第二十七話 "お肉"
お鍋、肉、脳焼き。そして"むちむち"!
「すみませ〜ん!!」
店員さんを呼ぶ。
喧騒の中でも聞こえる様に大きな声で。
「はいは〜い!...あれまぁ!可愛いお嬢さんねぇ!ご注文は?」
....綺麗なお姉さんから見ても、そう見えるのか.....
...........慣れたよ?
慣れたけど.......いい加減拗ねそうだよ。
「.....えぇと、三人前の熊鍋一つと、鹿肉のミートパイを二つ、あと果実水お願いします!」
この程度だったら足りるかな?
「結構な食べ盛りねぇ!....量多いけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ!何なら足りないかもだし。」
この店の料理を食べた事がないからなぁ。
どのぐらい出てくるのか分からない。
「はいはい!食べきれなくなったら言ってね?お持ち帰り用の器持ってくるから!」
....お持ち帰り?
初めて聞いたなぁ。
「じゃあ、もし食べきれなかったらお願いします!」
料理は、出された分はその場で意地でも食べ切る物だと思ってたけど.....意外にそうでもないのかな?
「ハイハイ!.....にしても、まだ小さいのに、ちゃっかりしてるって言うか...しっかり者ねぇ!こんな妹さん持てて良かったわねぇ、お姉さん!」
.....そこまで似てないと思うんだけど。
........褒められてる筈なのに、素直に受け止められない。
「いやはや!こんな立派な妹を持つと、アレですよ!アレ!.....えっと......自信?....が無くなっていきますよ!」
何故か否定もせず、目の前のディアドラはそう言った。
「何言ってるのよ、貴女だってとても綺麗じゃない!」
「まぁ、そこには自信を持ってますから!!」
ディアドラの癖なのか、胸を張って言っている。
....そこに自信を持つ人は、大体勘違いが多いんだが.....この子の場合、自分の姿を理解した上で言っている。
普通、理解してても自慢しないと思うんだけど....ディアドラは違うみたいだな。
「あらぁ!そんな事言っちゃってぇ!その自信、良いわよ!」
「あざぁす!!」
お姉さんは、謎のお礼を言うディアドラを見て笑いながら厨房に消えてった。
「んにゃ〜!本当に女の子って勘違いされるんだねぇ、ティーザって!」
「まぁ、髪が長いせいだろうね。」
女の人って、髪が命って言うぐらいだし。
.....男の人でも、長い人はいる筈なんだけどなぁ。
「おぅふぅ...!」
なんかディアドラが、変な声で鳴いた。
「.......間違ってないと思うんだけど?」
「いや!間違ってない!間違ってないんだけど.......一概にもそうとは言えないなぁ....と!」
なんか隠してるなぁ?
「いや、私としてはとても良いんだけどね!!」
........そう言えば。
「君、僕の事を男の娘って言ってたけど、アレどう言う意味?」
なんかもう......娘ってつく時点で、嫌な予感がするんだけど。
「ザ・..............ひ・み・つ!」
苦笑いしながら、そんな事を言った。
.......ただ。
(あっぶなかったァ!?口が滑って『ザ・女の子な少年!』って言いかけたぁ!!?)
隠し切れてない程、心の声が大きかった。
「.....聴こえてるよ。」
「.....しまった!?」
.....悪い風には捉えては無いんだろうが
....ちょっと傷つく。
「ディアドラ....君ひょっとして僕の事そう言う風に見て」
「る訳無いじゃあないですか、ふはははは!?」
...........ほんとか?......カマかけてみるか。
「あ!?あっちに女の子みたいに可愛い少年が!」
「ティーザ以上の男の娘なんて、この世に存在しねぃ!!居たとしたら元女ぐらいじゃァァ!!!」
「へぇ〜。....そう言う意味ね。」
「..............はっ!?」
.....なるほど。
ディアドラが僕を少年と認識してるのは分かった。
......"男"としては認識してない事も分かった。
「ディアドラ.......僕泣くよ?」
「あっ....!ごめん!!」
素直に謝ってくるところを見るに、本気で良いと思っているのだろう。
.........この子の性癖は理解できないけど。
............取り敢えず、バカにしてる訳じゃない事も分かった。
「....て言うか、別に女の子で良くない?わざわざ男の子じゃ無くても、可愛い子はいっぱい」
「それを無くすなんてとんでもない!!!」
「うぇ!?」
こっちの目の前まで身を乗り出して、ディアドラは熱く語り出した。
「ティーザ!男の娘にあって、女の子にはない物。それが何が分かる!?」
「はぁっ!?」
何、突然!?
