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第三十四話 矛盾

子供って、こっちが全く気にしてない様なことを物凄く気にすると思う。



 ウァァァァァ!!









 .....歓声が聞こえる。


 この闘技場では、まだ誰も何もしてないのに。



 どうやらティーザは、人を相手にする事がない様だから珍しいらしい。


 それでここまで人が集まっているのだろう。




 「...........................」



 『守らなきゃ』と思ってた。


 歳上って聞いて驚いたけど、それでもやっぱり守らなきゃって思ったんだ。


 あんな可愛い少年に、苦労をさせてたまるかと。



 ........でも、ティーザは守られる程弱くなかった。


 それどころか.......逆に守られた。




 人を殺す前に、止められた。






 「................はぁ。」



 分かってたんだ、そんなのは傲慢だと。


 それであの少年が納得する訳ないと。



 ........あの子は、根っこが優しいから。



 .......それでも.....笑顔でいて欲しかった。






 ...........その笑顔を、枯れさせかけたのは私だ。



 "守る"と言う傲慢さで、ティーザを悲しませようとしてしまった。




 「.......................」








 .......私には、あの子を守る資格なんてないのかな....
















 「ディアドラさん?」


 「っ!」



 声を掛けられた。女の声だ。



 振り向くと、受付の女の人が立っていた。




 「........なんじゃいコノヤロー!」



 明るく振る舞う。


 こうしておけば、多分気も晴れると思うから。



 「ん?あの男はどした〜?」


 「準備室に案内しましたよ。............エリン様から貴女を見に行ってくれと言われて。」



 ......そっか。


 落ち込んでると思って、そうしてもらったんだな。




 「........全く!気を遣わなくてもいいというのに!」



 だって......悪いの私だし。


 あの男にも問題はあったけど、殺す程でもなかった。......それを殺そうとしたのは、他ならぬ私だ。








 「どう考えたって、私が悪いのにさ!」




 ......責めたって別にいい。これはきっといけない事だから。








 ......でもティーザは責めなかった。


 心の中だけだけど、『怒ってくれてありがとう』と思ってた。



 .......自分の為に怒ってくれる人がいなかったからそう思ったのだろう。でも......それでもこれはダメだ。



 ........殺そうとした事を、ティーザは責めなかった。


 感情に任せて殺す事を駄目だと言っただけ。








 .......なんで悪い事した私を怒らなかったんだろう。










 「.........ディアドラちゃん。ひょっとしてだけど、エリン君に申し訳ないと思ってるんじゃないの?」



 .........図星を突かれた。


 さっきまでと違う、母ちゃんのような優しい声で。




 「..........ちょっとね。」



 全然ちょっとじゃない。


 かなりショックを受けてる。



 ........何かしたげようと思ってるのに、迷惑しか掛けてないから。


 ......何か、助けになる事をしてあげたいのに。




 「.......どういう出逢い方をしたのかは知らないけど、ディアドラちゃん。.....エリン君は多分、助けとか全く気にしてないと思うよ。」


 「.....................かもね。」



 あの子は強い。


 ......私が何かやった所で、迷惑に思うだけだろう。











 「...........どうでも良い話するね?ディアドラちゃんは全く知らないだろうけど、エリン君って人の興味が全く無い子なんだよ?」


 「............えっ?」



 突然、なんの脈絡もなく言われた言葉。


 エリンがティーザの......傭兵の名前だっていう事は理解してる。


 でもこの人の言い方は.......傭兵じゃない時でもそうだと言ってるような言い方だ。







 「................それは少し違うよ。」



 確かにあの子は他の人の事を、"お人形"と思ってるみたいだけど.....そんな事はない筈だ。





 「............."人"とは関わりたいと思ってるんだよ。」



 あの子は、人には興味がある。


 ただ........ティーザの思う"人"が、ティーザの周りに居ないだけ。




 「.....................あの子の事、理解できてるんだ。」



 理解は出来てない......観てしまっただけ。




 「........だから守ったげたかった。」



 "人形"じゃない人と関わりたい。


 .......でも、人と関わったら自分がそいつを不幸にさせてしまうかもしれない。




 寂しがり屋の癖に、そんなめんどくさい一面を持ってしまってるから。


