第三十二話 再開
朝からはキッツイ。
ツィイー、ツィイー。
「.........んぁ!?」
小鳥の鳴き声を聞いて、目が覚めた。
「.........え?」
どうやら僕は、ベッドの上で寝ていた様だ。
かなりふかふかで、座ってるだけで力が抜けてく程の代物だ。
.......だが。
「......ベッドなんかに行った記憶ないんだけど?」
.......何なら、説教してからの記憶がない。
「..........昨日何があった?」
思い出してみよう。
確か昨日は.......そうだ。
ディアドラに服を持って行こうとしたら、ディアドラが服を作ってて意味がなかった。
.....自分で言ってて訳わからんが、ここまでははっきり覚えてる。
.....その後、寝ようって話になったんだっけ?
「.....あぁそうだ。......その後確か....」
寝ようと思ったら、ベッドが何故か一つしか無かったんだよな。
流石に女の子を床で寝かせるのはダメだって思って、ディアドラに譲ろうとして.........
(えぇ!?何で!?一緒に寝ればいいじゃん!)
「..........あっ。」
完全に思い出した。
一つのベッドに寝ようって、ディアドラが言い出したんだ。
それで『男と同じベッドで寝ちゃいけない』って事を教えないといけないと思って、また説教したんだ。
「.........そうだった。」
そしたら、ディアドラが『一人じゃ寝れない』って言い出して........でも一緒に寝たら、こっちがもたないから嫌だって言ってたら......
(〜〜!!!そんくらい良いでしょバカァ!!!)
(いやダメに決まってるで)
ドゴォォ!!!
(しょベェェ!!!??)
........拗ねたディアドラに殴られたんだった。
「........はぁ....」
じゃあ、この状況はあれか。
顔面にいいのをもらって気絶してしまった僕を、ディアドラがベッドに寝かせたからこうなってるって事か。
....んで多分そのまま一緒に寝たな、あの子。
なんか、ちょっと甘い香りが残ってるし。
「............何で?」
男はケダモノですよって言ったはずなのに、何で一緒に寝ようと考えた?
僕だったら何もしないと?
........それはそれで、男と認識されてないって事で悲しい。
「....................待てよ?」
そういえばあの子......初めて会った時に『君は母ちゃんと一緒』みたいなこと言ってたよな?
それで記憶の中のディアドラも、『多分母ちゃんみたいな奴に惚れると思う!』....とか言ってたな。
...........まさかあの子......僕をお母さんみたいな者だと思ってるんじゃないだろうな?
「.........あり得るな。」
もしそうじゃなきゃ、僕に褒められた時のあの反応は何だ?あれ明らかに、親に褒められた子供みたいな反応だったぞ!
それに距離も.....歳のせいにするには近すぎるし、お説教だって、その気になれば逃げれた筈なのに逃げなかった。
何なら、流れるかの様にこっちを気遣ってるし。
絶対そうとしか思えない。
「..............困ったな......」
自惚れならそっちの方が助かるが、もし僕に惚れてるのだったらどうしよう。
だって.....お母さんと同じ距離で接して来るってことでしょ?
あんな.....凶悪な肉体が。
しかも相手は歳下の幼女。絶対に手を出してはいけない。
そんなのが、大人になりかけの身体でくっついて来る。そして、一緒に寝て来ようとする。
..........えっ拷問?生殺しにも程が無い?
「.......あと怖いのが...」
ディアドラのお母さんが言ってた、『食べちゃうでしょ?』って言葉。
多分、食人的なものでは無いのだろうけど.....
.....ディアドラがたまに向けてくるあの目。
.........ちょっと怖いんだよなぁ。なんか.....襲われそうで。
「.........まぁ、仕方ないか。」
彼女も不安なんだろう。
呪いが解かれたからと言って、お母さんがいる訳でもないから。
何か、安心できる者と一緒が良いと思ったんだろう。
「......いや、僕のどこに安心できる要素がある?」
無いでしょ。
何なら家も無いしね!今家で寝てるけど。
「.....まぁ、いいや。」
これは、ウジウジ考えても解決しない。
多分、本人もいつか辞めるだろう。
あの子はまだ幼い。
僕なんかより目の離せない様な奴を見つけたら、そっちに行くだろう。
............そうなって、耐えられるのだろうか?
「...................?」
何を考えてるんだ僕は?
.......あの子に執着してるのか?
