第四十一話 衝撃
歯車が好きなんです。
『おい、フェトカの様子は?』
『.......相変わらずだそうだ。』
『おいマジかよ.....もう二日目だぞ?まだ暴れてんのか?』
『あぁ、リーダー共も手を焼いてる。......せっかく捕えれたってのに何でこんな苦労をしないといけないんだか。』
『全くだ。.........あぁでも、フェトカの監視用に、一人傭兵を雇ったって聞いたぞ?』
『埒があかないからな。相当の腕を持ってる傭兵を雇ったそうだ。.........まぁ、初日からとんでもない大遅刻をやらかしてるがな。』
『.....大丈夫かその傭兵?金だけ毟り取られねぇか?』
『いや、流石に無いだろう。前金はかなり払ってるそうだし.......向こうも裏切る事はしないと思うぞ。』
『なら良いんだが.............そう言えば、場所移したんだよな?.......鉱石場だったっけ?』
『話ぐらい聞いとけよ........最深部だ。』
『最深部?.....リフトがないと行けない所じゃねぇか。』
『よく脱走するから、絶対に逃げられない所に移してやるとさ。........それでも、脱走しそうなんだがな。』
『はぁぁ.....見つけに行くこっちの苦労も考えて欲しいもんだなぁ。』
タッタッタッ...........
「...........最深部か。」
ここの位置情報は把握してないが、良い情報を得られた。.....取り敢えず、その最深部に向かえば良さそうだな。
「ほうほう?ど〜やらかなりの暴れん坊の様ですなぁ。そのフェトカとか言う女は。」
「.......................そうだな。」
「..........あのさ。」
ちなみに、僕は今木箱の中にいる。木箱に扮しながらフェトカさんの所に行こうとした所で、さっきの話を聞いた訳だが.........
「.................何で全員同じ木箱に入ってんの.....?」
裏口に木箱は沢山あった。勿論フィーリウスの様な少年でもすっぽり入りそうなぐらいの大きさのもあった。だから、こんな風に一つの木箱に隠れる必要はなかった。
........なのに何故か、みんな揃って同じ木箱に隠れている。...........正直苦しい。狭い。
「ディアドラが同じ木箱に入るのはまだ分かるけど、フィーリウスは別のにって言ったはずだよね?」
「.....................強制。」
「.........そっか。」
「いやぁ変にばらけるより、一つにまとまってた方がいいんじゃないかなと思いまして...!」
タチの悪いのは......ディアドラが僕の後ろにくっついてる事だ。.......しかも、身長差もあるからかディアドラの視点が高い。
ポヨッポヨッ.....
「この方が、もし見つかった時にどうにかやりやすいでしょ?」
........高いと言うことは、背中にくっついてても胸がくっつくとは限らない訳で。
「.............ずっとくっついてんだけど。」
さっきからずっと、僕の後頭部に柔らかみを感じる。......それが何なのかを考えない様にしてはいるものの.......遠慮なしにくっつくから、やっぱり想像してしまう。
「ん?............別に気にする事じゃあ無いでしょ!」
「君はね。......僕は気にするの!」
これでも男の子なんです!.....君から見てどうなのかは知らないけど。
「....まぁ良いか、それより。」
最深部とやらに行かなけゃな。時間はかけられない。
「ディアドラ、一番深い所にいる人まで分かる?」
「そう聞かれると思って探しといたよ......一人だけいるね!」
よし、本当の情報の確率が高まった。取り敢えずそこに行って、居なかったら別のところを探そう。.....それか、相手が出すのを待とう。
「.....バレない様にしつつ、最深部に行こう。」
「りょっか...!」
「.................了解。」
タッ....タッ....タッ.......
「.....にしてもやっぱ....」
狭くて動きづらい。何なら籠るから暑い!
どこの誰だよ、この状態で潜入しようって言い出したお馬鹿さんは!!
「提案したのは私だけど、これで行こうって言ったのはティーザだよ?」
「確かにそうだけどね...!」
ぐうの音も出ない。.....あの時、『ディアドラと合法的にくっつけれるんだよ?それってさぁ.....最高じゃん!』なんて、なんか小さい生き物が抱く様な願望で、『それで行こっか!』なんて安易に言った僕を殴ってやりたい。
「..........エリン.........また来るぞ。」
前から人の気配がする。その場で止まって、木箱のフリをした。
『今から最深部の警備か。.......かったりぃ、サボれねぇじゃねえか。』
『ぼやくな。フェトカに逃げられでもしたら、俺たち全員殺されるんだからな。』
(.......手間が省けたか....)