 人と思われなくても隣に居てあげようと......一人にさせないとしてたのに。



 ........あの子を泣かせかけた。




 「........あの子は守って欲しいんじゃ無いと思うよ。」


 「............そうだね。」



 転生体うんぬんとか関係なく、あの子は強い。


 そんな子が守られるのなんて、ストレス以外の何物でもないだろう。












 「................ディアドラちゃんは、なんで守ろうとしたの?」



 聞かれた。


 一番答えづらい事を。








 「...........................似てたから。」


 「..........誰に?」














 ...........人と関われば人を不幸にしてしまう。それを理解してるのに寂しくて堪らない。相手を想ってしまうがあまり、ソイツに何かあったら自分のせいだと思い込んでしまう。........相手が笑顔で居てくれるなら自分の事はどうだってよくなってしまう。











 「........母ちゃんに。」


 「...............そう。」















 よく似てるんだ、二人は。


 ........だから、目を離したくない。






 私は、母ちゃんが心配だった。目を離したら勝手に死んでしまうんじゃないかと思ったから。

 身体は強い事は分かってても、心が弱い事は分かってたから。



 .....ティーザもそうだった。

 なんなら母ちゃんよりひどい。....怪物なんか死んでしまえって、父親に言われただけで死んでしまいそうだから。



 そして.....私と違って、ティーザにはもうお母さんが居ない。


 唯一甘えられる存在が......人で居させてくれた存在が、もう居ない。



 .......怪物になってしまってもおかしくないんだ。


 寂しさを紛らわす為に、人と戦って殺してしまう化け物に。









 .....助けてくれた恩は勿論ある。


 恩は返すものだと思ってる。.........それだけだったら、ティーザが化け物になろうが私には関係ないと思えた。






 でも................あの涙を見てしまった。


 安心して、涙腺が緩んでしまって、我慢できずに出てしまった、辛い涙を。

 



 その涙を見ただけで思った。


 .........この子は、怪物なんかじゃない。







 ただ周りより強いだけの........人の子だと。










 「.......だから守ってあげたかった。」



 転生体ではなく、"人"としてのティーザを。


 .........私がとても綺麗だと思った.......その魂を。




 「...................それがどうだよ.....」



 守れてないどころか、傷つけようともした。


 あんまりにも優しい魂に傷を。




 「....................はぁ.......」



 溜め息が出てしまう。


 ........溜め息を出すと気分が落ち込んじゃうからやめなさいと、母ちゃんに言われたのに。




 「..............ディアドラちゃん。......深く考えすぎなんじゃないかな?」




 そんな事を言われた。




 「..................そうかな.....?」



 別に普通の事だと思う、守ろうとする事は。


 あんな子供を戦わせるなんて間違ってる。......それは、他でもない貴女が思ってるのに。




 「.......エリン君と話す時ね?..........ずっと言うの、友が欲しいって。」



 .........それは、もう叶ってる筈だ。


 あの時、ティーザを探してた少年がその筈。.....ティーザも彼の事を、友達と言ってたし。




 「.............『僕と同じ土俵にいる』友が欲しいって。」


 「.................それ本気....?」



 聞いて呆然とした。


 .........同時に納得した。





 ティーザの、周りに向ける目は気遣いのそれだ。


 触ったらすぐに壊れそうな物を取り扱うかのように、もう死ぬであろう老人を介護する子供の様な目で、人を見ていた。



 .......でも、私にだけは違った。


 気遣ってはいたが、それは『母親(ひと)に対する』ものだった。



 お肉を渡してくれた時も、ハイになった私に追いかけ回された時も........人を殺しかけた私を止めた時も。



 なんだか懐かしんでるような........物に向ける目じゃない、穏やかな目をしてた。




 「.........長年の直感だけど......ディアドラちゃん、とても強いんじゃない?」


 「....................まさか。」



 いや、あり得なくはない。


 弱い奴(父親)は、バケモノとして。とても強い人(お母さん)は、ティーザを人として見てくれてた。


 そんな子供時代を過ごしてるんだ。価値観が狂っててもおかしくない。



 .......でも、だとしたら悲しすぎる。


 だって..........それってようは.......




