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第四十三話 "やみ"


 「.....は?」



 目の前に現れた男が、妙な事を言っている。

 こちらを混乱させる様な事は思ってない。.....純粋な疑問だ。



 「.....何言って」

 「お前ら、白蛇殺しは何処に居る?」


 いや.....僕がその白蛇殺しなんですけど........と言うか、この男は何なんだ?


 突然喜びながら現れたと思ったら、疑問を抱いてきて質問してきて......いや待て?



 (何でこの子娘が白金の証を持ってんのかは知らねぇが、王女が外に居るって事は、絶対どこかにいる筈.....何でこの場に居ない?)



 .....この人、本気で僕がそうだと思ってないな。


 ..........てか、子娘って.....



 「.....何でアンタらの質問に答えなきゃいけないのよこの変態ども!!!」



 フェトカさんが反論した。.....かなり強い口調で。



 「ちょっ!?フェトカさん!刺激する様な事は!!」


 「はぁ!元々私を人質にしてお金ふんだくろうとした連中を、何で攫われた私が気に掛けてやらなくちゃいけないッ!!」



 いや、確かに貴女の言う通りだけど.....この状況でそれする!?

 この発言で奴が逆上なんかしてみろ。リフトに乗ってるから狭い空間で戦う事になる。そうなってしまったら、貴女の身の安全ほぼ無いですよ!?



 「え何?アイツらそんな事しようとしてたの?.....ったく、やめときゃ良い事を何でやるかなアイツら.....」



 ?.....同じ盗賊だと言うのになぜ事情を知らない?

 さっきだって、捕まえてるのは一人じゃないのかなんて言ってたし........



 (ったく、金に釣られて来たが.....思った以上にめんどくせぇ事になって来やがったぞこりゃあ......)



 「.............!」


 「おい盗賊!しらばっくれてんじゃ」

 「フェトカさん、ちょっと待って。」



 この人.....何で事情が曖昧なのかが分かった。この人も傭兵か!


 だったらまだ何とかなるかも知れない。本人もフェトカさんを捕えてることに抵抗感を持ってる様だし、説得できれば寝返らせれるかも!



 「.....あのさ。お金が欲しいなら王国側についた方が絶対に良いと思うけど?傭兵殿。」


 「ん?.....あぁ金ね。」



 大方、依頼を最後までやれば大金をくれてやるとか言われてるだろう。...だが、たかが盗賊。国が寄越す準備用の金に匹敵するぐらいの報酬なんか用意できない。

 金目当てだったら、こっちについた方が遥かに良い。盗賊側につく程のリスクもない訳だしね。



 「ん〜.....悪りぃがそれは出来ねぇ!前金を貰ってるし、ダチの頼みってのもある。流石に裏切るわけにゃいかねぇ。」


 「.....は?」



 嘘だろ?この人今.....()()()()()()()()()()()()()()()()()


 .....傭兵は金で動く存在。金を多く出す方に付く。.....だと言うのにこの人.....前金を貰ったと言う事実より、友達の頼みを聞いてやりたいと言う願いの方が強い。


 .....そんな義理堅い奴...傭兵にいたのか.......



 「それに何より.....へっ。ここに来てるであろう白蛇殺しに用があるのさ!」


 「.....白蛇殺しに?」



 用だって?



 「.....いらん質問とは思うけど、何の用なの?」


 「んまぁ.....もう意味の無い自己満足さ。」



 .....この人、僕に用があるってのは本当そうだけど.....何だろう。聞いたらあまり良くない予感がする。


 .........こうなったら。



 (フェトカさん。聴こえます?)


 「ぅえ!?何??!」



 心の中で、フェトカさんに話しかける。



 (声は出さないで!!.....今からこの男に奇襲を仕掛けます。ゆっくりと後ろに下がってください。後は僕が何とかします。)


 「えっ???.....あっと......」(わっ.....分かった.......これでいい???)



 よし、伝わりはしたな。


 目配せをして、男に話しかける。



 「.....分かった。白蛇殺しに会いたいのなら会わせよう。」


 「おおっマジか!やっぱいると思ったんだよな!んじゃあ呼んでくれよ!!」



 .....相変わらず、僕がそうだとは気づいてないんだな。.....そんなにイメージと違うのかな。


 まぁ、そんなことはどうでも良い。



 「いや、呼ぶ必要はないよ。」


 「?.....でも何処にも」




 ダバッ!!!




 一歩目で剣を構える。



 「いなっ!!??」




 ダバッ!!!



 二歩目で男の前に立ち。



 「カアッッ!!!」




 ビィアッッ!!!