コイツらについていけば最深部の場所が分かる。
『はぁあ.....ほ〜んと、やになるぜあのガキ..........なんたってあんなのがお姫様なんだか。』
『諦めろ、こればっかりは。.........ちょっと小便してくる、後から行くって伝えといてくれ。』
『あいあい。』
タッタッタッ.....
男達が二手に別れた。
「アイツについて行こう。」
「おっけぇ.....こっそりとね。」
こちらの足音が聞こえない距離を保ちつつ、ゆっくりとつけていく。
「フィーリウス、後ろ居ない?」
「...............大丈夫だ。」
後ろにも警戒する。後ろに気付かずに歩き続けるなんて間抜けな事、したくないし。
と、そうこうしてるうちに。
「.........ティーザ、あれじゃない?」
どでかい穴がある、大きな部屋にたどり着いた。
「........何だあの穴.....」
恐らく、最深部と言うのはあの穴の事なのだろうが.....それでも大き過ぎる。半径.......一軒家十個分ぐらいはある。そのぐらいデカい穴。
.....なんでそんなもんが洞窟にあるのかと、突っ込みたくなるぐらいだ。
「.................アレで登り降りするんだろう.....」
フィーリウスが指を差したのは、穴の近くにあるリフトだ。
「.........ありゃ、逃げんのは難しいな。」
リフトがある状態なら逃げるのも簡単だが、下にはリフトなんてないだろう。.....相手が降りてくるまで待たなきゃいけない。そうしなけりゃ登る手段がない。
「........まぁ、僕には関係ないけど。」
あの程度だったら、なんて事はないな。
「......ここから僕が出てって、下に降りてフェトカさんを救出する。二人はここの敵を気付かれない程度に無力化しておいて。」
「いいけど.....バレない?」
.....まぁ、木箱から出たらどうするんだって話なんだろうけど。
「能力を使う。問題は無いよ。」
「.......分かった。じゃあ、こっちは任せて!」
よし、ディアドラも納得できたな。
「じゃあ行ってくる。」
そう言って、木箱から出て.....
「『消せ』」
フワッ........
「............消えた......??」
存在感を消した。
(お〜!!流石ティーザ!そんな風に能力を使うか!!)
(.....なんで気づくかなぁ。)
一応、見えもしない筈なんだけど、僕の姿は。.....まぁいいか。
(タンッ!!)
飛んでいって、最深部に近付いていく。かなりの距離があるから、こうした方が速い。
(タンッ!!)
「.....?」
「どうした?」
「いや.........誰か通ったような気がして......」
「え?.......気のせいじゃないか?」
盗賊共は気付く事もない。.....と言うか気付けないだろう。
存在感を消すと言うのは、影が薄くなるとかでは無い。
その者がいると証明する物.....例えば、足音、姿形、声。存在感を消すと言うのは、そう言った物全てを消すと言う事だ。
透明になるのとは訳が違うが、相手からは一切見える事はないので、実質透明人間......じゃなくて、透明竜人だ。
(タタッ!)
大穴の淵まで辿り着いた。.....改めて見るとかなり深い。
普通の穴を十メートルぐらいだと推定するなら、この穴はその十倍ある。深過ぎて下が見えないぐらいだ。
「おい、そろそろ行かないとじゃないか?」
「だな.......めんどくせぇなぁ。」
「死んでないかの確認ぐらい、魔術でどうにかしろって話だよな。」
見張りの男二人がリフトに近付いて行く。生存確認に行く為だろう。
(.....ちょうどいい。)
下に行くだけなら飛び降りれば済むが、フェトカさんを上に上げる場合は、僕一人だと時間が掛かる。.....だが、リフトが下に降りてくれるのなら、僕がフェトカさんを担いで登る必要はない。
タッタッタッ.....(タタッ......)
男達と同時にリフトに乗り込む。男がレバーを下げると。
ガゴンッ!!
リフトが下がり始めた。
(.....さてと。)
ここまでは手筈通り。後は、フェトカさんを救出して、フィーリウスに回収班の所まで連れてってもらうだけだ。
「.....なぁ、あの話本当だと思うか?」
「..........さぁな。」
盗賊達が何やら話し始めた。.....どうやら、フェトカさんの話ではない様だが......
「少なくとも、俺はデマだと思うぜ?シュランゲ・フェストケルパーがカインに来たなんて噂。」
.....シュランゲの事?彼、有名なのか?