 「........多分あの子にとっての人って......自分を打ち負かせられる人の事だと思う。」



 .............唯一の人がもう居ないって事だから。







 「.........................」



 言葉が出なかった。


 あんな過去を見てしまった分、辛かった。



 ........ティーザのお母さんは、弱ってはいた。....だけどもし万全の状態だったら、真正面からティーザと戦っても勝てるぐらいの強者だった。


 ........そんな人が、病気になってる身体を引きずってでも、自分を守ってくれてた。




 ........『子供は親の背中を見て育つ』とは言うが、あれは、子供は親を基準にするんだぞと言う、親に対する脅し文句のような物だ。



 ティーザは、人の醜い部分を父親から直に見せつけられて、人の綺麗な部分をお母さんに与えられてきた。












 ........子供なんだ、そりゃ綺麗な方を人だと思いたい。


 .....でもその結果、ティーザはお母さんの様な人以外を、人と見れなくなってしまった。



 .......父親のせいで、こんな歪み方をしてしまうなんて。


 ..........こんなに悲しい事はない。






 「.........多分エリン君は、ディアドラちゃんが"友"なんじゃないかって思ってると思うよ。」


 「.......私が?」



 ない。絶対ない。


 私には、あのお母さんの様な優しさはない。包容力もない。............第一、歳下だし。




 「エリン君が君に向けてる目は、明らかに母親(ひと)に向ける目をしてたから。」



 .......この人も気づいてた。


 ティーザの歪んだ、人の価値観に。




 「...........だからこんなに気にかけるんだと思うよ?」


 「............そうだね。」



 人は、お母さんしか知らない。


 だから、私に対する対応も、感情も、お母さんに向けるものと一緒になってしまうのだろう。



 .......そりゃそんな人に、人殺しなんてさせたくはないな。





 「.........話を戻すね?.....エリン君は、守って欲しいんじゃなくて、ただ隣に居て欲しいだけだと思うよ。」


 「...............隣にか.....」



 無欲でいて.....強欲な、甘えん坊のお願いだ。




 「.....................」


 「ディアドラちゃん。.....エリン君は君の友になりたいんだと思うの。.........守ってあげるだけの関係じゃ、友にはなれないよ?」



 .........その通りだ。


 守るだけじゃ、お母さんと一緒だ。



 ........ティーザのお母さんは、あの人だけだ。私じゃない。.....でも。



 「................それで良いのかな?」


 「良いの。.....友達って、そういうものだから。」



 ........分からない。どうすれば良いのか。


 私も......母ちゃん以外の人を知らないから。




 「取り敢えず、"アレ"を見てから考えたら?」


 「........えっ?」



 ネイと言う女の人が、闘技場に指を指すと。




 「きたぁぁ!!!」

 「ほんもんだぁぉ!!!」

 「噂通りの可憐さね!」

 「こっち向いてぇぇ!!!」




 .......ティーザが出て来てた。









 「.......................あれが、"エリン"か.....」



 傭兵として、剣士として立つティーザの姿は、普段とは大違いだった。


 穏やかでいて鋭い目、攻撃のそぶりを見せただけで反応しそうな張り詰め方、隙が一切ない立ち方。



 そのどれもが、私の見るティーザとは違った。








 「.................ふぅ。」



 集中して、剣を構える。


 持っているのは世剣ではない。木で出来た剣だ。



 決闘といっても、これは殺し合いではない。実剣を使う理由も必要も無いと言う事だろう。



 .....そして。




 「.....................!」






 ......ビィンッ!!!






