第十五話 "初陣"
「じゃあ、死ね。」
...そして、初陣の時が来た。
縛りの恩恵が消える。/縛りの報酬を受ける。
奴は身構えようとする。/こちらは斬りかかる。
奴は攻撃をしようとしている。/こちらはもう終わっている。
サァァン!!!
......そういう感じか。
「っ...坊主!そいつには...」
「分かってる!!!」
...物理は効かないか...なら。
ドヒュウッ!!!
(......アレだな)
「...またかい!」
男がほくそ笑む。きっとこのくだりをさっきもやっていたのだろう。
...あの二人は、剣の才能はあるが魔術の才能が全くと言っていいほどない。
だからこの"怨霊"に対して二人は無力なのだ。
「...っ!?」
どうやら気付いた様だが、もう遅い。
剣を斜め上に振り抜いた。
ザシュアッ!!
「ッア!!!」
間一髪で避けられた。逆袈裟斬りで仕留めようと思っていたのだが。
......だが右眼は奪った。
「ッ!!何をしたッ!!?」
「...知らないわけがないと思うが?」
霊の身体は魔力で構成されている。
魔力は形のないもの、故に触れる事が出来ない。
.....魔力同士であれば話は別だが。
「そのぐらい知っている!!それでも、何故斬れた!?
身体を捨てる時の縛りの恩恵で、"光以外は通せない"筈だ!!!」
やっぱり...コイツ、今も生きているのか。
ただの怨霊なら魔力を込めた攻撃で倒せる。魔力と魔力をぶつけ合えば形のある魔力は壊せる。
しかしコイツは、死んで怨霊になったのでは無く、生きたまま怨霊と同じ状態になっている
それだったら、縛りで身体を捨てる代わりに何かを得る事ができる。
奴が言った様に、ある物以外の魔術を通さないと言った恩恵も受けれる。
.....なる程、これだったらあの二人がボロボロにもなる。
光以外を通さないのなら、剣に魔力を込めれても意味がない。
.......しかし。
「言ってもいいが、良いのか?能力の開示も縛りに含まれるぞ?」
「......貴様の能力か!!!」
僕の能力は、『星の願いの具現化』
どういう物なのかは、所有者である僕もうまく理解出来ていない。
...分かっているのは、ややこしい願いは叶えられないが、すぐに叶えられる願いなら叶えれる。
例えば...人と仲良くなるのだったら、自分でしなくてはいけない。
基本的に時間のかかる物は出来ない。
でも、風を起こしたいとか、火をつけたいとか。
そういうすぐに叶う願いは叶えられる。
だから、『この男に攻撃を通す』という願いは叶えられる。
「ッ、行けっ!!!」
スァァァァァーーー!!!
男が闇をこちらに放ってくる。
アレは当たれば僕でも少しキツイ。
.....よし。
逃げるか。
「ふんっ!!!」
全力で地面を殴った
ドガァァッ!!!
「っ!?なにを!」
当たればまずいのなら...当たらない所に行けばいい
......ドガドガドガドガッッッ!!!!
「!??!」
(何だ!?地中から??!!)
闇には決定的な弱点がある。
暗闇にある程度の光源が無ければ消えてしまうと言う弱点。
...だから地中に逃げ込んだ。地中には光源が全くないから。
それにここを通れば...
ドガァァ!!!
「っわ!!!」
お前が一番見えない右側に簡単に来られる。
「...久しぶり。」
今度こそ斬れる。
そう思って、大上段斬りを放った。
......ない筈の右眼に睨まれていた。
「ヌオオオッ!!!」
シャアアアン!!!
「ッ....ち!」
ギリギリでまたかわされた。
(そうか...!今のコイツは怨霊その物...!)
肉体と違って、治すのはそこまで難しい事じゃない。
破損した部分は、魔力で補えばいいのだから。
(.....少しマズいか?)
仕留められると思って上段斬りをしてしまった。
今僕は、致命的な隙を晒している...様に相手に見られているだろう
「...殺った!!」
案の定、闇を放ってきた。
......もう少し早ければ、この距離では少し危なかったが...
この速度だったら、対応できる。
......ジャリッ!!
剣を逆手に持ち、構える。
(.....上、右下、左下、右...行ける!)
上の闇をしゃがんで避け、右下は振り上げて斬って、左下は止まって避け、右のは跳び上がって避けた。
そのままの勢いで、突貫した。
「嘘だろッ.....!!」
全て避けられるとは思ってなかったのか、そんな言葉を吐いた。
ジャキ!
跳んでる最中に剣を持ち直し、斬りかかった。
ガキッ!!!
「...大人しくしとけよ。」
「できるか...!」
防がれた。
どうやら短剣を隠し持ってた様だった。
例え短剣であろうと、魔力を込めれば斧の一撃を防ぐ事は出来る。
どうやら腕が良かった様で、僕の本気の一撃を防いだ。
ギリッビシッ!!
「っ......!」
しかし、どんなに腕が良くても使っているのは、緊急用の短剣。
戦闘用の短剣に比べれば、斬れ味も耐久力もお粗末な物。魔力を込めた所で、僕の本気を受け止められ続ける訳が無い。
「待て!...考え直せバルドよ!!」
「僕はバルドじゃない...!」
何か話そうとしているが、僕には関係ない。
「おかしいと思わないのか!竜神の血を引いている者が王になるこの世界の仕組みが!!悪神を信仰しているだけで迫害されるこの世界が!!!」
「................」
「おかしいんだよこの世界は!同じ強さを持っていても、気に入られるのは、血を持っている方だ!!不平等にも程がある!!!」
「自分の不満を相手にぶつけるなよ...!!!」
その時、前の男に夢中になりすぎていた。
...真下からきている闇に気付けなかった。
「貴様とは話にならないな!!!」
ジュルン!!!