「だよなぁ.....アイツが活動してたのなんて、もう十数年前の事だし......」
「仮に居たとしても、俺たちに何かする事はないと思うぞ?.....あの男は、相手が土下座でもしない限り依頼を受けない男だからな。」
「王国の連中が頭を下げる訳無いし........やっぱり考え過ぎか。」
.....あの人、誠意を見せないと仕事しないタイプの人か.....めんどくさっ。
何でそんな人が僕について来てるんだよ。
「.......だが、もしアイツが本当にここにいるのなら、俺達全員殺されるだろうな。」
「あぁ.......アイツ、何故か女関連になるとキレるんだよな。自分の事だとそこまでキレない癖に。」
「それに、子供を攫うっつうタブーもやってる。.....言い訳もさせて貰えないだろうな。」
「おい恐ろしい事言うなよ......もしこっちも本当になったら、俺たちどうしようもないぞ.....」
ふ〜ん.....あの人、軽薄そうに見えたけどそう言う所はしっかりしてるんだ。........なんか、母さんみたい。
母さんも基本いい加減だったのに、道理とか倫理とかはしっかりしてたし......
「あ〜.....そうだな。シュランゲの方は確証がないけど、白蛇殺しの方は本当だもんな。」
「そうだよ.....なんなら、アジトでも白蛇殺しを街で見たって言ってる奴がいるし.........ほぼ確実に居るぞ。」
「あのガキは.......正直分からんが、一応特級らしいからな。.....間違いなく王国の連中は雇ってるだろうな。」
「戦争とかの依頼は受けないらしいけど、これ戦争じゃないからな。.......救出に来てもおかしくないだろうなぁ。」
「..........まぁ、こっちは千人ぐらい居るんだ。いくら特級でもアジトに突っ込んでくるとか、そんなリスキーな事はしないだろ。」
うん。君らの予想を裏切って全然罪悪感は無いけど、現在進行形でやってんだよね。そんなリスキーな事。
「.....仮に、白蛇殺しが来たらどうする?」
「どうしようもねぇよ、そうなったら。.....そもそも、俺達が優位に立ててるのは王国相手だ。傭兵には優位に立ててない。.......傭兵からしたら人質なんてどうでも良いからな。敵をぶった斬って終わりさ。」
「だよなぁ。.......『コイツを斬るぞ〜』なんて言った所で、ぶっちゃけどうでも良いしな。自分には一切関係ない訳だし。」
.....確かに僕にはどうでもいい事だ、フェトカさんがどうなろうが。
.......だが、それは見捨てていい理由にはきっとならないし、なによりそんな話を聞いて見捨ててしまったら、僕は絶対に引き摺る。
......そんなのは嫌だ。
だから今、僕はここに居る。
ガゴンッ!!
「着いたな。」
「あぁ、嫌になるなぁ。狂犬が居る部屋に行くようなもんだぜ、これ?」
「一応、中にいるのはお姫様だがな。」
リフトが下に着いた。
真正面には、場違いな雰囲気を放ってる扉がある。.....なんだか、仕方ないから増築した様な......そんな感じのボロい扉だ。
「おい、鍵は?」
「あぁ、コイツだ。」
(もう良いな。)
男達が鍵を持ってる事は分かった。.....だったらもう用はない。
ポンッ!
「仕事中申し訳ないけど、眠っててもらえる?.....ちなみに返答は『はい』だけね。」
「ん?」
「誰だ?」
消してた存在感を元に戻して男達の後ろに立つ。
男達は呆然としながら振り向いた。
「..............子供?」
「―――――――――――逃げろコイツは!!?」
いや、逃さない。
「『寝てろ』」
目を閉じ、集中して願う。.....目の前の男達が眠るように。
「白........へ............」
「え.............なん..........」
ドサッ.....
眠らされた身体は脱力して、地面に倒れ伏す。
タッタッ.....
「ん〜と........これだ!」
眠った男の手から鍵をひったくった。.....別に鍵が無くても問題は無いけど、何回も能力を使うのは疲れるし。鍵があるんだったら、そっちを使わせてもらおう。
タッタッタッ.....
「....?.......随分頑丈だな....」
鍵を開けようとして、扉の違和感に気付く。
確かに鍵は掛けてある。.......ただ、何故か扉じゃなくて、閂の所に鍵が掛かってる。
普通、閂があるなら鍵は要らない。鍵よりも頑丈なので、力技で開ける事が出来ない。........ひょっとして、こうでもしないと逃げ出すのか....?