 .........突然、剣を振った。








 「.......................速い...!」



 一振りで、ティーザの凄さが分かってしまった。



 構えもしてなかった。ただ普通に振っただけ。.....なのに、()()()()()()()()()()


 音が追いつけない程の速度で振ったと言う事だろう。




 「......................すぅぅ.....」



 深呼吸をして。





 .......ヒュッ!




 ......剣を振り始めた。




 「出た出た!!!」

 「アレが噂の剣舞か!!?」



 傭兵達が騒ぎ始める。まるで、神にお告げを受けた様な教徒の様に。




 ヒュッ.....サッ........ヒィン.....



 そんな声なんか耳に入ってこないのか、ティーザは気にせず剣を振り続ける。





 静かに、真剣に。.........その舞が...





 「――――――――――――綺麗。」





 剣と言う、人の命を奪える物。


 そんなものを扱ってると言うのに、その舞がとても美しい物に見えた。........ティーザがまるで、神に前で行う舞をしている巫女の様にも見えた。


 そのぐらい美しく、軽やかで..........神秘的な物だった。





 .........シュラン.......





 「.........ん?」



 その舞を見てて、違和感を感じた。


 .......ティーザが、踊ってるのではなく、()()()()()()()()()()()()




 ....シャッ......ヒュッ........ザッ.......




 舞の動きを見ていると、ただ踊ってる訳じゃない事も分かる。


 防御、反撃、回避、攻撃.......その全てが踊りの様に見えてるだけで、ティーザは踊ってない事が分かった。




 「.....アレ、エリン君なかなかやらないのよ?」


 「............そうなの?」



 まぁ、ティーザがやる理由もないけど。





 ...シャラン..........ブンッ!!!




 「............待って?」



 今見えた。


 .........()()()()()()()()()()()()




 .....キンッ!......ビュン......ザッ.....




 幻影の筈だ。


 今、ティーザを観て分かった。...アレはティーザのイメージだ。



 本気でその場にいると想像して、戦っていると。




 「........でも...」



 これは奇妙にも程がある。


 想像なんだからダメージはない筈。.....なのに、ティーザが幻影の攻撃を防ぐと、ティーザの剣が震えている。


 まるで、本当に攻撃を防いでいる様に。




 「見えたみたいね?」


 「.......うん!」



 きっと、みんなは知らない。


 知った所で意味もない。



 ........そんな秘密を、ティーザは見せてくれたのだろう。.....私を励ます為だけに。




 「........エリン君がアレをするのって、誰かが落ち込んでる時だけなの。.....あの舞を見てると、元気が出てくると言うかね。....あの舞は、人を励ます力がある物なの。」


 「......だね!」



 見てるだけで、なんだか元気が出てきた。


 自分も、そう言うふうになれたらなって思えて来た。




 .......そして。





 ........ビィン!!!





 .....ティーザが、幻影にトドメを刺した。









 「「「ウォォォォ!!!」」」








 傭兵達が、雄叫びを上げる。



 .....ティーザがしなかったのは、これもあるのかもしれない。


 ただ舞った(戦った)だけで、周りが急にハイになったらたまったもんじゃないし。




 「..............良いもん見たなぁ!」



 本当に、心の底からそう思えた。




 「まだ終わってないよ?.....次はアライさんとの試合だからね。」


 「あぁそうか!」



 すっかり忘れてた。


 あの男の後に私の番だった。




 「.......でもする必要ある?...逆にしらけない?」



 と言うか絶対しらけると思う。


 そりゃ、試験ではあるけど.......ここまで盛り上げといてあっさり負けたら、あの男......とんでもない大顰蹙を食らうぞ?




 「だからここまで盛り上げたんだと思うよ?」


 「えっ?........あぁ。」



 なるほど。


 盛り下げさせて、皆の前で恥をかかせると!