「..........ないない。」
僕に限ってそれは無い。
他人に興味なんてないんだ。........執着なんてない筈だ。
.............きっと。
「...............外に出よう。」
なんか頭にもやがかかってしまった。
......朝の風を受けたら流れてくかな。
ガサッ....
「.....ん?」
外に出て最初に感じたのは、匂いだ。
「.......何だ?」
かなり良い匂いだ。
香ばしい訳ではないが、何だろう......小腹しか空いてない状態でも、食欲をそそられる様な匂いだ。
「.........?」
匂いの元を辿ってみると.......
「ふへへへぇ...!」
なんか、魔女みたいな笑顔をしたディアドラが、鍋を混ぜてた。
「―――――――――――――――」
変な笑い声が、魔女の笑い声にしか聞こえない。
鍋を混ぜてると言うところで、魔女感が強まってしまってる。
.....それにあの目。
あの目は、上手くいかなかった事が上手く行った時になる目だ。
全能感に溢れ、自分は何でもできると思ってテンションが尋常ではない程上がってしまってる状態だ。
人というのは不思議なもので、テンションが上がると本来しない事をしてしまう生き物だ。
何の理由もなしに。
........リュウズもたまになってたから分かる。
.....あれは関わると厄介な状態だ。
そんなディアドラを見て、すぐに思ったのは....
「.......そっとしとこ。」
触らぬ神に祟りなし。
.....もう殴られたくない。....ディアドラのパンチ、他の人のと違って、痛くないけど衝撃だけがくるから気持ち悪いんだよなぁ。
「...........誰が気持ち悪い魔女の祟り神だってぇ?!」
「うぃい!?」
心の声を聴いたのか、ディアドラが突然振り向いた。
......ブリッジの様な感じで、上半身だけを反り返らせて。
「ティーザ!まさかそんな失礼なことを思うとね!!」
「待ってディアドラ!そんな事は思ってないよ!?」
関わらないでおこうとは思ったけど、気持ち悪いとも『魔女の祟り神』とも思ってもない!
「人が丁寧に朝御飯を作ってると言うのに、ぐうすかお眠りをかまし作ってる姿を笑い物にする!....気に入らないねぇ、その根性!!」
「人の話を聞きなさい!!!」
ダメだ!なんかこの子、ハイになってる!
こっちの話を聞いてない!
「その根性、修正してやるっ!覚悟しろぉ!!!」
ディアドラは鍋を混ぜてた木材を片手に、こっちに飛び掛かってきた。
「ウリィィィィ!!!!」
「ちょっと待って!?何で君、そんな朝から元気なのォォ!!!?」
僕の朝は、ディアドラから追いかけ回される所から始まってしまった。
「いや〜やっぱ走るのはいいねぇ!」
「......そう。」
朝っぱらから僕を追いかけ回してご機嫌なのか、ディアドラは明るい。
対する僕は.......元気を吸い取られたのか、疲れた。
「あ、もうちょっと待っててね!」
そう言って、ディアドラは鍋の方に走ってった。
「はぁ.....」
....昨日怒られたというのに、もう元気だ。
しかも空元気などではない。
.....いくら何でも立ち直りが早いでしょ...
「.......もういいや...」
これ以上ここにいると、何回走り回されるか分からない。
家に入って、やり過ごそう。
ガサッ....
「.........ん?」
ふと、入口の棚に目をやった。
「................何だこれ?」
そこには、"実物の様な絵"があった。
「.............本物?」
そのぐらい、実物そのものだった。
「...........凄い.....のかな?」
いや、凄いのだろう。
絵の事を全く知らないが、絵と言うのは風景を"再現"する為に描くものだ。
だが再現である以上、現実とは劣る部分もある。
この絵は再現度がとんでもなく高い。まるでその場の風景を、そのまま持ってきたかの様だ。
一体どんな描き方をすればこうなるのだろう?
「........んで....これは。」
その絵に描かれていたのは。
「...........槍?」
真っ白な美しい槍だった。
いや、槍かどうかは分からない。
槍かもしれないし、ただの棒かもしれない。
その槍の先端には何もついてなかったから。
「......へんちくりんな...」
普通、槍には穂先と言う刃物がついている。
尖ってたり、何本も生えてたり、斧が付いてたりと様々だ。
.....でもこの槍にはそれが無い。
穂先が壊れてるとか、無くなってるとかじゃ無く、最初から無い様に見える。
「........じゃあ何で...」
僕はこれが槍だと思ったのだろう?
