第四十二話 "コイツだけは....."
俺の自尊心を捨ててでも
「ふぅ〜スッキリしたぁ。」
男は別れた後、外に出て小便をしていた。
「ったく、中にトイレぐらい作っとけよな全く.....」
洞窟内の造りに対して文句を言いながら、男は仕舞いつつ最深部に行こうとしていた。
その時だった。
ガサッ.....
「ん?」
背後の草むらが揺れた。風も吹いていないのに不自然に。
不審がった男が、振り向くと.....
「ヴゥオェェェッッ!!!」
ビチャチャチャッ!!
「うわっ!?汚っ!!?」
草むらから、明らかに人のものであろう吐瀉物が飛んできた。.....しかも、色も何も無い透明な吐瀉物だ。........既に何回も吐いているのだろう。
ガサガサッ......
「ゔぇ.....飲み過ぎだなこりゃ.........」
草むらから出て来たのは、鎧を着込んでいるブロンドの髪色の男だった。
盗賊はその男に見覚えがあった。.....と言うかあり過ぎた。何故なら、先日その男に会っていたからだ。
「.....なんだヴォルクかよ....」
ヴォルクと呼ばれたその男は、顔面を真っ青にしながら盗賊の方を向いた。
「よぉダチコウ。来てやったぜヴォルク様がゔぇぇぇ!!!」
ビチャチャチャッ!!
「うえぁ!?きったねぇこっち来んな!!!」
ヴォルク・リコゥス。この男は、元騎士と言う経歴を持つ傭兵だ。
何故この様なところに来ているのか.....それは単純。盗賊をしている友人に仕事を頼まれたからだ。
『捕らえている子供の監視』
それがヴォルクの頼まれている仕事だ。
最初は断ろうともしていた。...だが、膨大な前金に釣られて依頼を受けた。それに、古い知り合いからの依頼と言うのもあったのだろう。
「お前.....五時には来るっつったよな。今何時だと思ってる?」
「ォェ.......あ〜、八時ぐらい?」
「十一時だ馬鹿ッ!!不測の事態で済む問題じゃねぇぞ!!!」
そう。この男、仕事の開始時間に大遅刻をかましているのである。
勿論、道中で問題があった訳ではない。コイツが遅れた理由...それは。
「わりぃ.....久しぶりに大金貰ったから。」
「大金貰ったからなんだ?」
「いやぁ、最近仲間どもに奢ってなかったなぁって思って飲み会開いちまってさぁ!!」
「........お前まさか。」
「おう!宴会芸みたいなノリで、ワインの一本がぶ飲みを五回ぐらいやっちまって悪酔いしちまってな!!.....一時間前までずっと吐いてた。」
ただの二日酔いである。
「............そんな馬鹿馬鹿しい理由で遅刻すんなッッ!!!」
「なっ、馬鹿馬鹿しいだぁ!?テメェ、二日酔いの苦しみを知っててそれ言ってんのか!!!」
「仕事の前日に酔い潰れるほど飲む時点で馬鹿なんだよ!!!」
盗賊にしては、清々しいほど輝かしい正論であった。全くもって正しい。.....だが。
「はん!俺がこうするだろうって予測できなかったお前の方が馬鹿だよバーカ!!!」
正論と言うのは常識がある者に通じるものであって、なけなしの常識しか持ってない者にはあまり効果がない。.....そして残念ながら、ヴォルクは常識を最低限しか持っていない男だった。
「こ...コイツ......!」
「へっ!悔しかったらなんか言い返してみろォオロロロロ!!!」
ビチャチャッッ!!!
「だから汚ねぇっつってんだろっ!!!」
余程悪酔いしてるのか、脱水症状を起こすのではないかと思うぐらい吐いている。
盗賊はそんな男に呆れながら、話を切り出す。
「.....まぁ、いいさ。それよりヴォルク、仕事場に行こうぜ?ちょうど俺も行かなきゃだからな。」
最深部の監督を任されてる以上、ここで無駄な行為をする時間は無い。早いところ、この酔っ払いを連れて最深部に戻りたい。.....そう、盗賊は思っていた。
「.....っあぁ、スッキリしねぇ。ずっと気持ち悪い.....」
「自業自得だ。行くぞ。」
へいへいと言って、ヴォルクは男に連れられてアジトの中に入っていった。
タッタッタッ.....