ディアドラの様子がいきなりおかしくなった。
......"地雷"っての踏んじゃった?
「えっと........可憐さ?」
「違う!!それは女子も持ってる!!!」
興奮気味に、詰め寄ってくる。
ちょっと甘い匂いがするんだなぁ、ディアドラ.....じゃない!?
「ちょっと....僕には分からないかなぁ...?」
「分・か・ら・な・い・?!......じゃあティーザ!こう言い換えよう!ティーザにあって、わたしにない物は?!」
こりゃダメだ。話を逸らそうにも修正してくる。
......ディアドラになくて、僕にあるもの?
..............あっ。
「............世剣だったり?」
なんか、分かった気はする。
.....言っちゃいけない様な気もする。
......言いたくないから、これで終わってくれないかなぁ。
「っあぁ....!もう!.....○○○○だよ!!!」
――――――――――――――――
....今、ディアドラの口からとんでもない一言が飛び出た様な気がする。
.........言ってないよね???
....こんなに人がいる所で。
「もう一回言うよ!大事な事だからね!!」
「待って、ディアドラ?」
まさか......また言うつもりか?
さっきと違って、人はもうこっちを見ている。
今度は聞き間違いじゃ誤魔化せないぞ!?
「ティーザ!男の娘にはね!!ちん」
「やめなさい!!!」
べチン!!!
「あ、痛ァ!?」
なんつぅ事言おうとしてんのこの子は!?
思わず頭叩いちゃったよ!
「いたた....何すんのティーザ!?」
「ディアドラ、君ね!?ここがどこか分かって発言してる?!」
「場所なんてどうでも」
「周りに丸聞こえだから!!!」
周りの人達の目線が痛い。
.....気持ちは分からなくもない。
美の女神の様な少女が.....大声で下ネタを言ってんだから。
「.......何だよぉ?.....見せもんじゃないぞぉ。」
ディアドラは悪びれる事もせず、開き直った。
流石に予想外だったのか、周りの人達は苦笑いしながら、ディアドラから目線を離した。
「全く、失礼しちゃうなぁ。」
「失礼してるのは君だよ!!」
傍若無人にも程があるよ!
「....分かったよ.....ティーザに免じて、この話は今はやめておこう!」
「免じなくてもやって。」
全く.....リュウズでもここまで自由じゃないぞ....
「いや〜ごめんね?何せ初めてだから勝手が分からなくてね!」
「.....何処であろうとダメだよ......人がいるとこじゃ。」
森を出る時に知ったとはいえ......
他の世間知らずでも、ここまでじゃないでしょ。
「さてと....」
解決.....してるかどうかはさておき、話は終わった。
だったら、森にいる理由はない。
妙な事になってしまったが、元々の目的を果たすとしよう。
「ディアドラ、ここからフォスターに行くけどいい?」
「フォスター?.....あそこじゃないって事?...........別にいいけど、お昼ご飯はいいの?」
......どうするか....
言うべきか...黙っておくべきか......
.......いや、この子は心を観れる。
黙った所で意味がない。
それに......この子に隠し事はしたくない。
「.....実は、僕を心配してくれてる女の子がシルワに.....あそこにいるんだけど、顔を合わせる訳にはいけないんだ。」
「なるほど分かった!」
.....えっ?