 袈裟斬りを放つ。


 世剣の一撃は重い。それはシュランゲを吹き飛ばした時に実感してる。だったら上段斬りで仕留めた方がいい。


 重量を被せれるから、防御の意味を成さない。そう思っていた。




 「うぉぁっ!!!!」



 ガゴォォンッ!!!



 「なっ!?」




 だが、防がれた。


 いや、確かに奇襲は成功していた。相手に防御をさせれたから、後はそれを上から無理矢理叩き崩すだけだった。


 .....だが、防がれた。手加減したとはいえ、世剣の一撃をだ。



 ガラァァッ!!!



 「ちょっ!?うわぁっ!!!」


 「っ!?」

 


 それ以上に妙なのは、リフトが突然揺れたことだ。


 確かに強く叩いた。だがそれは、男に対してのものであってリフトにはしていない。.....なのにまるで、僕がリフトをぶっ叩いたのかと思うほど、リフトが大幅に揺れた。



 「ちぃっ!!」



 揺れで体勢を崩した僕に、男の蹴りが迫る。


 回避はできない。だから防いで受けようとした。




 ドパァァンッ!!!



 「!?おわっ!!?」



 男の蹴りを喰らった僕は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 ガシッ!




 「ッ...!!」



 リフトから転がり落ちそうになったのを、手で淵を掴んで防いだ。



 「今のは何だ.....!?」



 淵から上がってきて、状況の整理を始める。


 今受けたのはただの前蹴り。あくまで距離を取る為の蹴りの筈だ。


 .....なのに吹っ飛ばされた。腰も入ってない、脚を前に突き出しただけの蹴りでかなりの距離を飛ばされた。普通じゃあり得ない。.....つまり。



 「..........能力持ちか!」



 吹っ飛ばされはしたが、威力が無かった。あの不思議な感覚は、能力でないと説明がつかない。




 男は驚愕している。


 まるで、目にした噂のものが想像してたのと全く違ってた人の様に。




 「.....おいおいおいマジかよ..........そうなのか?」



 男は驚愕の表情を浮かべて、僕に質問してくる。.....未だに信じられないのだろう。


 だから、ここは真実を話すとしよう。



 「あぁそうさ。........子娘じゃなくってごめんね。」



 皮肉を返す。.....割と気にはしてるから。



 「....................信じられねぇが.........あの一撃じゃ信じるしかねぇな.....」

 「そうさ。何を疑う必要がある?」


 「いや............子供ってのは知ってたが.....流石に予想外過ぎたと言うか.......」



 .....そんなにイメージと違うのかな.....僕?



 「なに?勇猛果敢な少年を意識してたのかい?」


 「あぁ.......少なくとも、女子と見間違えるぐらい美しい少年だとは思っては無かったな。」



 .....あれ、純粋に褒めてる?バカにしてないな?.....まぁいい。



 「.....一応、褒め言葉として受け取っとこう。.....それじゃ本題。」



 この人は要件があると言っていたからな。それまで無碍にする訳にはいかない。



 「.....僕がティーザ・エリン。この世でたった一人.....とはいかなくなったけど、特級傭兵だ。」



 一応名乗る。一騎打ちに臨む騎士の様に。



 「それで?.....僕に何の用?」



 男の目を見据えて、話をする。



 「えっ.........ヴォルク・リコゥスだ、宜しく頼む。」


 「別に名乗れとは言ってないよ?」



 用件を言うのかと思ったが、突然名乗り始めた。.....まぁ、こっちとしてはそれでも良いんだけど。



 「あぁいや。.....これでも元騎士なんでね。名乗られたからには名乗り返さなきゃあ気持ち悪くってな。」


 「!.....そう。」



 騎士?この人が??


 .....嘘ではない様だけど、騎士さのカケラも無いぞこの人。なんかお酒臭いし。



 「.....昔の事は知らないけど、今はお互い傭兵なんだ。気楽に話そう。.....それで、何か用でもあるの?」



 話を本題に戻す。友好的に見える様に話しながら。



 「大分冷たいなオメェさん...........あぁ、ある。かなり重要なのがな。」



 男.....ヴォルクはこちらの目を真剣に見て、話し始めた。



 「だが、ここでは詳しく話せねぇ。そのぐらいの依頼だ。」



 .....この男の雰囲気から察するに.....