「ほら、こっちだヴォルク。」
「ぁぁ......きったねぇなここ。」
「てめぇの口元よかましだ。」
言い合いをしながら、二人は最深部に向かっていく。
「そう言えば、ガキの監視だけでいいんだよな?」
「いや、もし逃げた場合は捕らえて牢獄にもう一度ぶち込んどいてくれってさ。」
「ちっ、ガキ相手に乱暴したくねぇんだけどなぁ。」
監視だけして、逃げ出したりしたら放置してサボろうかね。.....と思ってたヴォルクにとって、その言葉は面倒くさい事この上なかった。
「あ、そう言えばよ?白」
「白蛇殺しの噂だろ?.....話は聞いてる。」
「ならちょうどいいや。もしアイツが現れたら、俺が戦ってもいいか?」
「あぁ良いぞ。特級が来たらどうにも......えっ!?」
盗賊からしたら、あり得ない言葉をヴォルクは放った。
「ど.....どうしたヴォルク?!危なっかしい事は絶対避けるお前が?!」
そう。ヴォルクという男は、周りから見れば情けなく見える程リスクを避ける。
頭を下げて済む問題であれば、平気で地べたに頭を擦り付ける。正々堂々戦えば負ける様な相手だったら、平気で人質でも何でも取って殺す。最悪寝込みを襲う。
極めつきは......勝てないと判断した瞬間、背を向けて逃げ出す。
男としてはあまりに格好の悪い姿だ。.....だが、ヴォルクにとって、それはどうでもいい事。
『どんな事が起きようと、生きていればそれでいい。それに邪魔ならば、自尊心だって捨ててやる。』
.....その様な言葉を、本当にやってしまっているのがヴォルクだ。
そんな男が、白蛇と戦いたいと言う。.....それは、今までのコイツの行動と矛盾している。.......いや、矛盾どころの話ではない...そう盗賊は考えている。
「.....んまぁ、自己満足みたいなもんか。」
「自己満足?」
「あぁ。........なんたって、剣一本であんなバケモンを殺したんだぞ、そのエリンと言うガキは。最強の傭兵と言っても差し支えないぐらいだ。......そんな奴を、ねじ伏せてみたくなってな!」
ヴォルクは、その様な言葉を笑いながら話していた。.....まるで、ようやくこの時が来たと言わんばかりに。
「........人に執着するタイプだったか、お前?」
人に対して、さっぱりしてるのが普段なのに、いつもと違うヴォルクの様子を見て、盗賊は困惑していた。
「.....捨てたと思ってたもんがまだ残ってたみたいでな。ここで全部終わらせて、自由に生きようと思って。」
「?.....そうか...?」
自嘲気味に話すヴォルクを見て、これ以上の詮索は無粋だと思った盗賊は、話をそこまでにした。
「.....んまぁ、ひょっとしたら国も白蛇殺しを雇う可能性があるからな。そん時は頼むよ。」
「おうっ!任せておえェェッ!!」
「流石にここで吐いたらブチ殺すぞ!!!」
いい所でえずきやがって.....この空気読めなさ男が!