あっさりと納得してしまった。
「.......ディアドラ?....なんか言わないの?」
「いやだって、なんか怒れる様な事じゃないんでしょ?...だからその子と顔を合わせられない訳だし。」
.....観抜かれている。
だが、事情を知ってる訳では無さそうだ。
........ひょっとしたらこの子は、しようとしている事が観えてるんじゃなくて、感情の方が観えているのかもしれない。
まぁ、実際思考しているのは脳の方な訳だから、心が観れても、考えている事がわかる訳じゃないからな。
感情だけを観て、それで何を思っているのかを予想しているんだろう。
.....それだけでも凄まじいけど。
「まぁね。.......これに関しては、僕の問題でもあるし.......どうしようもないから。」
やっぱり、ディアドラに言われても.......言われ続けた物は、そうそう抜ける物じゃない。
それに、ザナルカンドに行くと絶対に揉め事しか起こらない予感がする。
......エリーテには悪いけど、やっぱり顔を合わせる訳にはいかない。
「..........そっか。......いつか、ちゃんと話しなよ?」
責めるでもなく、説得するでもなく、ディアドラは短い言葉で話を終わらせた。
......何を言っても意味が無いと思ったからだろうな。
「......いつか話せたらね。」
そんな日は、来るのかな....?
そんな事を思いながら、そう返事した。
......ガサっ!
「っ!」
「ん?なに今の?」
.....そうだった。
ディアドラが近くにいたから油断してた。
ここは白蛇の森じゃない。
あそこは白蛇になってたディアドラの余剰魔力と元々あった神秘のせいで来なかっただけだ。
今のディアドラには余剰魔力なんて無いし、この森にも濃い神秘は無い。
「.....ディアドラ、ちょっと下がって。」
数は四、五匹ぐらいか...
.....そこまで強くない。....すぐに片付けれる。
「えっ?...猿とかじゃないの?」
「猿....に似てはいるかな。」
ディアドラは、案外素直に下がってくれた。
ガサガサッ!!!
木陰から、魔獣が飛び出してきた。
「キキャァァ!!!」
....やっぱり、猿型の魔獣か!
「うぇい!?何、コイツら!?こんなの見たことないよ!?」
......そりゃあんな森に居たら知らないでしょうね!
「魔獣だよ!...動物よりも凶暴だから気をつけて!!」
と、注意したが....
「シャァァ!!!!」
.....一匹、ディアドラの背後から出てきた。
「っ!ディアドラ、避けて!!!」
マズい、完全に死角だ!
魔猿は爪をディアドラに振ろうとしている。
あの位置じゃモロに食らう!
すぐに庇おうとしたが.........
「遅いっ!!!」
ドギュッ!!!
「キキャッ!??」
「.....えっ!?」
次の瞬間、魔猿の土手っ腹に穴が空いていた。
.......信じられないが、この眼で見た。
ディアドラの拳が、魔猿の腹を撃ち抜いたのを。
ドサッ!!
魔猿の身体が、地面に落ちる。
....死体と化したその身体は、魔力となって散った。
「....へへっ!言ったでしょ!強いって!」
満面の笑みで、自慢気に話してくる。
......嘘ではないとは思ってたが、ここまでとは!
「全く.....よく裏切ってくれる!」
ここまで予想外だとは思ってなかった。
つい、笑いながら言ってしまった。
「まぁ?予想は裏切ってなんぼでしょ!」
「確かにね!」
世剣を出しながら答える。
.....この程度の敵だ。
魔力を込めた一撃で葬れる!
「ん?........ティーザ!?」
「大丈夫!すぐに片す!!!」
そう言って、剣を魔猿たちに対して振り抜いた。
キャィン!!!
「.....................ん?」
......僕がやろうとしたのは、剣から魔力を撃ち出す技だ。
これに関しては、僕の独学だ。
遠距離の敵をすぐさま倒せる様に工夫して作った技だ。
この技の破壊力は、そんなにない。
最低限の魔力だけで、出来るからってのもあるが、あくまで敵を斬る為だけの技だからってのもある。
......だから、放った跡を見て呆然とした。
ズシャ......ドカッ!!
