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第十九話 "走る"



 「すみませ〜ん!」


 「.....またか...エリン」



 あ、鍛冶屋のおじさん呆れてる。


 いや、悪いとは思ってるよ?でも壊れた物はしょうがないじゃない?



 「はい!またです!」


 「そこまで剣を壊すんじゃあ、持ち手の問題かとわしは思うんじゃが。」



 まぁ実際そうだけど。



 「僕の全力に耐えれない剣の方が悪いと思うそれは。」


 「........ここ鍛冶屋だって知ってる?」


 「うん!だから、剣ください!」



 有り合わせのものでも良いから何でも欲しい。



 「はぁ.......人の事を全く意に介さない奴じゃな。」



 あれ、ちょっと落ち込んだ?



 「あれ?なんかまずい事いった?」


 「.....自覚無しなのも恐ろしいな。」



 ???


 .....まぁいいや。



 「それで、今度はなんじゃ?」


 「あぁそうだなぁ....取り敢えず硬い奴ある?」



 切れ味あっても耐久性無いなら意味ないしね。



 「.....大剣だったらあるが?」


 「大剣かぁ〜.....取り敢えず見せてくれない?」



 はいはいと言って、おじさんは奥の方に行った。


 何でもいいから、早いところ剣が欲しい。


 ....あんな話聞いたら、ウジウジしてられるものかよ...!
































 「白蛇の森って?」


 「そう呼ばれてる場所さ!」



 そう言ってリュウズは、注文で来た果実水をぐいっと飲んだ。




 「...ぷはぁ!いいねこの果実水!」


 「そう?....まぁ悪くないのかな?」



 いつもここでしか食べないから、他の店を知らないんだよなぁ。



 「で、どんな場所なの?」


 「まぁ、簡単に言っちまうと、()()()()()()()()()()()





 ......えっ?魔獣が居ない?


 それはない筈だ。魔獣は魔力や神秘を好む。


 森はそんな魔力や神秘が沢山ある場所。


 ...そんな所に魔獣が居ないなんてあるのか?




 「.....魔力や神秘も一切ないって事?」


 「逆だ。()()()()()()()()()()()()()



 ...ますます分からない。


 溢れるぐらいあるんだったら、それに比例して魔獣も数を増すものだと思うのだけど...



 「.....ティーザは()()()()()って知ってるか?」


 「.....適応?」


 初めて聞いたな。そんな単語。



 「生物には受容出来る魔力に限界があってな。空間に存在する魔力....それの受容量ってのがあるんだ。」


 「えっと.....?」


 「まぁ、分かりやすく言うと、『海にいる魚の全てが深海で生きれる訳じゃない。』って感じかな。」



 あぁ、それならわかる。


 つまり"魔力の適応"ってのは、魔力の薄い所にいる生物は、魔力が濃い場所では生きる事も難しいってことか。


 ....それじゃあその森は、海で例えるなら深海よりもとても深い場所って事か?




 「.....じゃあ何でそんな森に、剣があるって噂があるの?おかしくない?」


 「竜人には"魔力の適応"がないんだよ。元々竜神の子孫だからな、竜人は。」


 「あぁ.....神様から生まれたから濃いとか薄いとかないってこと?」


 「ああ、竜人が神秘そのものだからな!」



 ...成程。


 それだったら納得できる。


 じゃ、興味本位で入った奴が立てた噂か。






 「あ、ちなみに噂の大元は俺だぞ?」


 「君かい!!!」



 いやなんか妙に詳しいなとは思ったけど!!



 「なんか酒場のジジイどもに世間話で話してたらこんな事になってやがってなぁ!」


 「....君のそれは世間話じゃない。ただの冒険譚だよ。」



 あ、やっぱりぃ?と舌を出してリュウズは言った。



 本当にこの子は....人をからかうの好きなのだろう...振り回される人は大変だな。....特に泣き虫ちゃんは。





 「はぁ....じゃあ君は全部知ってるって事?」


 「知ってるつうか見てきたからな!」



 威張って言うことかい...!



 「.....じゃあ聞くけど、本当に剣はあったの?」


 「いや、結論から言うと剣はなかった。」



 ...ん?妙な言い方だな?


 その言い方だと.....



 「()()()()()()()()()ならあったって事?」


 「察しいいね、その通りだ!」



 やっぱりか...


 大気の魔力濃度が濃いと、()()()()()()()()()事がある。


 器に魔力を注ぎ込み過ぎると壊れてしまうように、大気の魔力が濃い所で野晒しにしてたら、普通の武器なら一日で錆びつく。


 .....前にそれで剣を買い直す羽目になったし。




 「だったら行く意味はないね。錆びた剣を手に入れた所で何にもならない。」



 「いやいや待ちたまえティーザ君?誰もまだ、その剣がどういうのかだったのを言ってないぜ?」



 随分もったいつけた言い方をする....





 「あの剣はな.....多分神秘を持っている。」


 「.....つまり?」





 どゆこと?