そう思って最深部に入ろうとした時だった。
「いや悪.....い............」
「......ん?どうしたヴォルク?」
突然、ヴォルクが足を止め何かを凝視した。それに釣られて盗賊の方も、ヴォルクが見ている方に目を向けた。
「.............何かあったか?」
盗賊には、そんなに疑問に思う事が無かったから、質問をした。何処がおかしいのだと。
「.......あの木箱は何だ?」
ヴォルクがずっと見ているのは.......壁際に置いてあった、大きめの木箱だった。
「え.....飯だと思うぞ?ほら、ちゃんと『食材』って書いてるし。多分、誰かが昼飯として置いてったんだろ。.......昼飯にしてはちと早いが。」
「仮にそうだとしてもだ。.....調理場もない所で、食材だけを丸々渡すか?普通だったら、調理済みの奴をカバンに詰め込んでお前らの所に届ける筈だ。放置だけは絶対に無いはずだろ。」
「あぁ.......それは確かに...」
第一、自分達は食糧を持ち出す事はしない。必要最低限の食材しか食糧庫から持ち出してはいけないと、自分達で決めているからだ。.....だから、あんな風に木箱一つを持ち出す事は、宴会でも開かない限りない。
.....じゃあ、あの木箱は何である?今日は宴会を開く予定もないと言うのに。
「........................ちょっと待ってろ。」
ヴォルクが木箱に近付いていく。警戒しつつ、動きがないかを確認しながら。
「....................っ。」
バッ!!と、木箱を上に上げると。
「..............何も居ないな。」
食糧も、ましてや人も居なかった。
「..........はぁぁ.....全く脅かせやがって。何処の誰だよこんなのした奴は。」
「................」
盗賊は、人が入っていたらどうしようかと心配していたが、それは無かったので完全に安心していた。
......だが、ヴォルクは違った。
「ヴォルク、行こうぜ?こんなんに気を揉む必要もなかっ」
「侵入されてるぞ。」
「た........なっ!!??」
唐突に吐いた、ヴォルクの言葉。それを聞いた盗賊は、動揺した。
「なっ...何言ってん」
「ここに中身が無い。何故か下の部分だけが無い木箱がある。それに、中がまだ暖かい。人が居た証拠だ。............あと。」
動揺する盗賊とは別に、ヴォルクは冷静そのものだった。
「あと........何だよ?」
「...................木箱の中が少し湿気ってる。この大きさだ、一人じゃここまでいかない。......て事は。」
「........潜入してきたのは複数って事か...!!?」
そうだとヴォルクは答える。そしてこうも思っていた。
(........これは白蛇殺しじゃないな。噂でしかねぇが、奴は人との連携をしない。複数人の潜入なんぞ、絶対しないだろう。)
そう考えるヴォルクの横で、盗賊は頭を抱えていた。.....ついに国が動き出してしまったのだと。まだ準備も何も出来ていないと言うのに。
「.......まぁ、問題は無いだろ?なんたって、潜入された事に今気付けた!まだ対処のしようはある。だろ?」
そんな様子の友人を見て流石に哀れに思ったのか、ヴォルクは対処法を言った。
.....ここまで潜入されてる以上、警報を鳴らしても意味が無いだろうとも思いつつ。
「...........まぁ、そうだな。」
まだ暖かいと言う事は、出てからそこまで時間が経ってないと言う事だ。フェトカの救出までは行ってないだろう。
.....であれば何とかできる。今すぐ警報を鳴らせばいい。それだけで解決する。
であれば、警報を鳴らしに行こう。そうすれば、自分に責任が発生する事はまだ避けられる。
そう盗賊は考えて。
「ヴォルク。俺は警報を鳴らしに」
行こうとした瞬間だった。
『特級傭兵、シュランゲ・フェストケルパー!!!手前らの首、頂きに参ったァァァァ!!!!!!』
「がっ!??」
「いばぁッ!!!?」
謎の声が、アジトの外から聞こえてきた。.....まるで、寝起きに砲声を隣で聞かされた様な衝撃だった。
「!?今のは何だ!??」
ヴォルクは動揺をしながら、剣に手を伸ばしていた。
「はぁ!?.....シュランゲが何で!?」
盗賊はシュランゲが襲撃を掛けてきた事に、一瞬で辿り着いた。.....と言うか、名前を言っているのだから、答えに辿り着かない方がおかしいのだが。
「.....まさか...!!」
ギギギッ.....!
ヴォルクがおもむろにしゃがむ。まるで、飛ぶ為の力を溜める様に。
「ヴォルク!?お前何を」
「済まん!さっきの声の主は任せる!!.......下手したら、考え得る最悪の状況かも知れん!!!」
そう言って。
バビョォオ!!!