「.......まぁいいや。」
どっちにしろ、鍵を開けないと閂を外せない。.....だから、鍵を外した。
ガチャ....
外した瞬間。
ゴンッガンガンッ!!!
『ンングゥゥゥ!!!!!!』
.....中から、人の物とは思えない声が聞こえて来た。
「っ!?.....えっ??」
最初、動物の声か何かかなと思った。.......捕まってる人がここまで反抗的な事はないだろうと思ったから。......だけど。
(やっと来たかコンニャロ!!!さっさと外せ変態共!!!しばき回すぞ!!!!)
.......女の子であろう声が聴こえて来た。..........捕まってる人とは思えないぐらいの、凶暴な声が。
「..........うわぁ。」
これは.......入るのも渋る。
だって、部屋に入ったらこんなのが吠えてくるんでしょ?.....多分猿轡してるだろうけど、そのせいで獣の吠え声のように聞こえるし..........確かに、人と言うより狂犬......いや、猛獣だなこれは。
「.........でも入らなきゃな............」
本当に入りたくないが、救出しないといけないからな。.........覚悟して、閂を外して扉を開けた。
ギィィィ........
「えっと.......お邪魔しますぅ.....?」
この子の部屋でも無いのに何言ってんだろう。そう思いながら部屋の中に入った。
ガンッ!!ガギッ!!!
「ングゥゥ!!!!グゥゥッ!!!!」
.....中には、壁に括り付けられた少女がいた。全身を縄で拘束されて動けない様にされてる上に、目隠しと猿轡までしてる.......痛々しい姿だ。
............と、本来ならそう思わないといけないんだけど.....
(さっさと外せ悪党が!!!ぶちのめすぞ!!!!)
.........中身が凶暴過ぎて、そう思えなかった。
「...................マジで?」
.....カイル唯一のお姫様の正体が.........これなの?
.......偏見と言われればそこまでなんだけど、お姫様ってもっとこう.......大人しい子だと思うんだけど。
ここまでアグレッシブな子がお姫様って.......ホントに?......いや、エリーテもだいぶアグレッシブだとは思うけど.......決してここまでじゃないと思うし、ここまで凶暴じゃない。
........この子......お姫様じゃなくて、狂戦士じゃない?.....似てるってだけで捕まった、とかじゃないの?
「.......えっと..........一応聞きたいんだけど........貴女が、フェトカさん?」
聞いておこう。.....もし間違いだったら大変な事になるからね。........と言うか、個人的に間違ってて欲しい。
「ングッ??......ンンンンッ!!!!!」
(はぁ??........あったり前だよ、アンタらが攫ったんでしょ!!!!!)
「............マジか......」
モノホンだった。
.........世の中、こんな事ってあるんだな。
「........えっと......少し耳を傾けてくださいね?......僕はティーザ・エリン。国から貴女を助けてくれって頼まれてここに来た傭兵です。」
素性を話す。.....こうでもしないと、話を聞いてくれない様な気がしたから。...........だが。
「..............ぐぅ???」
(何言ってんのコイツ???頭おかしいんじゃないの???)
.....信じて貰えてない。........と言うか、頭おかしいって.....
「.......泣きたい。」
でも、泣くわけにはいかない。今は、この子に信用してもらわなければ。
「.....取り敢えず、目隠しと猿轡を取るから........あんまり騒がないでね?」
目隠しを取った。いきなり猿轡を取ると、パニクるんじゃないかと危惧したからだ。
「ん..........んん!!??」
(え!?子供じゃん!!??)
そうだよ子供だよ。.....声色で分からないものかな。
「はい。」
「んぁ!.....口いったぁ....!」
ずっと開けっぱなしだったからな。しばらくは痛いまんまだろう。
「........てか、何で子供が!!?」
「しっ!!.........聞こえないだろうけど静かにして!」
「あ、ごめん.....」
全く.....騒がないでって言ったのに何で騒ぐかなぁ。
「んっと.....まず簡単に説明します。今、外にはイェデンさん達が待機してて」
「え!?イェデンが!!?」
「だから、しっ!!!」
あっ!...と言って、申し訳無さそうにする。.......この子、静かにする事が苦手なのかな。
「今から貴女を連れ出して、別の傭兵に引き渡す。貴女はその傭兵に着いてって、イェデンさん達の元まで行ってください。.....良いですか?」
「えっあっ、ちょっ、ちょっと待って......」
別に難しい事は言ってないのに、何故か天井を仰いで考え事を始めた。
.....まぁ、少し唐突だったかも知れない。
(えっと〜.......整理しよう。まず、私は今助けられようとしてる......これは多分あってる筈。直感だけど、この子が嘘をついてるとは思えない。
その次に.......イェデンがここの外にいる?これは.....いや、流石にないとは思う。あの人は騎士団長だから、そんな危険な事に自分から首を突っ込むとは信じられない。.....そして.........)
