第二話 恐怖
「...それは本当の事だってのか?」
思わずそんな言葉が出た。
話は聞いた/理解できない
皆騒ぎに騒いでる/とても冷静になっている
何とかしなくてはいけない
/どうすればいい?
「..........アイン....私も信じたくないが...」
そりゃそうだろうさ。お前あの子に気に入られてたからな。でも、そりゃこっちだって同じなんだよ。
生真面目な同僚は、口を開こうとする。
やめて欲しいとは言えない。...一番キツいのはそれを言わなければならないコイツだから
「....姫がっ...エリーテ様がっっ...攫われた...!」
止めなかった事を後悔した...
俺たちにとってその言葉は、最も聞きたくない言葉
だったから。
(ちょいちょいエリーテちゃん!危ないぜ!)
(エリーテ様!お一人で乗馬は危険ですよ!)
(ダイジョーブ!ワタシおうまさんすきだし!)
(そーゆー問題じゃねーんだよ!エリーテちゃん!)
(アイン!!姫をちゃん呼びするな!!!)
(うぇい?!イヤ別にいーじゃん?本人だって気にしなくて良いって言ってるし...)
(お前が馴れ馴れしい呼び方をやめないから、折れただけだ!!大体お前は騎士としての心構えが全然なっていない!この前だって、疲れたティーバ様を酒場に連れてって酔わせた挙句一緒に大暴れしていたろ!!!)
(いぃ!?何で知ってんの?!!)
(ティーバ様が嬉々として話していたからな!)
(マジかよ!?あの脳筋バーサーカーっっっ!!!)
(貴様またティーバ様の事をっっっ!!!)
(しまった!!ちょっ、エリーテちゃん助けて!
このままじゃシュイノに殺されちまう!!!)
(姫を盾にするんじゃないっ!!!)
(アッハッハッハ!!!)
「おいシュイノ。」
「なんだ...っ?!」
脊髄反射というのはこの事をいうのか。
意識がハッとなった瞬間、情けないツラ晒してる友の胸倉を掴んでいた。
「アイン殿!おやめください!!」
「お前らは下がってろ」
「ひっ?!」
自分でも驚くぐらい低い声で、周りの騎士どもを
黙らせた。
今は、邪魔をしないで欲しい。このバカを元に
戻さないといけねぇから。
「シュイノ、気持ちは分かる。俺も多分お前と
同じ気分だ。そこは責めねぇよ」
「アイン...?」
「でもよ!!......それでエリーテちゃん、帰ってくるか?」
「...いや」
「だったら、やる事もう決まってるよな?」
「........」
「今は我慢しろ。懺悔や贖罪は、エリーテちゃんが帰ってきた時にしようぜ。」
...酷な事を言っているのは分かってる。でも俺たちは知ってる。
...何かをしくじった時は、後悔するんじゃなくて、その穴埋めを命懸けでやらなきゃいけない。
それもしくじったら、もう手遅れになっちまう。
...助かる筈の命が、自分の目の前で消えちまう。
「...眼ぇ、覚めたか?」
「......分からん...だが、やるべき事だけは見えた」
「...そこまでくりゃ上々だ!」
全く、普段厳しいくせにこういう事になると、
俺の助けが必要になるなぁ。
ゆれている...たぶんガタガタなみちをとおってるからだとおもう。
「...んっ...んんんんっ!...」
ほどけない...なんどもほどこうとしてるのに
ほどけない。
たすけてほしくても、くちがハンカチみたいなのでしばられてこえがだせない...
「んん...」
......こわい。なんで?
ワタシわるいことしてないよ??
(なぁ、姫を攫って来いって依頼だけどよ?)
(あぁ、なんだ?)
(いや、何でよりにもよってティーバ卿の娘なんだろうかね?)
...ワタシをさらったひとたちが、おとうさんのことをはなしている。
(あ?どういう意味だよ?)
(いや、ティーバ卿と言えばザナルカンドどころが、このアヴァロンで最強って噂があるほど強いらしいじゃねぇか)
え?...つよい?おとうさんが?おかあさんに
まじゅつをいつもあてられてるおとうさんが...?
(あぁ、あの噂か?あれ多分本当だぜ。)
(は?どういうことだよ?)
(昔、盗賊団に雇われてた時にティーバ卿が50人ぐらい連れて襲撃に来たんだけどよ。)
(待て、その盗賊団の規模ってどんぐらいよ?)
(100人ぐらいだな。)
(でかいな...でもザナルカンドの連中ならそんくらい...)
(49人がアジトを包囲してた...誰も逃さないためにだろうな)
(ん?待てよ、それだと襲撃をかけたのは実質一人だけか?)
(あぁ、しかもティーバ卿本人がな。)
(.....はっ?!ティーバ卿が??!)
(俺たちも最初はそうなったさ。でも皆襲いかかってったよ。ティーバ卿が死ねば俺たち盗賊はやりたい放題出来るからな。)
...このひとたちは、おとうさんがきらいなの...?
ものをぬすんじゃうから、おとうさんはおこってるだけなのに...なんでおとうさんにおこるの...?
(まぁ、そうだよな!あいつがいるせいで、俺たちは派手な盗みができねぇし、子供を売ろうとすればすぐ嗅ぎつけてくるしな。)
(あぁ、だから俺も襲おうとした。...結果的に襲わなくて良かったと思ってるよ...)
(...?)
(ティーバ卿の周りにいた...10人ぐらいだったかな?切り殺されたんだ、剣を抜いていないのに)
(...はっ?)
...????なにいってるんだろ?きるっていうのはけんをつかってるからできるんだよね?
(待てよ、じゃあ何か?魔術とか能力?とかを使ったってことか?)
(俺らもそれは思った、でもありえなかったんだ。アジトには簡易だけど魔術防ぎの結界を張ってた。だから魔術じゃないってだけは分かったんだ。でも能力だとしても、不自然だったんだよ。)
(じゃあ、何だったんだ?)
(殺された奴らはやられた瞬間気づいたと思うが、...あの男、殴ってただけだった。)
(...???)
(俺も分からん、そういう能力なのか、はたまた暗器を使ってやってたのか...)
(いや、まてよ...そうだったとしてもだぞ?ティーバ卿は、素手で盗賊団を抹殺したってことか?!)
(まぁな...うぇ...)
(おい大丈夫か?!)
しらなかった...おとうさんがそんなにつよいってこと...
(...ちょっと、思い出しただけだ...)
(...なぁ...だったら尚更マズいんじゃねぇか...??)
(...おい、まだ心配してんのか?)
(いや...だって?!)
(今回は"教団"が後ろ盾だぜ?依頼が完了するまでは守ってくれるさ。)
(なら良いんだけどよ...)
...きょうだん...?もしかしてきょうだんって...!
...いまのはなし、ぜんぜんわからなかったけど、
ひとつだけわかったのは、たぶんこのままじゃおとうさんがころされる...
...ほんとにわからない。なんでおとうさんがしななきゃいけないのか。
...ただこわい。くらいへやにむりやりとじこめられたくらいこわい...!
(おねがい...!だれかたすけて...!!)
「...今のは.....」
...聴こえた。...今にも壊れそうな心の声が
「..........」
僕には関係がない。だから無視しようとした。
「...やれやれ...」
だというのに....無視ができなかった