......地形が抉れるようにして斬れていたから。
「.......あれっ?」
勿論、魔猿達はいない。
ここまでされて生きてたら、それはもう充分な化け物だ。
「あ〜あ〜やっちゃった。」
ディアドラが、『やるとは思ってたけど。』みたいな感じで肩をすくめて言った。
「えっ?....どういう事?」
何で破壊力がない技でこんな事になってる!?
「混乱するのは分かるけど.......逃げたほうがいいんじゃないかなぁ?」
「......はっ!?」
そうだ。
こんなに目立つ事をしたのだ。
間違いなく、エリーテ達に見つかっている!!
「マズい逃げるよ!!!」
「あいあいさ〜!」
そうして、二人一緒に走り出した。
「そういやティーザ!フォスターにはどんな食べ物があるの?!物によっては作るものが変わってくるんだけど!」
突然ディアドラが、トンチンカンな事を言い出した。
「えっ!?作らないよ!?向こうに着いたらレストランに行くよ!!!」
「えっ!?レストランって何!?」
.....その発言に驚きながら、森を抜け出した。
「はい、お待たせしましたっ!!」
店員さんが料理を持ってきてくれた。
.....本当に不思議に思う。
こんな細腕で、よく片手で鍋を持てるものだ。
何ならもう片方には、ミートパイと飲み物と鍋の具材が乗っている。
.......女の人って凄いなぁ。
「有難うございます!」
鍋は"印"の上に置かれた。
ボワッ!
そして、印から火が出てきた。
出た火は鍋底に当たって、鍋を熱している。
「仕事だから、気にしなくていいよ!鍋の方は自分で具材を入れて食べてね!」
説明を言って、店員さんはまた厨房に消えてった。
「おぉ!これ"しゃぶしゃぶ"?」
「しゃぶしゃぶ?」
またディアドラが変な事を言い出した。
........そう言う調理法があるのかな?
「違うよ。これはね、こうやって自分で具材を入れてって食べるんだよ。」
ディアドラが分かるように説明しながら、具材を鍋に入れていく。
鍋自体は家でも母さんが食べさせてくれたから、作り方ぐらいは分かる。
「ティーザ、この緑ぃのなに?セロリじゃ無いよね?」
....あぁそうか。
森には生えてないのかな。
「これは"ねぎ"だよ。」
「ねぎ?」
「そう、ねぎ。」
もっとも、こっちの呼び方は違うかもだけど。
......取り敢えず、全部入れ終わったか。
「よし、出来上がるまでミートパイ食べよう!」
「おぉ!...ひょっとしてこうなる事が分かってた?」
「まぁね。」
鍋料理を取り扱う店は、こうやって客にやらせる店もある。
鍋は目の前にあるのに、食べられないと言う状況になる訳だ。
だから、こういう時は何かつまめる物があった方がいい。
.....一回そう言う目にあったから分かる。
......お腹減ってる時に。
「あ〜む!....ん〜、母ちゃんのに比べたら70ぐらいかなぁ!」
「ほんとにお母さん好きだねぇ。」
ミートパイを頬張りながら、ディアドラは点数を付けていた。
.....改めて見ても、やっぱり綺麗だ。
ほっぺが膨らんでいる顔も、とても可愛らしい。
僕は女の子に興味がなかったけど、ディアドラは別だ。
この子は本当に美しい。
........興味がない奴でも惚れてしまうぐらいの美しさだ。
大人になったらどうなるんだろう......
いわゆる...."ぼん・きゅう・ぼん"な女性になってしまうのだろうか...?
.......いいなぁ.........あでも、"むちむち"がいい。
「ティーザ!そっちも食べていい?」
「....えっ?」
妄想に耽ってたら、ディアドラにパイをねだられた。
「いいけど、パイは?」
「もう食べた!」
......皿の上には何も残っていない。
つまり、本当に食べてしまったのだろう。
...........たった十五秒ぐらいで。
「で!いい?!」
「.......まぁ、育ち盛りだろうしね。いいよ!」
『やったぁ!』と言って、僕のパイを頬張るディアドラ。
........この子....本当に歳上なのかな?