           ..........いや性格わっる!?





 「そこまでする必要ないでしょ.....」



 いくら殴られそうになったからって、流石にこれは......






 「.....はぁ......エリン君もそうだけど、ディアドラちゃんも自分の事になると鈍いね?」



 .....鈍い?私が?




 「いやいや、私鋭い方よ?」



 心が観れるんだし。




 「はいはい、じゃあそう言うことにしときましょうかね。」


 「いや、本当だよ!?」



 なんか微笑んでますけど!?なんか『あ〜また言ってるわ〜この子』みたいな顔してますけど!?




 「それよりほら!始まるよ!」


 「えっ!?」



 ティーザの反対側の入り口を見ると、あの男が立っていた。




 「座って座って?」


 「あぁうん!」



 もっとかかるものかと思ってたが、どうやらもう始まるみたいだ。



 (あ、そうだ!)






 ピィィン...!





 ティーザの背中に、盗聴魔術のコアをくっつけた。


 相当小さいものだから、多分気づかないだろうけど。




 「.......本当はダメだけど、まぁいいでしょう。」


 「おう......サーセン!」



 ネイには気づかれてたみたいだけど。



 「さ〜てと!」

 「私にも聞かせて?」

 「あぁいいよ!」



 どんな会話をするのかなぁ?





 (テメェ........動じるとでも?)



 男の声が聞こえた。......結構低めの。




 「おぉ!キレてるねぇ!」





 (いや?....お前が寂しくない様にしてやっただけだが?)


 (........このクソガキが...!!)




 ティーザが相手を舐め腐ってる。


 .......普段だったら絶対にないと思うのに.....殴られそうになったの、そんなに嫌だったのかな?



 「..........本当に鈍ちんだなぁ」



 ネイが何かを言ってる。


 .......だから私鈍くないってば!




 (.....この場で恥かかせてやるよこのクソガキ。)



 うわぁ、子供にとんでもないこと言ってるよアイツ。.......まぁ、私にもとんでもない一言ぶっ放したけど。


 私ぐらいの歳の子に手ぇ出すと捕まるとか聞いたぞぅ?........母ちゃんから。




 (恥をかく予定はない。さっさと終わらせて、ディアドラと戦わなくちゃいけないんでね。)



 .......本当に、棘のある言い方するなぁ。戦う時はあぁなっちゃうのかな?



 (.........舐めやがって...!)



 そう言って、男は後ろに下がった。


 始める時はある程度の距離を持ってやるそうだから、多分始める気満々なんだろう。













 (.......ディアドラ、聞いてたでしょ?)


 「うぇぃ!?」



 突然話しかけられた。


 まさか.......気づかれたと言うの!?



 「よ.....よく気づいたね......」


 (まぁ、特級は伊達じゃないって事さ。)



 わお。


 大勢の人が犠牲になるぐらい追い詰められないと言えない様な事言ったぞ?




 (........見ててね?大丈夫だって思わせてあげるから。)



 そう言って、ティーザも後ろに下がってった。




 「............???」



 大丈夫だと思わせるって.......?


 あの時も言ってたけど、どう言う意味なんだろう。




 「.......あの子口下手な所あるから。行動で示そうとしてるんだと思うよ。」


 「行動で?」



 ティーザらしいと言えばそうだけど。


 そんなことを考えてたら。





 ドォォォ!!!!




 急に大きな音がなった。




 「びゃっ!?......うるさ」



 「「「うぉぉぉぉ!!!!!」」」



 「びぃっ!?」




 突然、傭兵達が興奮し始めた。




 「ほら!ディアドラちゃん、始まったよ!」


 「えっ!?さっきのそう言う意味!?」



 だからこんなに興奮してるのこの人ら!?




 「.......て、ティーザは!?」



 急いで闘技場の方を見ると。











 (........................)


