第二十話 蛇
「...................」
走った。
走って森まで着いた。
......後ろには誰もいない。
「...................」
.........何で探した?
探してもいい事なんてないのに.....何で?
「..................ぁぁ........!」
視界が曇る。
.....叶える事の出来ない願いが、頭の中で反響する。
『友達になりたい。』
「無理だって.....分かってるのに......!」
頭から消えてくれない。
.....魔獣の相手をしていって、やっと忘れられた願いだったのに。
「...............................」
空を見上げる。
空からは光が差し込んでいる。
直接見るには眩し過ぎる光を、葉が少しだけ遮ってくれる。
「.....................」
僕にとってのエリーテは、太陽なんだと思う。
道を間違えない様に、光で道を照らす。
.....お節介な光。
でもその光は、僕にはもったいなくて.....眩しすぎて、直視する事が出来ない。
だから、あの時逃げてしまった。
「.......分かってるんだよ....」
逃げちゃいけないって事は。
でも無理だ.....彼女がどれだけ僕を"人"として見てくれても.....僕が自分を"人"として見れない。
......化け物でも良いと言ってくれても、僕がそれを許せない。
「............うぁぁ.....!」
遂に、眼から溢れてしまった。
「............止まってくれよ......!」
そんなこと言って止まってくれる程、都合の良い物じゃない。
「............ぅぅぅ......」
つらい。
つらい。
会いに行きたいのに.....僕がそれを許せないのがつらい.....!
(――――――――――――)
「...........えっ?」
何だ今の?
.....心の声.........なのか?
(――――――――――――ち)
何なんだ?この声は。
「........呼んでる?」
いや、どうなんだ?
呼んでいる様に聞こえるけど.....ただ喋っている様にも聞こえる。
(―――――――――ちに...........て)
段々とはっきりしてきているが.....何なんだ?
(.......こっちに.......来て..........)
「――――――――――――」
........幽霊とかじゃないのはわかる。
精霊とか妖精でもないのは。
だからこそ不気味だった。
......僕や母さん以上に、こんなに心の声を聴かせてくるなんて...
......でも。
敵意が無いことだけは分かった。
「..........行かないと。」
もともとは、剣を取りに来たのが目的だ。
......道は一つだけ。
迷う事はない。
「...進むだけだ......!」
そして森を歩き出した。
「...霧か?濃いな。」
先に進んでいくほど、霧が濃くなってきた。
.....いや待てこれ........
「.......全部魔力か?」
そういえばリュウズが言ってた。
この森は魔力や神秘が溢れていると。
.....だとしてもこれは異常だ。
森の魔力が濃い理由は、木が生命エネルギーの余剰分を外に放出するからだ。
木が密集している森は、その余剰分のエネルギーも多い。
そこに、人の持つ森へのイメージが、神秘として森に宿る。.....だから森には、魔力や神秘が多い。
それでもここまではならない。
「......そういえば。」
前にネイさんから聞いた事がある。
竜神達がいた頃の魔力濃度は、今のアヴァロンの数倍あったと。
それで言うならこの森は.....普通の森の十倍ぐらいある
「....まさかここに竜神がいるとでも?...ふっ。」
自分で言っててあれだが、ないな。あり得ない。
そりゃバルドの周りの魔力濃度は、濃ゆかったかもしれないが、普通の竜神がここまでの魔力を出すとは到底思えない。
「じゃあ、剣の方か?」
でも、リュウズ言ってたよな?
剣には力が無かったって。
「んん〜?」
どう言う事なんだろう?
この森が何で『白蛇の森』なんて言われてるのかも分からないし。
.....道中で白蛇なんて一匹も見てないしな。
「...あっ。」
いろいろと考えてたら、どうやら目的地に着いた様だ。
「......あれは剣なのか?...」
見ている先には、台座に突き刺さっている何かがあった。
.....錆びついているというより...歪なかたちをしていた。
妙に歪曲していて、明らかに人を斬れる形をしていない。
....例えるなら、竜の爪をそのまま剣にした様な形だった。
「.....?」
でも何だ?あれが正解のような気がする。
何であれが、正しい剣だとおもうんだ?
「......それになんか...」
....懐かしい?
あの剣があるのを見て、ようやく見つけた!と言うより、どこにいってたんだよ!が、先に頭にきた。
.......僕はあの剣を知ってる?
シャッシャッシャッ.......
「...................」
台座の前まで来て、改めて剣を見る。
......やっぱりおかしな剣だ。
.........でも、見ただけで、これは僕の剣だと思った。
「.....抜いてみるか。」
何がどうあれ、それが目的だ。
もし抜けなかったら、そのまま帰ろう。
そう思って、力を込めて引き抜こうとした。
ズボゥゥ!!!
「うわぁっとと!?.....へっ?!」
.....拍子抜けするぐらい、スポッと抜けた。
「えっ?いや...へっ?」
リュウズは確かに言ってた。
お前だったら剣が誤認して抜けるかもしれないと。
.....でも、抵抗がなさ過ぎる。
まるで、自分で育てた人参を当たり前の様に引っこ抜く百姓の様に、簡単に抜けた。
「.....これまたからかわれたやつ?」
....いやでもリュウズ、本題を話す時にからかったりしないタイプだけどなぁ?
「.....まぁいいや。」
剣は引っこ抜けた。
あの声が何なのかは分からないけど、取り敢えず当初の目的は達成した。
これ以上ここにいる必要もない。
「...でもどうするかなぁ。街に帰っても、エリーテがいるかもだし...」
ズゴゴゴッ!!!
「おわ!?地震!!?」
今から帰ろうとした時に.....間の悪い!
ゴゴゴ.......
.......おさまったか...
「.....ん?早くない?」
相当大きい地震だったから長引くと思ったけど....
....ちょっと待て、おかしいぞ?
フルシュには火山がない。あるとしたら森と海だけだ。
こっちの方で地震なんてそうそう起きない筈...
と言うか、タイミングが良過ぎる。...いや、悪過ぎるかな。
剣を引き抜いてから30秒も経っちゃいない。
.....偶然と言うには少し...
.....ゴゴゴゴゴッ!!!
「.....近づいてくる?」
何だ?剣を引き抜いたら発動する魔術か?
.....カァァァ!!!
「はぁっ!?」
突然、光がこっちにやってきた。
直感で分かった。これは当たったら流石に死ぬ
「危なっ!!!」
ギリギリ横に大きく跳んで避けた。
ズゴァァッ!!!
「うわっ!?」
眩しすぎて目を覆い隠した。
......光は消えたか?
そう思って目を開けて。
「―――――――――――」
絶句した。
光が通った後は、地形ごと抉り取られていた。
......あんなもん見た事ない。
少なくとも......二年前のあの男ではこんな事はできない...!
「ルォォォォォ!!!!!」
「っ!?うるさっ!!」
思わず耳を塞いだ。
そのぐらい大きなこえだった。
(鼓膜破れるかと思ったぞ!?)
上の方から聞こえたよな?何なんだ??
「ルゥゥゥゥ.......」
「―――――――――――」
見上げて最初に目に入ったのは、
「..............へ.......び.....?」
そこに浮いていた、とんでもなくデカい......白い蛇の様な何かだった。