どうも行動がこう.....幼いというか。
言動にも幼さがあるし......でもそれにしては、大人な部分もあるし。
......謎だなぁ。
「ふう!美味しかったぁ!!」
「.......もう食べたの!?」
さっきより早く食べ終わってしまった。
「速すぎだよ!?」
「いや〜、何しろずっとご飯を食べてなかったもので!」
「それにしてもだよ...?」
こりゃ失敗したか。
こんなに食べるんだったら、もっと頼んどくべきだった。
「んで、鍋出来た?」
「そんな早く出来る訳ないでしょ。.....熊肉は念入りに火を通さなきゃいかないんだし。」
「えぇ!?.....早く食べたい........」
.....あのミートパイも、結構大きかったよ?
........後で何か食べ歩くか.....
「あっ、そういえばさディアドラ。」
「ん?な〜に!」
気になってた事があった。
「森であんな事になった時、あぁなるって分かってたの?」
今思い返すと、剣を使おうとした時、『えっ!?使うつもり!?』と言わんばかりの反応をディアドラはしてた。
あんな反応、普通ならしない筈だ。.....知っていなけりゃ。
「実際に目にしたのは、あれが初めてだけどね!」
「つまりあぁなる事は分かってたのか.......」
.....まぁ、状況が状況だ。
すぐに言える訳じゃ無かったしな。
「えっと、知らないかもだけど......世剣ってみんなあんなのなの?」
だとしたらとんでもない事になってる様な気がするんだけど。
いわゆる、"世紀末"みたいな。
なんか変な形に髪が逆立ってる人たちが『ヒャッハ〜!』とか『汚物は消毒だ〜!!』なんて言って暴れ回ってる世界になってそうなんだけど。
「....母ちゃんの受け売りになっちゃうけど、本来はあのぐらいの威力だよ、世剣は。」
「.......本来は?」
なんだ?
その言い方だとまるで、他の人達の世剣は弱いみたいな感じになるけど。
「弱い訳じゃないんだ。.....他の世剣はあくまで模造品なんだよ。」
「えっと.......つまり、世剣ではあるけどあくまで代わり.....て事?」
それじゃあ何で、他の世剣が弱いんだ?
コピーだからと言って、性能が原典に劣る訳ではない。
だから、量産型なんてものもあるんだ。
「ん〜と。......説明むずいなぁ.......あっ!その世剣はあくまでバルドの使ってた物であって、他の人達のとは違うんだよ!」
........つまり。
「バルドの世剣の威力に追いつけてないのが、他の人の世剣って事?」
「付け足すと、神様が使ってた物を人でも扱える様に威力を落としたのが他の世剣!」
なるほど。だったら弱い。
だってあれ、どっから見ても過剰な威力だったし!
「最初からティーザに無かったのも、強すぎたのが原因かも。」
「.......そう言う意味か。」
世剣が強すぎて、持ってる本人が耐えられないかもしれない可能性がある。
それも、赤ん坊の時だったら絶対に。
だから、僕には世剣が無かった。
「....あと、その世剣には誓いに近い特性があってね!」
「.....ゲッシュ?」
ゲッシュってなんだ?
初めて聞いたぞ?
「あれっ?母ちゃんが言ってたんだけどなぁ......あ!"縛り"と似た意味だよ!」
あぁ、縛りか!
......剣に縛り?
「そりゃまた変な話だなぁ。」
縛りは人が、己に課すか他人に課すものだ。
そんな呪いを、物が?
「物がというより、ティーザ本人の魂だね!あの時見て、無意識にやってるんだなぁって思ったんだけど......自覚ないならそうみたいだね!」
「....僕が?」
だったらあり得る。
普通の剣なら無いが、世剣は魂に直結している。
世剣を"人"と見立てたら、縛りを課す事は可能ではある。
「.......でも何だ?」
何を課したんだ僕は?