.....なんか物凄く深読みしてる。てか、イェデンさん騎士団長だったのか。
........余計に頭下げちゃダメな人だろ。
(ティーザ・エリン..........ティーザって誰かが言ってた様な........最近聞いた様な.......)
「考え事の最中悪いけど、早くここを出たいから拘束を解いていい?」
何だろ.....待てば待つ程深読みしそうだったから、切り上げる様にした。
「え?.....良いけど、これ外れ」
「あぁ大丈夫。.....『外れろ』。」
ガギャ!!
「うわっ!?.....えっ、鎖が....!?」
外れる場所が無かったのか、彼女を括り付けてた鎖は粉々に粉砕された。
「.......これでも疑います?」
拘束は解いた。鍵を外して外に出られる様にもしてる。.....敵と見られることだけは無いとは思うけど.....
「ん.............んん〜.......」
どうやらまだ疑われてる様だ。.....そんなに胡散臭く見えてるのかな、僕。
「......分かった。じゃあ、疑ったままで良いから僕に着いて来て。.....もし、マズいと思ったのなら後ろから襲っても良いから。」
信用を得ることよりも、ここから出る事が最優先だ。こんな所で討論をする気は全く無い。
ここからさっさと出ないと、囮部隊が突っ込んでしまう。
「......................................分かった。」
よし、取り敢えず着いて来てくれるみたいだな。
だったら、ここに居る理由も無い。さっさとディアドラ達の元に帰ろう。
「.....じゃあこっちに。見回りは無力化してるけど、一応静かにしててくださいね。」
「あ、うん.....」
ササッ......
念の為、扉の影から眠らせた敵を見る。
「ガァァァ......」
「グォォォ........」
「.....よく眠ってるな。」
これだったら、しばらくは起きないだろう。
「行こう。」
「うっ...うん。」
サッサッサッ.....
素早く動いてリフトに乗る。起きないとは言っても、外的要因が無い場合だ。何かあったら起きてしまうかもしれない。
「良いですか?」
「だっ.....大丈夫。」
ガゴンッ!!!
レバーを上げて、リフトを動かす。リフトは僕らを乗せて、上に上昇していく。
「........ふぅ。」
安堵の息を吐く。
これで一件落着.....と言う訳にはいかないが、一段落はついた。後はここから出るだけ。もうちょっとだ。
「.....フェトカさん、ここからある傭兵の所まで行きます。その道中の敵は、仲間が何とかしてくれてるかもだけどどのぐらいいるのかは.................何です?」
フェトカさんが、僕の顔をまじまじと見てくる。.....まるで、記憶にある顔とそいつを照らし合わせる様に。
「......あのさっ!...ちょこっとだけ聞いて良い?」
突然口を開いた。.......収めようと考えたが、どうでも良い話では無さそうだ。話を聞かない限り、聞いてくるだろう。
「.....まぁ、僕に答えられる物ならば。」
.....またやった........どうして『別に良いよ?』って素直に言えないんだか。
「んじゃあさ?.........君、エリーテって子、知ってる?」
「――――――――――――――え?」
一瞬、頭が真っ白になった。.....だが、すぐに答えた。
「.....それはどのエリーテでしょうか?エリーテにも、いろんな方がいますよ?」
動揺を隠しながら、澄まし顔を保つ。
.....嘘は苦手だが、だったら最初から嘘をつかなければ良いだけ。しらばっくれてたら、向こうから諦めるだろう。
「...........んじゃあ言い方変える。君、エリーテ・ザナルカンドの知り合いじゃない?」
.....出て欲しくなかった、答えるとマズい方のエリーテの名前が出てしまった。........しかも、質問してる癖に確信を持ってる。
「...........知り合いだったらなんです。」
頭を回転させながら、失礼のない様に答える。.....だが、それと同時に混乱もしている。
何故突然、エリーテの質問をされているのか。.....何故、エリーテ・ザナルカンドを限定にした質問なのか。.........何故そんな質問をしてくるのか。
それらの理由を、心を聴いて分かろうとした。.....だがそれは出来ない。
ディアドラと違って、僕は心から漏れ出たものを感じ取るだけ。心から出てくる音は、警戒してなければない程分かりやすくなる。
だが、今この人は警戒しっぱなしの状態。その状態の心の声を聴き取る事は、僕には出来ない。