 「.....暗殺ならお断りだよ。」


 「まさかだろ。アイツの様な事してたまるか。」



 静かな.....強烈な怒りを込めて、その言葉を吐いた。


 まるで.........憎み足りない者を見てしまった時の様に。



 「依頼はある所の襲撃。そこを襲撃し、ある男を殺す。オメェさんはその襲撃だけをやってくれれば良い。ただそれだけの依頼だ。」



 ヴォルクは突然、仕事の話をし始めた。だが.....高みの見物をするつもりもない様で。



 「.....殺害は君がやると?」


 「そうだ。.....これだけは俺でなきゃいけねぇ。」



 .....この人.........ただの飲んだくれじゃない。相当な覚悟を持ってる。



 「ふーん.......仮に僕が受けるとして、何処を襲撃するの?」


 「それは.....今言う訳にはいかねぇ。そのぐらい重要な場所だ。」



 .......今、フェトカさんの方をチラッと見たな。


 人は都合の悪い物を気にすると、無意識にチラリと見る事がある。今のヴォルクの反応はまさしくそれだ。フェトカさんに聞かれたら大変な事になるのだろう。


 ........そのぐらい、本来なら襲っちゃいけない場所って事か.......



 「........お金は?僕に頼むってなると、相当かかるけど?」


 「すまんが金は払えない。.....完全な慈善事業さ。」



 この感じ.....かえって開き直ってるな。


 どうせ断られるだろうって感じだ。..........なら、断ってみるか。



 「.....保留にさせて貰おう。お金も出ないのに危なっかしい事出来るものか。」


 「まぁそうなるよな。.....だったら。」




 バビョォオ!!!




 「うっ!??」


 ヴォルクが急に飛んだ。その衝撃でリフトが大きく揺れる。


 顔を上げたら、ヴォルクはそこに居なかった。



 「こうしたらどうだい?」



 背後からヴォルクの声がする。


 .....あらかじめ感じ取れてはいるが、速い行動だ。恐らく、最初からこうするつもりだったのだろう。



 .....ゆっくりと背後を見ると。



 「だっ.....!!うっ.......!!?」


 「ダメなもんだと思ったが、案外イケるもんだな...!」



 フェトカさんを脇の所で締めているヴォルクが居た。



 「........人質って訳かい?」



 一番意味の無い行為だ。.....と言うか、わざわざ人質を取るか?さっきので襲い掛かれば良かったのに。



 「んまぁな!.....これなら、オメェさんに手を出される心配なく話が出来る。その上、アンタも首を縦に振るしかなくなるだろ?」



 ほう?僕を脅すか。.......面白い男だ。



 「そこまでして、僕を働かせたいと?.....はっ。寝言も大概にしておけ!脅しで働くものかよ。」


 「おいおい。誰が『姫を解放する代わりに働け』なんて言ったよ!そんなこたぁしねぇ!.....第一、脅して働かせた所で、アンタに速攻裏切られてお終いさ。そんな事にはなりたくねぇ。俺はクリーンな契約をしてぇのさ!」



 行動の割には大分真っ直ぐだなこの人。.....何でこんな人が元騎士なんだ?







 「へぇ?人質取っといてよく言うじゃないか。.....んじゃあ、ここからどうやって綺麗な話に持ち込むと?」



 だが、人質を取られている事は事実。油断は一つたりともしない。




 「簡単さ。.....今から、俺と決闘をしてもらう。」



 ヴォルクが出した条件は、僕との決闘だった。



 「決闘...?」


 「あぁ。簡単だよ。今から戦って、俺が勝ったらオメェさんは俺の依頼を聞く。負けちまったら俺は姫さんを解放する。.....どうだ?」



 .....聞く限りでは、マトモな決闘内容に思える。........だが。



 「ふざけるな。.....決闘ってのはお互い同条件で戦うからこそ成立する物だ。」


 「あぁ。だから互いに能力は使って」

 「君の方には最強の盾(フェトカさん)がいるじゃないか。それが公平だと?」



 魂胆は分かりきってる。決闘を受けた途端、フェトカさんを盾にしながら戦う気だろう。


 .....しかもこの人。



 「戦場で使えるモンは全部使え。.....傭兵の中じゃ当たり前の事だろ?」



 悪意も何も無く、ただ()()()()()()()()()()()()、卑劣な行為をするつもりだ。


 こんな相手は厄介だ。


 そこら辺の盗賊なんかよりも、すぐに人の心を捨てれる。そんな奴のする行為は、こっちの予想を遥かに超えてくる。


 ........僕はどうやら、厄介なのに目をつけられた様だ。



 「んで?やるのか、やらないのか?」



 選択の余地は無い.....と言いたげだな。フェトカさんの首に剣を近付けて話してくる。



 .......やり合うだけ無駄だろう。それこそ、無意味な行動だ。

 ......だったら、適当に時間を稼ごう。



 「.............ねぇ、一つ良い?」



 それに気になってる事もある。聞いてみなければ、気になってしょうがない。



 「何だ?簡単なので頼むぞ?」



 「.........何で僕なんだ?」








 「..................と言うと?」

 

