第十六話 さよなら
「なんだよ.....これは。」
ただ呆然とした。
......激しい戦闘があったのは伺えた。地面が抉れていたから。
問題はそこではない。
...明らかに地面に潜った跡がある。
殴り掘り進めたのだろう。
戦闘中に
......全く、自信なくすなぁ...
こういうのは、俺の専売特許だと思っていたからな...
「......ここまでなの...?転生体の力って.....?」
近くにいたエリクトは、もっと驚いている。
「.....そりゃどういう意味で?」
「........残滓がほとんど.....バルド様のです.....」
.....つまり、ザナルカンドを襲撃して来た奴に、完全に勝ってたってことか。
「...................」
空を仰ぐ。
.......色々と凄まじいことが起きすぎて、嫌になってくる。
......子供がこれをやったってだけで、強さに自信を持ってた俺は、ちょっと落ち込んだ。
(驕ってたってやつなのかなぁ......)
自分のいない所で、ここまでやるのだ。
.......恐らくその転生体は、本物だろう。
....できることならすぐに探しに行きたいが...その前に。
「うぇぇん!!うわぁぁんん!!」
........本当になにがあった?
......何でエリーテがここにいて、泣き喚いてる?
......終わった。
.....人を殺したと言う罪悪感が無い。
....化け物が居なくなって、ほっとした感覚だ。
「..............はぁ.......」
....もう良いだろ?ここにいる理由がまだあるか?
...いや無い、むしろ居ない方がいい理由の方が多い。
「.....坊主?」
アインさんが口を開く。
....こちらの意図が分かったからだろう。
「アインさん.....エリーテにはさよならって言っといてください。」
そのまま僕は、その場を後にしようとした。
「まっ、待て!お前!!エリーテちゃん置いてくか気か!?」
置いて行くんじゃないよ、アインさん。
ここが彼女の家だ。...彼女の居場所だ。
「......ここは、僕の居場所じゃない。」
「......!!」
......もう行かないと。
僕が居たら、きっとあの子は苦労する事になる。
....それだけは嫌だ。
......母さんと同じ目に合わせたくない
「.....シュイノさんには...気にしないでって言っといて....いずれ何処かで聞く事になっただろうから。」
「.....待て.....待ってくれ.....!」
.....空の星は輝いている。
その中に、金色の星があった。
隣に、金色に負けないぐらい輝いてる星があった。
....その星達は、多くの星に囲まれていた。
.......その中には、薄桃色の星もあった
「......いいなぁ」
僕も、あんな風になれたら良かったのに。
「.........なれる訳無いけど...」
星と自分が一緒だなんて、そんな幻想じみた事言っても、虚しいだけだろ?
「......さて」
そろそろ行かないと....いつまでもお邪魔する訳には行かない。
「まって!!おねがいまって!!!」
「――――――――――」
.......後ろから、ここに居ない筈の声が聞こえた。
「.......城から走って来たのかい?」
後ろを振り向かずに話す。
振り向いたら、きっと僕は迷ってしまう。
「はぁ...はぁ.....うん!!」
.....ここまで相当な距離があっただろうに.......
何やってんだよ、エリーテ....
「そうか....凄いね。」
.....行かないと。本当に彼女を不幸にしてしまう。
「!いかないで!!おねがい!!はなしをきいてよ!!!」
エリーテが叫ぶ。...悲痛な声で。
.....流石にそんな声で話しかけられたら、無視出来ない。
「.....僕は化け物だ。君の隣にいちゃいけない奴なんだよ。」
「そんなのだれがきめたの!!」
君ならそういうと思ってたよ。....でも。
「皆が決めたんだ。.....化け物は人とは居られない。」
「そんなのしらない!!!」
やめなさいエリーテ。
......ひとりぼっちになっちゃうよ?
「......僕は人を殺した。死んだっていい奴らだったけど殺した。.....そんなんと一緒に居られないでしょ?」
「だからしらないよ!!!」
「わたしがしってるのは、おもしろくてめちゃくちゃなティーザくんだよ!!!」
.....このこがなんなのかなんて、ワタシにはわからない。
でも、ワタシのしっているこのこは.....