普通の人なら、棒だと答える筈だ。なんせ、穂先をつける場所がそもそも無いのだから。
それなのに、真っ先に"槍"が頭に浮かんだ。
それが当然である様に。
.....ひょっとして...
「......僕はこれを知ってる?」
実感は全くないが、そうとしか考えられない。
それに何だか、この槍には既視感がある。
.......バルドに関係ある物?だとしたら.....何なんだ?
「ティーザ!出来たよぉ!」
「!」
ディアドラの声で意識が戻る。
.....そういえば、ディアドラは何かを作ってたな。
昨日に続いて今日まで.....本当にありがたいな。
「手伝おうか?!」
「ん〜じゃあお願い!」
頼まれたんじゃ仕方ないな。
取り敢えず、この絵の事は後回しだ。
ガサッ....
家から出たら、目の前にディアドラが居た。
「おぉ!ティーザ!これ持ってって!」
「はいはい!」
片手に持ってた皿を持った。
ディアドラの持ってる物を見てみると、何かの汁物の様だった。
「それ机にお願い!」
「分かった!」
机に持ってって、置いた。
「よっと.....へへっ!上手く出来たよ!」
ディアドラは妙に上機嫌だ。
......そういえば朝から機嫌が良かったな?
「ディアドラ。何でそんなご機嫌なの?」
思い切って聞いてみる。
「そりゃもう!寝る時にはあったかいティーザが、起きた時にはティーザの可愛い寝顔が目の前にあるんだよ?それでご機嫌にならない訳ないでしょ!」
こっちが恥ずかしくなる様な事を、笑顔で言ってきた。
......なんでそれでご機嫌になるのか....
「そりゃご機嫌になるさ!可愛い子の顔はいい物だからね!」
「それ女の子に言うセリフだと思うけど?」
流れる様にこっちの心を観てくるし.......本当にご機嫌だな。
「そう?まぁそれは置いといて!」
マイペース過ぎるな....本当に。
まぁそれも、この子の美点なのだろうけど。
「今日の朝御飯は、『鳥骨ダシの野菜スープ』、『レバーの素揚げ』だよ!」
「おぉ!」
そうか。鍋を混ぜてたのは骨からダシを取ってたからなのか。
.....多分初めての事だったから、上手く出来てハイになってたんだな。
「.....美味しそうだね!」
「.......ぃひ!そうでしょ!」
スープの方は、アッサリしてそうだ。
それに、思ったより野菜が多い。
昨日、肉しか食べてなかったから、今日の朝に食べようと考えたのだろう。
こんなに入ってたら、胃にとても優しい.......待てよ?
「......これ、全部能力で生やしたでしょ。」
野草はまだ分かるとして、人参とかねぎとかレタスとか、短時間で取れる様な物じゃない物ばかりが入っている。
「まぁね!」
ディアドラは明るく肯定した。
「...........複雑だなぁ。」
ディアドラが生み出す生命は、ディアドラの生命力を使ってると言う。
つまりこの野菜は、ディアドラの血肉から出来てると言っても過言では無い。
....それを食べるこっちの身にもなって欲しい。
「まぁいいか。....それで。」
レバーの方だが.......まぁ美味しそうではある。
レバーは苦手ではあるが、これなら食べられそうだ。......ただ。
「.....何で揚げたの?」
油物は、いけなくはない。いけなくはないが......好き好んで朝から食べたいわけでもない。
........ただ単純にキツイ。朝は。
「これにはね?地底よりも深く空よりも高い理由があるのです!」
「それを言うなら『海よりも深く山よりも高い』だよ。」
意味合い的にはあってるけど、過剰表現してるし。
.....絶対、大した理由じゃ無いぞ....これ。
「昨日、包み焼きがあったでしょ?」
「....あぁ!あれね!美味しかったよ?」
ニンニクがちょうどいい塩梅で。
.....ひょっとして、包み焼きに問題があったのだろうか?
「...実はアレ、揚げ物になる筈だったんだよ?ただ肝心の衣がなくてね。」
「あぁ、そりゃ致命的だなぁ。」
唐揚げに衣が無いのは、正直言ってない。
唐揚げは、肉の味と衣の食感で成り立ってる様な物。その衣が無いのでは話にならない。
「....じゃあアレは、仕方なく変更した料理って事?」
「うん!じゃなきゃ、ニンニク刻まないよ!」
確かに、あんな風に焼くのだったらニンニクは刻まない。
刻むのは油に匂いを移す時で、肉と一緒に食べるのだったら普通は輪切りだ。
....それに生姜も入れないだろう。
「......それがこれと関係あるの?」
関連性を一切感じれないけど。
「昨日揚げ物出来なかったから、今日作ってやろうと思って作った!」
.....なるほど。
つまり、してあげようと思ってた料理を今日の朝御飯にしたと言う事だな。
その心遣いには、本当にありがたいと思う。.....思うけど......