 「金はない、依頼内容も明かせない、おまけに襲撃場所はフェトカさんに言えないほどの重要な場所。それはまだいいさ。...........君、特級に依頼する時の決まりを知らない訳じゃないだろ?」



 一般傭兵に依頼する時と違って、特級に依頼する時は依頼内容を()()()()()()()()()()()()()().....それは、特級本人にもあるし、対策本部にもだ。


 だから特級が関わるとマズい依頼は来ない。.....ヴォルクが頼もうとしてるのもそうだ。普通だったらこんな怪しい依頼は来ない。



 「.....知ってるとも。だからこうやってる。それに、俺が頼む理由は関係ない。オメェさんの合否は、俺に勝つか負けるかで決まるんだからな。」


 「僕が言いたいのは選択権がない事じゃない。僕に頼めば君の目論見は全部晒されるって言いたいんだ。」



 .....これはただの決まりではなく、ちゃんと縛りを使った上での決まりだ。だから破る事はできない。


 破った時のお返しが、『その特級との永久的な依頼拒否』だからだ。



 「君が何を思ってんのかはどうでも良いけど、それをやって仕舞えばもう取り返しはつかなくなるよ?」



 僕には、彼の思ってる事は分からない。.....だが、その言葉の裏にある感情には気付けてはいる。



 ........どうしようもない程の憎しみだ。


 もう手の打ちどころの無い.....とても綺麗で純粋な憎しみが、夜空の様にパァーッと広がっている。


 その中に...........子供の様な笑顔を浮かべる()()()()()()



 「.....それをやって、君の中にいるその人は笑えるの?」



 僕にはそう思えない。.....彼女が憎しみの原動力になってるのなら、間違いなくこんな事は望まない。


 ........その人は、そんな事よりも重要な事を望む筈だ。



 「――――――――――――――――」


 「............もしその人の為だとか、そんな事でやろうとしてるなら........絶対にやめた方がいい。」



 自分の為の憎しみは晴らさなければ永遠に残る物だ。


 だが、人の為の憎しみは晴らしても何も変わらない。それどころか晴らしたら悪化してしまう。.....その人が居なくなってたら尚更だ。


 ............やるせない気持ちだけなら分かるけど。



 「...........アイツの為と言われたらそうかもな。...........だが、これはあくまで俺がしたいと思ったからするだけの事。感傷でするわけじゃないさ。」


 「..............んじゃあ言い方変える。.........これをやる事が、その人の望む事?」



 ヴォルクは、悲しい様な.....もうどうでもよさそうな.....そんな雰囲気を出しながら、次の言葉を吐いた。



 「...........違う、アイツは望まない。......................きっとな。」


 「............................そっか。」



 その言葉を聞いて、説得はダメだと悟った。

 

 ............この人はもう、どうでも良くなってしまってると。







 「.............復讐は肯定されていいものだとは思ってる。僕自身は。」



 そう思った途端、僕の口から言葉が湧水の様に流れ出た。



 「『復讐はいけない事です。その人が傷付くだけで、あなたには何も意味がありません』とか、『復讐したってその人が帰ってくる訳でもないのに、何でそんな馬鹿な事しようとするんだ。』.....普通の人はそういった正論をぶつけてくる。」


 「............そうだな。」



 ヴォルクは、話を拒まず聞いてくる。



 「.........それを聞くたび............『もし、誰かのせいで大切な人が死んだ時。君は同じ事を言えるのか?』.........って、思ってしまうんだ。」

 「.........................アンタも?」






 「.................そりゃ復讐は、世間から見たら馬鹿な行為って言われるだろうさ。もう終わった事に対して勝手に恨みを抱いて、ソイツに対して八つ当たりしてるんだから。ソイツはもう、罪を認めて贖罪してるかもしれないのに。.....まともな精神状態だったらまずしない。」

 「........................」


 「..........................じゃあ、ソイツのせいでまともじゃなくなった人は?........ソイツ自身が罪を償ったとしても、その人の失った物は帰ってくるのか?.................おかしな話だよ。もし罪を償えても、ソイツが失った人に何かをするなんて事、全くないんだ。

 .........周りもその人に対して何かをしてやる訳でもない。大抵『ご家族を亡くされて残念ですが、これからも頑張ってください。』とか、『これでお前の家族も報われる。良かったな。』って、その喪失を全く理解できてない言葉を......精一杯、その人の心に光が届かなくなるまで、埋め尽くすほど送りつける。」