「ふっふっふっ...!実はね?私、あの時見抜いちゃったんだよねぇ!」
ディアドラが胸を張って言う。
.....あの一瞬でか!改めて凄いと感じるなぁ。
「良ければ教えてくれない?」
「良かろう!....ティーザの世剣には、『人を絶対に斬れない』特性があるのです!!」
.......えっ?待って?
「.......剣なのに?」
「剣なのに!!」
...................................
「......それ、剣である意味無くない?」
「おぉっと!?自分の剣を自虐し始めたぁ!?」
いやだって.....それ要は、人に対してはとんでもないなまくらって事でしょ。
........もうそれ、鈍器で良くない?
何だったら大型メイスの方がいいよ.....
おまけに、僕の世剣は"刀"と呼ばれる剣の形をしている。
形状から見て、明らかに斬る為の物だ。
刃がかなり薄い。
大きいから頑丈な雰囲気はありそうだけど........
刺す事には向いてても、相手をぶっ叩く物じゃない。
「叩いて壊れそうな物で叩くしかないって.....どんな縛り?」
刀である意味無いじゃん。
何だったら人を斬ろうとして、壊れて終了だよ!
僕の人生諸共!!
「まぁまぁ!話を最後まで聞きなさい、このせっかちさん!!」
「せっかちでも無いと思うんだけど...!」
もうこの時点で、僕の世剣は人に対して役立たずにしか思えないんだけど。
「ティーザの世剣には、『人を絶対に斬れない』恩恵で『人以外なら絶対に斬れるし、重たい』って性質もついてるみたいだよ?」
.....えっ?
「待って?....人を斬れないってだけで、何でそんな恩恵が!?」
いくら何でも大き過ぎる!?
重たいならまだしも、"人"以外を絶対に斬れるって...!
「ティーザ。...人ってのはね?無茶苦茶いるんだよ。そんなかにはとんでもなく強いのもいるんだよ?......そんな無茶苦茶な生物を"全部"斬れないんだよ?」
......そうか。そう考えると納得できる。
縛りは理不尽な物であるほど、恩恵が増す。
デメリットが......そこまで大きくは感じれないけど、"全ての人"を斬れないと言うのは、確かに理不尽そのものだ。
強い人は僕を問題なく斬れるけど、こっちは斬れない訳だから。
「いや〜、まさかティーザが人を斬りたくないと思っていたとはねぇ〜。.....ちょっと意外だった!」
「........意外なの?」
「ちょっとだけね!」
.......ディアドラから見た僕ってどんなのなんだ?
少し気になってしまった。
「.......重いってのは?」
"重い"が分からない。
多分、『人以外を斬れる』だけじゃ足らなかったから追加されたんだろうけど.....
「あの剣に重さは感じなかったけど。」
「ティーザにはね。....あれはなんて言うべきかなぁ......仮想質量って分かる?」
仮想質量?
......仮想ってのは"そこに無い物"の事だよな?
「.......無い質量があるって事?あの剣には。」
「まぁ、本来の意味とは違うかもだけど、そんな感じ!」
........いまいち想像できないな。
「例えるなら.......物凄く軽いガラス玉が、落としてみたら鉛玉ぐらい重くなった....みたいな感じ?」
「おぉ!そんな感じ!」
なるほど、これなら分かる。
つまりあの剣に当たれば、僕の放つ一撃と本来の剣を遥かに超える重量に襲われるって事か。.....それ、斬られるよりも重症になると思うんだけど。
「どのぐらいの重さとか、分かる?」
「ん〜とぉ...................大岩?」
「なるほど死ぬほど重い事は分かった。」
じゃあこの剣を持った僕を人が見たら、あらゆる物全てを斬り刻んでくる、すぐに壊れる超重たい鈍器を振り回してくる狂人って事か!