.....やさしくて、でもめちゃくちゃで、"さびしがりや"なあまえんぼうなんだとおもう。
....おとうさんがそうだから。
「ひとごろしとか、そんなのしらないし!そうしたのはあのとうぞくからワタシをたすけるためにしかたなくやったからでしょ!!!」
.....うまをとりにいこうとしてとめられたとき、ティーザくんはとてもふくざつなかおをしてた。
つらくて、しんぱいで、どうしたらいいかわからないかおだった。
「.....知ってたの?」
あんなかおしてたら、そうなんじゃないかっておもうよ。
.....それに、いやなにおいもしてたから。
「.....いやだなんておもってないよ...たすけてくれてありがとうっておもってるよ...!」
....あのままつれさらわれたらとかんがえるだけで、ぞっとする。
.....きみは、そんなひとたちからワタシをすくってくれた。
それなのに、どうしていなくなってっておもわなきゃいけないの?
「ワタシからみたら!あなたはりっぱなひとだよ!!」
あぁ.....君もそう言ってくれるんだね。
.....僕を"人"として見てくれるんだね。
「おねがいだから....いかないでよ.......おんがえしさせてよ....!」
...馬鹿だなぁ....そんなの気にしなくていいのに。
「.....恩返しなら、今してくれた。」
「.....ふぇ...?」
君も母さんと一緒.....自分よりも他人が大切だと思う人。
「......僕を人として見てくれてありがとう」
振り向いて、彼女の顔を見ながら言った言葉。
...酷い顔だ...涙でビチャビチャになっている。
眼は真っ赤に充血してしまってる。
......そんな君だから。
「まってよ...!おねがい....!!」
......僕の為に泣いてくれる君だから。
「............さよなら」
........君を不幸にしたくない。
そう思って、彼女の前から消えた......
「.......そんな事があったんだね。」
「ぅぅぁぁ...........うん....!」
.......やっぱり、子供だったのか....
..........自分を蔑ろにしてしまう子供だったのか.....
「ごめんね.....もう少し速ければ止めれたのに.....」
「うぅん...!」
......泣きじゃくる娘を宥めながら、母親は謝る。
「......すまない...」
「ティーバのせいじゃない...勘違いしないで。」
.....お見通しってか。
...でもいつもそうだ。
.....事前にどうにか出来ても、起こった事は...どうしても間に合わない。
だからあの時も......親友を救えなかった。
「ティーバ様.....」
橙色の騎士が、俺に話しかけてくる。
「.....もう動けるのか?」
「はい....エリクト様のお陰で....」
「...そうか。」
相変わらず頑丈だな、お前は。
「.....申し訳ございません。」
「......それはどっちだ?」
エリーテを攫わせてしまった不手際か?
...転生体を止めれなかった事か?
「両方です...」
「..............そうか。」
全く...本当に生真面目な奴だ...
こんなんだったから、昔擦れに擦れまくったのだろう。
「....不手際はこれからの働きで償え。.....転生体の事は、俺の方が悪い。」
「.........申し訳ございません....!」
...空を仰ぐ。
......俺はいつもこうだ。
..........いつも終わった後に来て、手遅れになってしまう。
「......ティーバさん...ちょっといいですか?」
...紫色の騎士が、俺に話しかけてくる。
「.....あの坊主がそうだってのは知ってんですけど....その.....」
「......言ってみろ。」
シュイノから聞いた戦いぶり。
......そして、敵の前から消えたと言う技。
..........もう頭の中には、答えが出ていた。
「......母親の事を....ティーサって言ってました。」
「...........そうか。」
その名は、俺の姉の名前だった
「そういえば言ってたんだよな...男の子が産まれたら自分の名前に似た名前を付けるって......」
やめときなって言ったけど....やったんだな。
「......シュイノは悪くないです。.....本物か試そうとした俺が悪いです。....あの時のせいでアイツは」
「アイン.....もう終わった事だ。」
お前は悪くないなんて言えない。
....でも、いつまでもこうしてる訳にはいかない。
「うぅ......うぁぁん...!」
.......エリーテが泣いている。
人の事なんて興味のない子がだ。
.....この子は、本当に信用した相手しか心配しない。
....それ程までに、ティーザと言う子供は気に入られていた。
........この子が、泣いてしまうぐらい優しかったのだろう。
「.....後処理が終わったら、全ての街に"網"を張れ。」
きっと、まだ分かり合える筈だ。
「転生体だ。いい意味でも悪い意味でも有名になる。」
「ティーバ様...?」
強がりで逃げただけだ。...本気じゃない筈だ。
「......意地でも、エリーテに会わせてやる...!」
......きっとエリーテの話を聞いてくれる。
........ごめん姉貴...祝えなくて........その代わり。
アンタの息子だけは、絶対に護る
Prologue 完