「まっ...ヴォルク!!!」
彼はリフトに、たった一歩で突っ込んで行った。
(.......複数で潜入するのがシュランゲのやり方の筈だ。でも潜入してるのシュランゲじゃない。今の奴は偽物か?......いや、あの声は間違いなくシュランゲのもんだ。)
遅くなった脳内時間の中で、彼は今潜入してる者の推理をしていた。
(もし本当にシュランゲなら、アイツが囮になる事は無いはずだ。なんなら、自分が潜入役に回ると言い出す様な男だ。そんな奴が囮になってるって事は.....!)
シュランゲが、コイツなら任せれると踏んだ奴が潜入しる。.....そう、ヴォルクは推理していた。
(アイツは今残ってる最古参の特級だ。新しく認定された特級を見にきたと考えば辻褄は合う。そんな時に王女誘拐事件だ。間違いなく、この二人は国に雇われただろう。........そうなったら、今潜入してるのは.....)
白蛇殺し........ティーザ・エリンに他ならない。
「......ちくしょう...!」
確かに、白蛇殺しとの戦いは望んでいた。.....だが、こんな最悪の状況までは望んでいない。あまりに都合が悪すぎる。
(.........もし、白蛇殺しが姫さんを救出してたら、俺はなすすべなく殺される。あっち側からすりゃ、さっさと脱出しないといけねぇからな。だから、俺がする事は.....)
救出される前に姫の元に行き、姫を人質にしつつ決闘の縛りを結ぶ事だと、ヴォルクは結論付けた。
その縛りさえ結べたら、自分は白蛇殺しと正々堂々と戦え、盗賊側は一番恐ろしい.....それこそ、街一つ吹き飛ばす様な爆弾を短い時間とは言え隔離できる。一石二鳥だ。
故に急ごうと、全力で地面に反発して最深部に跳んだ。.........その時だった。
「.......ん?何だ、あれっ??」
ヴォルクの目に、暗闇の中でさえ輝きそうな白髪をした、絶世の美女になるであろう少女が映った。
少女の方もヴォルクを見つけ、青空の様な瞳を向けていた。
(.......あれ?このガキンチョ.........何処かで............)
会った事は無い。もしこんな美少女に会ったら絶対に忘れない。そんな自信さえ湧いて来る程、ヴォルクは確信を持って、会った事だけは無いと思っている。
.......だが、見た事だけはある筈。それも確信を持って言える言葉だった。
「まぁいいや!アイツもぶっ飛ばしとこっ!!」
そう言って少女は、音もなく、真っ白な棒を出した。
そして、両手で棒を突き出してこちらを待ち構えた。
その構えが.....今朝、新聞で見た見出しの絵にそっくりだった。
「...........嘘だろまさかっ!?」
「そこだっ!!」
ボヒュウッ!!
少女の棒の先端から放たれた魔力が、もはや音速に達した速度でヴォルクに接近していく。
「―――――――――――」
跳んでいる方向、そして放たれた位置。それらが交差してしまっている。
元々かなりの速度で跳んでいるヴォルクから見れば、今自分に飛んできている物など視認もできない。ヴォルクからすれば、それは音速の域を超えた何かだった。
だから、回避など出来る訳がない。...........だが。
グニァァッ!!バァァンッッ!!!
「があっ!!!?」
「うえっ!?」
咄嗟の防御反応とヴォルクの危機察知能力が、ヴォルク自身の能力を勝手に使用した。
「イッテェェ!!!」
(何だよこれ!!?完全に殺しきれてねぇ!!??)
能力は正しく作動した。.....だと言うのに、衝撃を完全に殺せなかった。そのぐらいの威力だったと言う事。
もし、能力が勝手に作動しなかったらどうなっていたのか.....それを考えただけで鳥肌が立った。
「っ!!」
(と言うかマジかよ!?あの嬢ちゃんまで潜入してんのか!!?こんなんどうしようもないぞ!!!)
ただでさえ白蛇殺しだけでもかなりヤバいと言うのに、その白蛇殺しと互角にやり合った奴まで居るんだったらもうどうしようもない。
もしこのまま、この少女と戦えば間違いなく白蛇殺しが来る。一対一ならギリギリ勝ち目はあるが、このクラスのバケモンが増えたらなすすべなく嬲り殺されるだろう。
(.....白蛇殺しと戦いたかったが、こんな負け戦出来るか!前金を貰っといて悪いが.........流石に命と引き換えは出来ない!)