「質問で返さないで欲しいな。.....で、どうなの?」
だが、一つだけ分かってる事がある。
.....この質問、答えれば命取りになりかねない。
「.........以前お会いした事ならありますが。」
一部だけ真実を伝え、それ以外は伏せる。.....下手に嘘をつくと、質問に答える事になる。
「何年前に?」
「極秘です。」
年数を聞かれた時点で察した。
.......この人、間違いなくエリーテから僕の事を聞いてる。
「極秘の理由は?」
「......バレて仕舞えば、国の信用に関わってしまうほどの事態の時に出会いまして。どんな相手だろうと伏せるべきだと。」
思った...と言う言葉だけは伏せて、取り繕う。
マズい事になった。カイルならエリーテも来るのが遅いだろうから、撒くことはきっと出来るだろうと思ってた。
.....だが、この人は僕の事を知ってる。恐らく素性も分かってるだろう。.....バレればこの人は、エリーテに僕の事を伝えてしまうかも知れない。
.....そうなると非常にマズい。
「.....ふ〜ん。..........じゃあ別の質問。...........君のその名前、本名?」
「...........................」
.....恐らく、確証は得てないんだろう。だが、この質問は難しい。
はぐらかせばそうだと言ってる様な物の上に、嘘をつけば一瞬でバレてしまう質問だ。
「..............その質問に答える理由がありません。そんな事、今聞いた所で意味ないでしょ。」
「いや、これは信用に関わる問題だね。.....本名を明かさない奴なんか信用できない。」
.....これは困った。信用は別と考えてはいたが、このタイミングで不信感を持たれるのは非常にマズい。
「で?..........本名は?」
「...............そうですね........」
.....仕方ない。少々リスクがあるが、はぐらかそう。ここで明かしてしまうよりもマシだろう。
「...........ここから出た後で」
その話をさせてもらって良いですか?.....と、言おうとした瞬間に。
『特級傭兵、シュランゲ・フェストケルパー!!!手前らの首、頂きに参ったァァァァ!!!!!!』
「そっ!!???」
「きゃっ!!!!?」
まるで、発破をかける様の爆弾が突然暴発したぐらいデカい声が、上の方から聞こえて来た。
「なっ...!?今の、シュランゲか!??」
聞こえて来た声と名前は、確かにシュランゲの物だ。.....だが、一人の喉から大勢の声が出たのかと思うぐらい、とんでもなくデカい声だった。.......あの時のフィーリウスよりも。
「シュランゲ..........えっ、シュランゲってあの特級傭兵の!!?」
「えっ、何で知.......いや、そうです!!」
フェトカさんが知ってるって事は.....やっぱり相当な有名人なのか?
.......こっちでは聞いた覚えがないんだけど.....いやそれより。
「.....囮が突っ込んだか!!」
何とか、タイミングを合わせる事は出来たみたいだ。後は混乱に乗じてここから出るだけ。
「フェトカさん!上に上がったら、盗賊共の混乱に乗じて脱出」
「待って!?上から何か落ちて」
ドガァァンッ!!!!
「っ!?」
「うわっ!??」
突然、上から何かが落ちて来た。.....それはリフトに着地し、リフトを大きく揺らした。
「っ......フェトカさん?!無事ですか!!!」
「いっててぇ...!...大丈夫!!」
衝撃で落下してる様子は無い。.....なら、こっちはいい。
「何だ...!?」
一体、何が落ちて来た!?いくらなんでも、イタズラでこんな事をする程、盗賊は馬鹿じゃ無いはずだ。
それに、この揺れ方は荷物が落ちた揺れ方じゃない。
衝撃を地面に逃す様な揺れ方をした。
「.......誰かがいる?」
土埃に人影が見えた。.....まさか、落ちて来たのは人か...!?
「.........ふぃ〜。遅れた遅れた〜。」
煙の中から聞こえてきたのは、野太い男の声。.....だが、明らかに只者ではない気配を感じる。
まるで、デカい魔獣にバッタリと会ってしまった様な、そんな緊張感がする。
「.....フェトカさん、下がってて。」
前に出る。念の為に世剣も出しておく。
サァァァ.......
「ん?.....話とちげぇな?一人じゃねえのか、捕まえてたのは?」
煙が晴れてそこから出てきたのは、鎧に身を包んだ...騎士の様な男だった。
もちろんストーリーも。