 (...............誘ってんのか。)



 剣を構えてなかった。







 「...........舐めてんなぁ。」



 アレってようは.....()()使()()()()()()()()()()()()()()


 とんでもない煽り方だなぁ。




 (.............来ないのか?今が好機だぞ?)



 しかもこの言い方。


 男を逆上させる気満々の発言だ。




 「ここまで怒ってるエリン君を見るのは久しぶりね。」


 「えっ?ティーザ今怒ってるの?」



 てっきりティーザは、怒らないものだと思ってたのに。




 (..........そんな見え見えの罠にかかるかよ。)


 (そうか。じゃあこっちから近づいてやろう。)



 そう言ってティーザは。





 ザッ....ザッ.....ザッ......






 男の方に歩いて行った。


 無防備な様にも見えるが。








 「.............仕掛けたら負けだな。」



 ティーザの歩き方を見てそう思った。



 人は動くと、重心がズレる。そのズレを突かれる事は、戦いにおいて最も危険な事。


 だから戦う者たちは、ズレを起こさない様にする。動きを最低限にしたりして。





 ......でも、ティーザの歩行にはそれが無い。


 ズレの一切がない。揺れる事なく男に向かって歩いていく。




 あぁなったら、もうどうしようもない。


 ズレを突かなければ勝てない程ティーザは強いのに、そのズレが存在しない。........仕掛ければ、相手の方が隙を晒すことになる。ティーザはただ歩いてるだけだから、攻撃を仕掛けられる前に仕留められる。





 不安定な所が無いから、攻撃を仕掛けても見切られてから難なく防がれてしまう。かと言って、攻撃しなかったら斬撃が飛んでくる。



 ........例えるなら、みんな真面目にジャンケンしてる中、一人だけ後出しジャンケンをしてる様な物。


 あの歩行は、そのぐらいずるい。




 (ちぃっ!!)





 ブォン!!!





 男が剣を振った。


 何を思ったかは知らないが、このまま仕掛けなかったらやられると思ったからだろう。


 .....だか案の定。




 ビュン!!!




 (.........そんな感じね。)





 避けられていた。


 冷静に、慌てる事なく、攻撃を見て避けていた。







 「........仕掛けないんだなぁ。」



 ティーザだったらあの一瞬で仕留められただろうに。




 「決闘とは言え、これは試験だから。.....一応、相手の実力は見ておかないといけないの。」


 「あぁなるほど!」



 すぐに終わらせちゃったら試験の意味が無いから仕掛けなかったのか!


 ........面倒くさいなぁ。




 (くそっ!!)




 シュッ!!!




 男が攻撃を仕掛ける。


 あの歩行をされると、どの攻撃も無効化されると思ったのだろう。歩きだす前に、攻撃を仕掛けて体制を崩すつもりかな?


 まぁ、判断速度は悪くない。


 悪くないけど........おつむがアレだなぁ。




 シュッ!!ビュン!!シャッ!!!




 (がんばれがんばれ〜。)


 (〜〜!!このっ!!!)



 ティーザは放たれた攻撃を全て避けている。川辺で水遊びする子供の様に。


 男は連撃してるけど........そもそも見てから避けられてるんだから、どう攻撃したところで意味がないだろうに。




 「....ルァァ!!!」



 ブォン!!!!




 男が剣に魔力を込めて振る。


 ティーザのやった、魔力そのものを放つ技は難しい部類に入る。....でも、アイツのやってる様な魔力を込めて()()()()()()()()技は難しくはない。



 男の放った斬撃は、余裕でティーザのいる所まで届いた。


 でも。





 ダンッ!!!


 



 ティーザは、跳んで避けてた。大縄を、ピョンと飛ぶ様に。






 ビィンッ!!!





 (.........悪くはないな。)





 放った斬撃は、闘技場の壁を抉るほどの威力だった。


 




 「おいおい!なかなかすごいことになってるな!!」

 「これが特級の戦いか!!」




 傭兵たちのボルテージは上がっていく。




 「............何分たった?」


 「えっと.......一分。」



 時間制限は確か......三分か。


 じゃあそろそろ仕掛ける頃合いかな?