「ディアドラ.....朝から揚げ物はキツイよ?」
「それは作ってて思った!!」
思ったんなら途中でやめなよ!
そう言いかけたが....
「むふ〜♪」
「うっ.......」
ディアドラの笑顔を直視してしまった。
...僕の発言で、この笑顔を枯れさせたくなかった。
「.....まぁ、いいけど。」
たかが素揚げごときに胃もたれするほど、僕の胃は弱くない。.....やってやるとも。
朝から食べる罪悪感とかもう考えるものか。
出された物は意地でも食う。.....それが食べる者の宿命なのだから!
「じゃあ、いただきます。」
「召し上がれ!」
そう思って、レバーの素揚げを口に運んだ。
「ティーザ?準備できたぁ?」
ディアドラの声がする。
.......朝からあんな重たい物を食べたと言うのに、よく平気でいられるな?
「うん.....おっぷ。」
危ない。何かが込み上げてきた。
朝からでもイケるものだろうと思ってたのが仇になった。
.....思えば、油をふんだんに使った料理なんて、あまり食べたことが無かった。
そりゃ街に行ったらあったが.......外で動物を狩って食べる事の方が多かったものだから。
「そっか!...中の林檎は全部取った?」
「あぁ...取ったよ。」
家の中になっていた林檎はどうやら食べられる様で、持ってっても大丈夫な物だそうだ。
.....家の中に常備食があるってのも凄いな。
何も無くても、家にいるだけで食べることができると言う事だから。
.......これも、飢えさせないっていうディアドラの心からなのかなぁ。
「よ〜し!じゃあ"戻す"から、はやく出てねぇ!」
「分かったよ!」
さて、じゃあ早いとこ外に出よう。
いつまでもここに居座る訳にはいかない。
ガサッ.....
「ティーザ!取った林檎はこの中に!」
出てすぐに、ディアドラが袋を突き出してきた。
.....見た目は小さな袋だ。とても大量の林檎を入れられそうに無いが....
「....多分入らないよ?」
「見た目通りならね!」
こう言うのだ。.....多分、大丈夫と言う事だろう。
「じゃあ.....」
ゴロゴロ.....
両手いっぱいの林檎を全部、その小袋の中に入れた。
....明らかに入る量じゃ無いのに入った。
「おぉ...!」
「凄いでしょ!」
確かに凄くはあるが....ここまで来るとかえって怖いな。
....これはもはや呪物のそれだ。
「.....これも君が?」
「いや、これは母ちゃん!」
なんと。
ディアドラが凄いだけなのかと思ったら、お母さんも凄かった。
多分ディアドラの持ってる小袋は、『見た目以上に大きい』特性があるのだろう。
そう言う物はなくは無い。
.....ただ、『空間だけ』を広げる魔術は、あるにはあるがそれは魔術工房とか、広い場所にする物だ。
ある程度の大きさが無いと、上手く発動しない。
そんな魔術を小袋なんて言う、小屋なんかより狭くて小さい物に掛ける。
.....ディアドラのお母さん、ひょっとしてとんでもなく凄い魔術師じゃないか?
そうでもなきゃ、転生体であるディアドラに呪いなんて掛けられないだろうし。
「まぁ?私の母ちゃんですから!...取り敢えず家から離れてねぇ!」
「あぁ、うん。」
本当、遠慮無しに観てくるなぁ。
「.....ねぇディアドラ?デリカシーって言葉を知ってる?」
「何それ、魔術用語?」
.......まぁ知らないだろうとは思ったよ。
デリカシーは人が居て成立する物だからな。...と言うかお母さんとの間にも無かったのか。
「いや、知らないならいいよ。」
「?.....まぁいいか。さぁてと!」
....ペタッ。
ディアドラは、家に手をくっつけて集中している。
.....そういえば"戻す"とか言ってたが、何をするつもりなんだろう。
「.........................」
スィィン......
家から、光の様なものが出ている。
その光は、ディアドラの手に集まって消えていく。
いや、消えてくと言うのとは違うかもしれない。
吸い込まれていく様に見える。空に舞ってしまった花びらを吸い込んでいく様に。
ピシッ....キシッ.....