.......自分で言ってて悲しくなる。
「あ、ちなみに世剣は壊れないよ!絶対に!」
「壊れないの!?」
更に鈍器化が進んだけど!?(人相手にだけ。)
「私は『人以外は絶対に斬れる』が恐ろしいなと思ったよ。だってそれって、人じゃ無かったら絶対に斬れない物も斬れるって事だし。」
.....そうか。
逆に考えれば、結界だろうと、硬い鎧だろうと、魔術だろうと斬れるって事か。
........あれっ?ひょっとして....
「.......僕の世剣、理不尽そのもの?」
「魔術師に対してはとんでもない理不尽だね!」
そうなるよね?
元々世剣は神秘が濃いから、魔術を打ち消すし。
「あと、魔力の籠もってない武器も問答無用で斬れるから魔術を扱えない戦士は絶対勝てないね!」
「うわぁ........」
僕がそう言う奴に出会ったら、絶対に戦わないな。
面倒くさい事この上ない。
「なのでティーザは、落ち込む事なくその剣を使っていいと思います!」
「......ちなみにあの一撃は?」
ちょっと魔力込めただけであぁなったんだけど。
「魔力が世剣の中で増幅しまくった結果だね!」
ますます理不尽さが浮き彫りになってくな、僕の世剣!?
「まぁ、使用用法にはご注意を...だよ!」
「.......ほんとにね。」
.......知っててよかった。
知らなかったら絶対に街中で試し振りとかして、エライ事になってただろうし。
「所でティーザ。......鍋まだぁ?」
「えっ.......あぁ!」
そうだ。話に夢中で忘れてた。
.....見た感じ、肉に火は通ってそうだし。
「そろそろ大丈夫でしょ!」
「ぁよっしゃぁ!じゃあ早速...」
ディアドラが、鍋に手を伸ばす。
(..........これ、僕食べれるか?)
恐らくこのままじゃ、お鍋もディアドラに食い尽くされてしまうだろう。
........ならば!
シュバシャッ!!
「.....あれっ!?お肉?!」
先にディアドラの器によそっておいた。
「気にせず食べて?僕がよそいたげるから!」
「ホント?!ありがとう!!」
ディアドラは満面の笑顔を咲かせて、お礼を言ってくれた。
あぁ、ホントに良い子だなぁディアドラは。
......こっちの思惑にも気付かずに!
「あぁ、どういたしまして....!」
そしてしれっと、こっちには肉を多くよそっとく。
これこそ、お鍋の必勝法!!!
自分がよそう立場になる事で、相手の肉の量をしれっと減らし、自分は多く取る事が出来る...!
小さいデメリットの割には、メリットが大きい方法だ。
ふっふっふっ.......己が無知を恨め...ディアドラよ!
「ん〜!!これは美味しい〜!!!」
(女神の微笑み)
「ぴゅっ。」
(脳を焼かれた)
ァ、カワイイ.........
女神そのものと言っても良い。そのぐらい可愛い。
(その女神の転生体だけど。)
.........僕は今から、こんな子が食べたいと言ってる肉を減らすのか?
「ティーザ!よそって!!」
(マジヤバでちゃけパねぇ笑顔)
―――――――――――――――
「イエス、ユア・マジェスティ」
出来るかァァ!!!!
「わぉ!ワタシ、エラクナイ!」
ディアドラも途端に偉い人扱いされて、戸惑ってしまった様だ。
「どうぞ、我が運命よ。」
「そんなナンパヤローだった?ティーザ?」
ディアドラの器によそったげた。......肉多めに。
「.....まぁいいや!あむ!.....ん〜!!!」
......やっぱ可愛い。
この笑顔は、お肉程度じゃ買えない。
お肉を渡すだけで見れるのなら、なんぼでも渡そう。
こんな可愛い子には、美味しいものを食べさせなければいけないのです。
食べて"むちむち"になるべきなのです。
...男はそれが役目なのです!
そんな事を思って、自分の分のお肉まで渡してしまった。
お鍋の必勝法。これは絶対勝てる!
(なお、相手の美しさを考慮しない。)
これ使って負ける奴はいねぇ!!
(ティーザは脳を焼かれたが。)