そう、ヴォルクは一瞬だけ思った。.........思ってしまった。
いつもの逃げ癖が、ここで出たのだ。......だが。
(ヴォルク〜?!ご飯出来たよ〜!!)
「――――――――――――」
その瞬間、彼の脳裏には妻の姿がよぎった。
いつも自分の事を子供扱いして、たくさん甘やかそうとしてきた妻の姿が。
........あの日、栄光を手にしに戻って来たら殺されていた.......亡き妻の声が。
(よ〜し!頑張ってこ〜い!!)
........その幻聴が、情けない男を食い止めた。
「........駄目だ。」
これだけは逃げたら駄目だ。
もしここから逃げ出したら、もう次は無い。俺は、俺を殺さないといけなくなるぐらい後悔する。......もう二度と、自尊心が戻って来る事は無い。
その思考が、酔っ払いを剣士に叩き直した。
「.....................かわいそうだけどっ!!」
少女がまた、魔力を放とうとしている。
今度はさっきより威力が高い。直撃すれば、たとえ能力を使ったとしても貫かれてしまうだろう。.....だが。
ギギギッ.....!
「悪いな嬢ちゃん。押し通させて貰う!!」
バゴッ!!!
今度は意思を持って能力を使った。
衝撃を逃す為じゃなく、衝撃を蹴り放つ様に。
その結果、ヴォルクの身体は空中にありながら、もう一度跳んだ。
「なっ!?」
少女は体を揺らして驚く。なんせ、魔力を一切使わずに空中移動ができているから。
.....だが、当の本人はそんな事全く意にも介さず。
(今嬢ちゃんと戦ったところで意味はねぇ。嬢ちゃんがここにいる理由は多分、脱出ルートの敵の排除。と言う事は、本命はまだ最深部に居る。)
冷静に状況の分析をしていた。
少女から目を離し、大穴に目を向ける。.....そこで、リフトが巻き上げられてるのを見た。
「よし、まだ間に合う!!」
「うわぁ待ったァァ!!?」
ドッッ!!!!
逃げられると思って焦った少女の棒から、さっきの一撃よりも強烈な物が飛んできた。
「えまずっ!!?」
バゴンッ!!!
喰らえば死ぬ一撃。当たる訳にはいかないと思ったヴォルクは、もう一度全力で空を蹴った。
だがさっきと違うのは、これはただ避ける為だけに行った動作でその後の事は全く考えていない。.......つまるところ。
ドビュュッ!!!
「ぬぉぉあァァ!!!?」
暴走である。
「ヤバいヤバいヤバいッ!?」
地面に激突してしまう.....と焦ったが。自分が暴走しながらも向かっている所には.......ちょうどリフトがあった。
「.....いやかえって良かった!!!」
そう言いながら、体勢をなんとか元に戻す。そして。
ドガァァンッ!!!!
「......っぶねぇ....!」
何とかリフトに着地した。危うく激突する所だった。
顔を上げて、煙の切れ目から相手の姿を見ようとする。
「.........ふぃ〜、遅れた遅れた。」
全く.....大遅刻までやった癖に、こんな幸運に恵まれるとはなぁ。
今、煙の切れ目から少し見えた。白金の証が。
(さぁてと。)
ようやく白蛇殺しと戦える。.....間違いなく最強の傭兵と。
その事実が、ヴォルクの気分を高揚させていた。
「.....フェトカさん、下がってて。」
だが、その声が。.....最強の傭兵には似つかわしくない程の幼い声が、ヴォルクを困惑させた。
(.....えっ?何だ今の声??)
新聞で見た絵のイメージとは全く異なる、あまりにも優しい子供の様な声色だった。
サァァァ.......
煙が晴れて見えたのが........王女を庇って前に出ている、身の丈と同じぐらい大きな片刃の大剣を持つ、金髪の小柄な少女だった。
そんな姿を見て、あの白蛇殺しとは思わなかったヴォルクは。
「ん?.....話とちげぇな?一人じゃねえのか、捕まえてたのは?」
そんな見当違いな事を言った。
守ってみせる/殺してみせる