 「もちろん持って帰ろうとしたんだ。.....でもどうやらある特定の者にしか反応しないのか、抜く事が出来なかった。」


 「.....そう言う縛りじゃないの?」



 そういうのは、そんなに珍しくない。


 これは、聞いてみたら特別な事のように聞こえるけど、別の言い方をすれば『扉の鍵』と同じ原理だからな。



 「いや縛りじゃない。あれはどちらかっていうと.....()()()()()()()()()。」



 リュウズが突然そんな事を言い出した。





 .....あるにはある話だ。


 死んだ人の魂が物に取り憑いて、呪物のようになるという話は。




 「じゃあ呪剣だったって事?」


 「いや.....多分聖剣の類だ。」



 .....へっ?



 「ほぼ残って無かったが、あの剣の中には光を感じた。....絶対に消えないであろう光がな!」



 ....いやいやいや...



 「じゃあ何で錆びついてんのさ?」


 「そこが不思議なんだよ。いや、何かの儀式で媒介にしたんだったら分かるんだけど.......あんな強い剣を使ってまでやる儀式もわかんねぇし.....不思議だったなぁ。」



 リュウズ.....流石にその話を信じろってのは難しいよ。



 「んでだ!....ティーザ、興味ないか?」


 「えっ?......いやぁ...」





 事実そんな剣があるのなら、取りに行きたい。


 ....でも、リュウズは言った。剣は錆びていると...


 力を失った剣を研ぎ直した所で、果たして使い物になるのか?





 「ん〜.....どうしたもんか........」


 「まさか.....行かないなんて、そんなつまらない事を言うつもりするつもりか〜い?」



 いや、だって。



 「行っても引き抜けないんじゃ意味無いし。」


 「......はぁ、分かったよ。そんなに行きたくねぇってんならいいよ。」



 リュウズが拗ねた。


 いや、本当にこっちに益がないからなぁ。



 「.....あの感じだったら、ティーザなら抜けると思ったんだけどなぁ。」


 「........それ、どういう意味?」



 リュウズが意地の悪い顔をしてこっちを向く。


 .....その顔は明らかに、こっちが食いつくと分かってた顔だった。



 「いや?何でか知らないんだけどな?その剣の魔力がお前の魔力とほぼ同じだったんだよ。」


 「......そうなの?」


 「そうさ!お前だったら剣も誤認してひょっとしたら抜けるかも知れねぇぞ!」



 .....そうだったら手に入れてみたいが...



 「あと、力を失ってるって言ったけどそれ多分何かに力を分けてるからだと思うぞ?」



 ......つまり取ってきた後に、剣の力を譲渡先から取り戻せばまた使えるようになるって事か...


 ...まぁそれなら取っとく価値はあるかな。



 「んでどうだい?興味でたか?!」








 「.....ねえリュウズ?白蛇の森ってどこ?」































 「ほら、コイツだよ。」


 おじさんが剣を持ってきてくれた。


 .....大剣にしてはかなり細身の大剣だった。


 「ありがとうおじさん!」



 ギリッ!



 .....持った感じは悪く無い。




 思ったより重心が手元よりだ。


 これなら普通の大剣と違って風車のように振り回す事もできる。


 .....大剣は好みじゃ無いけど、これは悪くない。



 「しばらくはこれで行くか......おじさんありがとう!」


 「本当にそれでいくのかい!?...いや買ってくれるのならいいんだけど.....」



 そんな驚くとこかな?


 ただ持ってただけなんだけど。



 「うん!」


 「.....アンタ...自分の容姿を考えてみなよ......」



 ?


 どういう事だ?



 「.....いやいいや....エリンのめちゃくちゃを見るのは初めてじゃないしな。」


 「何さ?まるでいつもおかしいことをしている様な言い方じゃないか?」



 おかしな事は何一つやってない筈なんですけど!



 「じゃあ聞くが?十二歳とは思えない女の子の様な華奢な奴が、自分の身長をゆうに越える大剣を片手で持って笑顔でじゃあこれで!とか言ってる光景をおかしくないと?!」



 あぁ...そういうことね.....


 客観視して分かった...僕、結構変なことしてるな!?



 「ま、まあまあ!取り敢えず買うので!幾らですか?!」



 「話を変えるならもっと上手くせい!....三千五百ゴーネじゃな。」



 はい、とお金を渡す。


 別にお金は有り余ってるし、たかが三千五百ぽっちどうって事はない。



 「―――――――――」


 「......どしたの?」



 おじさんまた固まったんだけど?


 .....普通にお金払っただけだよ、僕?



 「.....あのなエリン....三千五百ゴーネをヒョイっと渡せる様な傭兵は、お前ぐらいな者だぞ?」


 「.....?そうなんだ。」



 それの何がおかしいんだろうか。



 「分からんか?.....普通の奴にとっては大金なんじゃよ、三千五百ゴーネは!」


 「はぁ...だから?」



 他の人の事は知らないんだけど...



 「はぁ.....せめて、変な奴に目をつけられるなと覚えておけ。」


 「???....分かった?」



 何がそんなに心配なんだろう?
























 鍛冶屋から出てきた。



 「ん〜!よし!」



 お金はある、剣も新調してる、腹ごしらえはもう終わってる。


 .....準備は万全だな!