「っ!?」
下から出てきた闇をまともに喰らってしまった。...別にそれが問題だった訳ではない。
ただ、そっちに気を向けさせられた。
「.....ッつ!!」
「そこだ!!!」
その隙を突かれた。
ドキュオッ!!!
「痛っ!!!」
腹を殴り飛ばされた。
直前で腹筋を固めたからまだ良かった。
...しかし、痛みに慣れていない身体には重い一撃だった。
「がっ、くぅ...!」
動かなければいけないのは理解しているけど、痛みで身体が動いてくれない。
「死ね!!!」
闇を纏った拳が放たれる。
だがちょうど、痛みの麻痺から解放された。
ドバァァァ!!!
「.......今のも避けるか...!」
忌々しそうに男が呟く。
「......つぅ...!」
まだ痛む...?
いや違う...内側に入った魔力が暴れ狂ってるんだ...
「...まぁいい、どうあろうが前ほど早くは」
ダバァッ!!!
「.....動けるのかよ!?」
もう一度跳んだ。男に向かって
「ちぃ!!」
また拳を放ってきた。...だったら。
シュリィン.....
「.......はっ?消えた???」
様に見せただけだよ。
...人は余りに速い物を見ると景色が遅延して見える事がある。
今僕がやったのは、相手の目の前で全力で翔んで視界から消える技だ
「......え?」
ゆっくりとこっちを向いた男の顔は何が起こったかわからないと言う顔だった。
まぁだろうな、よくこれを使われて母さんに負かされていた程、使われた方は混乱...と言うか呆然とする。
思考してしまう存在に対して、理解出来ない情報を見せて混乱しているうちに殺す...母さんの技。
呆然としている顔を見ながら、剣に魔力をありったけぶち込んだ。
「......殺った」
バキャァン!!!
?!
剣がこわれた!?
......!
しまった...!一気に魔力を流し込んだら、器が持たないことを忘れていた...!!
それにこれは、質の悪い剣!この剣も、僕の全力に耐えられる訳がなかった!!!
「....ひ!馬鹿が!!」
好機と言わんばかりの笑みを浮かべて、こっちに拳を飛ばしてくる。
どうする!?剣が壊れた以上どうやって......
......いやまて?良く考えたら.....
僕が殴られて向こうが殴られてないってのは気に食わないな。
ドゴォ!!!!
「ぶぎゅ!??!」
......拳が突き刺さる。
僕の拳が男の顔面に。
「...ッアアアア!!!」
ドビャァァン!!!
全力で、回転を加えて、殴り飛ばした。
ドガッダッザァッ!!!
まるで投げられた人形の様に吹き飛んで行った。
「ガッ?!ヒュゥ??!」
男の顔はめちゃくちゃになっていた。
歯は粉々になっており、鼻も折れている。
頬骨も折れているだろう。......心底どうでもいいが。
「...まだ終わってないぞ。」
歩く。
近づいていく。
殺す為に。
「まっ待て!!本当にいいのか?!!」
男がまた何か喚いている。
「お前だって俺と同じ転生体だ!いずれわかる筈だ!!この世界が狂っている事に!!!」
うるさいなぁ...!
「お前には力がある!今ここでザナルカンドどもを殺せば、貴様は王になれ」
「知るか!!!!!」
「ひ?!!」
.........................どうでもいいんだよそんな事。
「お前の言ってる事は一つも理解出来ない!この世界の王になるつもりも僕にはない!!!」
「で...でもお前には力が」
「でも!!!!!」
(ぃゃ...!?うそ!?ご、こめん!!...そそ、その...!かお、かわいくて、かみもながくて!ちっちゃかったからまちがえちゃって!ごめん!!)
(だいじょうぶ?こわくない?)
(おとうとができたみたいでうれしい!)
(ふたりとも!このこがたすけてくれたんだよ!)
(ごっ、ごめん..ふふ..アハハ!!いや!めちゃくちゃだなぁって!!思っちゃって!!!)
「あの子は僕に人として接してくれた!」
「.....???何を言って」
「友達になりたいと思ったんだ!!」
「だ、だからそいつが」
「友達になれないけど、心の底からそう思えたんだ!!!」
..................楽しかったんだ。
「.......あの子の人生には、化け物なんていちゃいけない。....だから、僕は友達にはなれない。」
「でも...それでもあの子には...僕に人として接してくれたあの子には幸せになってほしい。」
「.......だから。」
「僕はお前を殺す。」
それが、今の僕の願いだ。
「ひっ....!」
男が怯える。
殺される覚悟もなかった男は逃げれる訳も無いのに逃げようとしている。
「.....構えろ。そしたら一撃で殺してやるから。」
自分で言ってて酷い脅し方だと思った。
まぁ、逃がす気は全く無いけど。
「はぁはぁはぁはぁ....!!!うおぁぁぁぁ!!!」
みっともなく、怯え散らかしながら突っ込んで来た。
「じゃあな、悪く思え。」
ドグシャア!!!
..........そんな奴の腹に風穴を開けてやった。
そして男は、星の輝く夜空に消えていった。