 その行為に一体何の意味がある。........答えは簡単。何もない。



 「誰か一人がそう言った言葉を投げ掛けると、『アレは良い事なんだ。だったらやっておこう。』『善人であるのなら、こんな言葉を投げ掛けるべきだ。』『これをすれば、周りにいい人って思われるんだ。』..............そういった、ほぼ自分にしか向いてない善意で、人は動き出す。..........そんな事よりも重要な事をせずに。」









 (ティーサ様を亡くされて残念ですね。)

 (まぁ、これからは館様と姉君の言う事だけを聞いてくださいね。)

 (では早く葬式を挙げましょう。帰ってこられても困りますから。)









 「..............................病んでんな......」



 ヴォルクがそんな事を言った。.....罵倒でも何でもなく、純粋な心配でだ。



 「病んでる、か........僕はそんなんじゃないよ。..........君はどうなんだよ。」

 「...........と言うと?」


 「............君はさっき、『アイツと同じ真似するかよ』と言った。つまり、君の心にいるその人は...................いや、これを言うのは悪い事だ。言わないよ。

 ............実際復讐なんてどうだって良い。もうどうでもいい。そう考えてるんだろ?..........なのに復讐しようとしている。八つ当たりでも何でもない。ただ罪を償わせる為にだ。

 ............何で?何だってそこまでしようとする?........僕からすれば、それこそおかしいよ。」



 この人の憎しみ、怒りは、ソイツ自身に何もないからだ。

 悪事をしたと言うのに、一切反省していない事から来ている。........逆に言えば、ソイツが反省していれば収まるぐらいの復讐心だ。



 「.............子供のオメェさんには分からんだろうけど、大事な奴を自分の居ない間に殺されてたらな。........どうでも良くなっても復讐したくなるもんさ。

 ........アンタも大事な誰かを亡くしたんだってのは分かるぜ。.............ソイツはきっと望まない。だからアンタは復讐しない。...............でもそれはアンタだからだ。俺の様な普通の奴は、それを分かってても復讐したくなるもんなんだよ。」



 「................そうやって、自分の事を貶す様な事をしてでも?」


 フェトカさんを見ながら言う。



 「あぁ。........アイツには悪いけど.............しなくちゃ収まらないからな。」


 「.................................」
























 (ティ〜ザッ!あっそびっましょ!)






 不意に、あの人の笑顔が脳裏をよぎった。







 ........僕が見てて大好きだった顔だった。






 ..............八つ当たりで、この笑顔を曇らせれるのか?

























 「..................さっき、復讐は肯定されるべきって言ったね。............でもごめん。そんな風に人を巻き込むのだったら、僕は君を止めるしかない。

 .......君のしようとしてる事は、僕が一番嫌いな事だ。」



 烏滸がましいだろうが..........自分の嫌な事を他人にさせるなと、母さんから言われてきたからな。



 「...........どっちなんだよアンタは。」


 「何とでも言っていいよ。」



 さっきから自分でも何言ってんのか分からないんだから。



 「......まぁ、どうだって良い。止めるにしろ、オメェさんは俺と...?」



 ヴォルクが首を締めようとした。.....だが、何故だか腕を動かすことができなかった。



 「..........何それ?」

 「.......何だ?」



 腕に目を向けたヴォルクが見たものは........



 ()()()()()()()()()()()()()



 「........コイツは......」



 ヴォルクがそう呟いた途端。



 「落ちろコラァァッ!!!!」



 ドガァッ!!!




 横からフェトカさんに跳び蹴りされた。




 「うがッ!!?アァァァァァ......」



 蹴飛ばされた勢いで、ヴォルクはリフトから落ちていった。



 「.............え?」



 いや、見てはいた。フェトカさんの事は。人質に取られてる以上、目を離す事はできないと思ってはいるから。


 ..........ただ、抜け出した瞬間を見ていない。両方が目を離した隙に出ていたのだろう。........能力を使って。



 (.............珍しいんじゃなかったのか?)



 さっきのヴォルクといいこの子といい.......能力ってのは量産品じゃない筈だろ?



 「.......別にいいか。」


 少々予想外ではあったけど、敵は勝手に消えてくれた。........仕事を減らしてくれて助かる。



 「あぁ、苦しかったァ!!私の首を締めてくれたお礼だ、そのまま地獄に行ってしまえ!!!」


 「えぇ......」



 ブチギレてるフェトカさんを見て、少し引いたけれど。


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