」
...この二人、仲悪い様に見えたけど、実はいいのかな?
「んで?名前は?」
「はい、ティーザ・ザナルカンドです。」
「......なんだって?」
途端、アインさんが固まった。