光を吸い出されている家は、どんどん枯れていく。
....いや、枯れてくというより、土塊になっていくと言うのが正しいだろう。
まるで元の形に戻ってるかの様に。
そして.....
......ズシャァ!
.....家は土になって崩れた。
「よし!後処理完了!」
「...............」
言葉が出なかった。
確かにディアドラは『物に生命力を与えて、生命を生み出してる』とは言った。
.....でもまさか、生み出した生命を元の物体に戻せるとは思わなかった。
さっきまで過ごしてた家が土になるなんて。
「.....一応言っとくけど、あの家の構築術式は消えた訳じゃ無いからね?」
「えっ?.....あぁそうなの?」
呆然としてて、反応が雑な物になってしまった。
もうあの家には戻れないのかと思ってしまった物で。
.....その発言を聞けて、ちょっとだけ嬉しかった。
「....んじゃあ!行きますか!」
ディアドラにそう言われて、思い出した。
こんなのんびりしてるが、僕らは遭難してると言っても過言では無い状況だと。
ここがどこだか分からない以上、ここに長居はしたくない。
「そうだね。....取り敢えず、道なりに進んでみようか。」
「りょうか!」
そう言って、僕らは歩き出した。
ザッザッザッ.....
二人で平原を歩く。
まだ少し、赤みの残ってる青空の下を歩く。
朝特有の冷えた空気を受けて、まだ眠りかけの頭が冴えていく。
「....そういやティーザ?...能力使ったら?」
「.......能力?」
何故そんな事を言い出したのだろう?
「......能力使ってもすぐには着かないよ?」
呆れた声で答えた。
僕の能力は、その場で叶う物だけ。
その場で叶える事のできない物には扱う事が出来ない。
「いや『街に行く』じゃ無くて、『近くの街の場所を知りたい』って願えばいいと思うよ?」
「......なるほど。」
場所を知るか。
ありではあるけど.....適応されるのだろうか?
風景の投影はさほど難しくはないが....場所を知るにも、投影するものなんてないし.....
「....ティーザ、ホントに何も知らんねぇ?バルドの眼は能力に直結してるから、ティーザが視たいと思った物は視れるよ?」
「..........それホント?」
だからか?
あの時、白蛇をどうやって倒すかと考えてた時に、魔力の線が視えたのは。
.....そういえば、僕の眼が変なのを視る時は、僕が何かを知りたいと思った時だけだ。
それも、能力が反応してたからなのか。
「ホントさ!試してみて!」
「.....んじゃあ。」
『百聞は一見にしかず』と言うしな。
取り敢えず、自分の願いを強くイメージする。
「...............?」
..........すると、視えてきた。
自分たちのいる所から北の方に、城が有るのを。
「っ!?......本当に視えた?!」
「でしょ!」
半信半疑だったが、本当だった。
どうやら僕の眼は、どんな物でも視る事ができる様だ。
.....益々、化け物具合が強くなってく.......
「で、ここは.....」
城下町や城に飾ってある紋章を視た。
.......剣と獅子の顔の紋章。
「......今居るのは"ノトスドニェ"か。」
まぁここだったらおかしくはない。
ぶっ飛ばされたとはいえ、そこまでの距離は飛んでないだろうと思ってたから。
.....それに都合も良い。
「のとす?」
「フルシュの隣国だよ。.....大国のね。」
フルシュの隣国、ノトスドニェ。
ノトスドニェと言うのは一つの国では無い。様々な国の集合体が国家となっている、諸国連合国家だ。
どんなに小さい国でも、加盟国になっていればノトスドニェの国となる。
そんな風な形で、大国になっているのだ。
「.....此処から近いのは"カイル"か...」
位置的にフルシュに最も近く、そしてフルシュが攻めて来ない理由にもなってる.....ある種、ノトスドニェの主要国家だ。
「....うん。取り敢えずここに行こう!ここなら昨日の様な奴らも居ない筈だし。」
「そうなの?....まぁ、ティーザに任せるよ!」
信頼されてるなぁ。
.....信頼される様な事やってない筈なんだけど。
何ならマイナスのスタートの筈なんだけど。
「よし。じゃ、北に歩こうか!」
「りょっか!」
そうして僕らは歩行を再開した。
さっきまでとは違って、目的地を決めて。
ちなみにディアドラの能力は、『ゴールドエクスペリエンス』の様な物と思っていただければ。