 「さてと...行きます.....かぁ?」





 (おいおいマジかよ!?)


 (ちょっと美人ねぇ...!!)


 (とても綺麗だなぁ!!)


 (あの歳であんな美しさか...!)



 .....なんだ?あの人だかり。


 様子から見て誰かを見ている様だけど......




 「すまないが下がってくれ!!」


 「うちのお嬢ちゃんに近寄らないでねっと!!」





 あぁ、護衛の人達も大変だなこりゃ。




 全く...どうして野次馬ってのは集まるのだろう?


 集まった所で何かする訳じゃない、かと言って追い払おうとすれば文句を言う。


 .....その人の迷惑になるだけだと、何で気づかないのか...理解できない。






 「すみません、あの!人を探してるんです!!通してください!!!」





 そらみろ、早速その人の迷惑に......待って?



 .......なんか聞いた覚えのある声なんだけど?




 「ったく!しつけぇぞブン殴られてぇのか!!」


 「はいはい落ち着こうな〜素がでちゃってるぞ〜。」



 というか騎士達の声にも聞き覚えが......












 ........あの二人、()()()()()()()()()()()()()()()()






 「.........なんで?」



 何であの二人がここにいる?.....観光?


 ......いや、そういう風には見えない。というかあの二人の格好は何だ?



 戦闘が出来るような格好ではあるが、甲冑などは身に着けていない。



 様子を見るに、誰かを護衛している様に見える。



 あの二人は王国直属の騎士だ。そんな二人が何で甲冑を着けて護衛をしていないんだ?



 ......待てよ?そういえば『お忍び』とか言うのを王族の人はやったりするんだよな?





 それだったらまぁ、納得もできはする。


 護衛をしなきゃいけないが、身分を隠さなきゃいけないのなら甲冑は着けられない。......あんな目立つ物着けてたら護衛してる人が偉い人だとすぐにバレてしまう。



 .......じゃあ何で身分を隠す?



 身分を隠さないといけない理由があるのか?


 ないのだったら不自然だ。さっき、人探しをしていると言った。



 人探しをするのだったら、立場を使えばいい。



 その方が協力してくれる人も増えるかもしれないからだ。何でそれをしない?









 ........それをしたら、探し人が逃げるから?







 「ん?...おいアイン!?あの子.....!」


 「え?.....嘘、居た!?」



 あの二人に見つかった。


 でもこっちの頭は、まだ情報が完結していなくて。


 .....逃げようと言う思考が回らなかった。





 (どう言う事なんだ?)



 ザナルカンドが僕を探してると言っても、簡単には納得出来ない。



 あそこからしたら、僕はバルド本人だと言える。


 そんなのを迎え入れたら国民は『何でバルドの転生体を王にしないんだ!!』と言うに決まってる。



 ほぼ厄介種な僕を迎え入れる益があるとは到底思えない。





 ......まさか善意で迎え入れようとしてる?





 「エリ......お嬢様!!居ました!!!」



 「馬鹿みてぇにでけぇ剣持ってるあのガキンチョだ!!!」




 あの二人が、『お嬢様』を呼んでいる。



 .....でもあり得ない。



 だってあの時.......仕方なかったとはいえ泣かせたんだ。



 彼女に酷いことをしたんだ。



 ......彼女の方からじゃ、僕は裏切り者だ。


 一緒に居てと言ったのに、それを裏切って何処かに行ってしまった最低な奴だ。



 ........彼女が僕を探す訳ない...



 ...........彼女が僕を許す筈がない...!
























       「ティーザ君!!!」




     「―――――――――――」














 そこから出てきた姿は.....あの時より少し大きくなって、でも全く変わっていなかった。



 とても元気そうで、活発な雰囲気があって、いるだけで周りを明るくしそうな......薄桃色の髪色をした。


















  ........エリーテ・ザナルカンドだった。

















 「――――――――――――――」



 口が乾いていく。


 身体が硬直していく。


 目の奥が熱くなっていく。




 「ティーザ君......!」



 大きくなったエリーテは、こっちに歩み寄って来る。



 どうすればいいのか。

    何をすべきなのか分からなくて。











 ....気づいたら、エリーテを背にして走っていた。





 ドグァアン!!!




 「.........えっ!?」



 一番驚いたのは、僕だった。


 本当に何も考えていなかったのに、身体が動いている。



 「っ!!」



 それでも逃げなければ...


 折角忘れられてたのに.....また迷ってしまう。


 まだ友達になれたらって.....また思ってしまう。







 「!?待って!!話を聞いて!!!」





 っ!!!!







 (いかないで!!おねがい!!はなしをきいてよ!!!)






 「〜〜〜!!!」






 脚を止めたい。


 止めて振り向きたい。


 .......でも駄目だ。



 あれから二年経っても.......


 ()()()()()()()()()()




 「ティーザ君!待ってくれ!!」


 「エリーテちゃんの話を聞いてくれ!!坊主!!!」



 .......ごめん、二人とも。


























 ......僕はそのまま、白蛇の森に向かって走った。




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