 (............予告しておく。)


 (..........あぁ?)



 ティーザが、剣を逆手に持ち替えながら話す。




 (.....()()()()()()()()()()()())



 .....そう、矛盾してる様なことを言い出した。




 「.....じゃあなんで構え直してんの?」



 飛び込んで切り掛かる為じゃないの?




 「エリン君の常套手段よ。.......分かってても回避しようがないのよね。」


 「回避しようがない?」



 どう言う意味?




 (はぁっ?.....テメェ何言って)


 (信じるかどうかは、お前の自由だ。)



 そう言いながら、ティーザは構えた。


 右脚を前に出し、前傾姿勢になって。




 「........どうする気?」



 どこから見ても斬りにかかる様にしか見えないんだけど。




 (.........テメェどう言う)


 (行くぞ。)



 男が言い終える前に。




 ダンッ!!!




 ティーザが飛び出した。




 ザッザッザッ!!!




 ティーザは剣を逆手に持っている。


 わずか三歩で男の前に到達して。




 カチャッ!




 石を遠くにぶん投げるかの様に、剣を振りかぶろうとした。




 (まずっ!?)



 男が反応して、斬撃を防ごうとする。

 考えた結果ではなく、反射的に防ごうとしていた。


 .....おかしなことではない。普通、当たったら死ぬ物が目の前に飛んできたらそっちを防ごうとする。それが、生物として当たり前の行動。



 .........おかしいのは多分ティーザだ。





 ドギュッ!!!



 「ぶばっ!!?」




 .........剣を使わず、左拳で男の腹を撃ち抜いてたから。


 剣を振りかぶってたのに。





 ドグォッ!!!




 突っ込んだ勢いのまま殴ったのだ、とんでもない威力だったのだろう。.......壁に叩きつけられてた。



 (がっ?!!............ぅ.........)



 相当なダメージだったのか、壁に叩きつけられて失神してしまった。


 .....これじゃあ続行は不可能。




 (.........剣に目が行き過ぎだよ。)



 ティーザがボソッと言った。意識なんて残ってないだろうに。




 「あ〜あ。アライさんも引っかかっちゃったか。」



 呆気ない終わりだった。


 ........あんまりにも呆気なさ過ぎる終わり。




 「え..........終わりか?」

 「いやいや........本当に?」

 「.......あの男.....のびてるわね。」

 「えっ?...........じゃあ決着?」



 そのせいで、傭兵達の空気もおかしくなってしまった。


 そりゃそうだ。さっきまで激闘が行われてたんだ。そんな戦いが、大技もどんでん返しも無く、ティーザがただ殴っただけで終わったんだ。



 .......人同士の戦いを望んでた奴等にとっては、余りにも不満が残る結果。




 「.........すっごい!!」



 そんな中、私だけだろう。


 ..........あんな友を持てて嬉しいと思えているのは。




 「.....分かったでしょ?守らなくてもいいって。」


 「...........よく分からないけど、分かった気がする!」



 ティーザはきっと、私に気を遣わせないようにこんな事をしたのだろう。.......ただの友になりたいから、自分は強いんだぞって証明しようとしたんだろうな。


 .......だったら。




 「.......こりゃ、私もやらなくちゃな!」





 人は守らなきゃいけない。守ってあげないといけない。.....きっとティーザもそう思っちゃってる。だから、その固定観念をぶち壊してやる。そうしなきゃ、ティーザとは友になれないから。




 「ふふっ!.....やっちゃう?あんなの見た後で?」



 ネイが面白そうに聞いてくる。



 .....ティーザが、私をお母さんと同じだと考えてるのなら、その考えを笑顔で否定してやる。




 「..........もちろんだとも!」




 君に見せつけてやるよ、ティーザ。





 ......君がようやく手に入れた友の....私の強さを。





やっと戦闘回に突入だぜ!

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