第十二話 "願望"
...サァァン!!!
っ!クソしくった!!!
おかしいとは思ったがコイツ...!
(肉体を魔力に変換してやがる!?)
...竜人は魔力を作り出す事ができる。
自分の生命力を魔力に変換する事で、魔力を無理矢理作る。
魔術師にもなれば、自身の肉体の一部を魔力に変換する事もできる。
...しかしそれは、もう使い物にならない部分を魔力に変換しているだけで、肉体そのものの変換となると話が変わる。
魔力は普通、器が無ければ散り散りになる
肉体という器があれば、魔力のその場に留めておく事は可能だ。
でも肉体を変換したら、膨大な魔力を手に入れれてもそれを留める器がなくなる。
そしたら、魔力は魂諸共消え失せる。
...例外として、魂を器にして魔力を固定すると言う方法がある
そうすれば、魔力を肉体の代わりにできる。
(そうだとしても変だろ...!?)
今の手応えはおかしい。魔力は実体こそないが、固定すれば、多少形は得る。...触れる程度にはなる筈だ。
俺の放った一撃は、まるで空を切ったかの様な手応えのなさだった。
(...まさか固定してねぇってのか!?)
外側だけを固めれば、器としては充分作用する。
内側の固定をしなければ、外側だけを注意すれば良い。魔力操作をして、攻撃を流す事はできる。
(そんな繊細な事やってんのかコイツ!?)
だとしたら、勝ち目が全くない...!
致死の攻撃を放ってくる幻影と戦う様なもんだぞ!!!
「おぉっと、危ない危ない。」
背後から飛び込んで来た俺をヒョイと避けて、そんな事を言いやがった。
「くそっ!!」
...まずい事になった。
シュイノを投げ飛ばしたあの妙なモヤ...もしアレがコイツの能力だとしたら...俺達じゃ絶対に勝てない。
そう思って、なけなしの誇り捨ててまで奇襲したってのにしくじった!!!
(アイン...!ティーバ様には!?)
(出てくる前に伝えた!!)
ティーバ様に連絡を入れて来て正解だった...
こんなバケモン、俺達に倒せる訳がねぇ...!
あの人は今ミディターに居る...ここから馬で五日掛かるが、あの人だったら夜明けまでには来る!
(...なら、私達のする事は決まったな。)
(あぁ...あの人が来るまで死んでも時間を稼ぐ...!)
それができれば、俺達の勝ちだ。
「...........ん〜...俺が言うのもアレだが...いいのか?油を売って。」
?...何を言い出してんだコイツ?
「一応ほら、姫が連れ攫われたのだろう?さっさと助けに行くべきだと思うがなぁ?」
「...はあっ?」
コイツまさか...エリーテちゃんが帰って来た事を知らないのか?
「......そう思うのならば引け!貴様に構ってる時間は無いのだ!!」
(アイン!乗ってくれ!!)
「っ!?......そうだ!さっさとエリーテちゃんを助けに行かねぇといけねぇんだよこっちは!!」
どちらにしろ好都合だ。知らないんだったら、知らなくていい...!その無知を利用させてもらう!
「..................そうか!まぁだろうなぁ!いやぁ、大変だろうお前達も?」
「あぁ、貴様のせいで姫を助けるのが遅れ」
「あんなに優しいガキのせいで仕事が増えてなぁ!」
「...................今何つったテメェ!!!!!」
「っ!!!落ち着けシュイノ!!!」
あのクソ野郎...!シュイノがダメな言葉を吐きやがった...!!
「もう一回言ってみろブチ殺すぞ!!!!!」
「おぉ、怖いなぁ!さっきまでの騎士然とした態度はどうした?」
っ!コイツ...!?
シュイノがキレると分かって言った!?
「シュイノ駄目だ!挑発だ!!」
「離せアイン!!」
「いやぁ、お前達を城から引き剥がすには、エリーテの存在が居るよなぁと思ってなぁ?」
ブチギレてる騎士なんぞ知らんと言うかの様に、奴は話を続ける。
「どうすればエリーテを攫えるのか考えていたのだよ?...そしたらある話が耳にはいってな?
...昔相当な荒くれ者だった男が、エリーテの母親に救われて、その恩義に報いる為騎士になったと言う耳の腐る様な美談を聞いてなぁ?」
「ッッッ!!!」
「親が親なら娘も娘かなと思ったものでなぁ?浮浪者の様な真似をして奴の前で倒れてやったら...警戒もせずにヒョコヒョコやって来たぞぉ?」
...このクソ野郎...!!!
「えぇっと...確かぁ...あぁそうだそうだ。
『だいじょーぶ!?どこかいたいの?!.....たてる???』...とさぁ!!!」
「テメェのような下衆に何が分かる!!!!!」
「あの子の優しさがなんなのか!!!!」
「分かっているとも...笑けるぐらい薄っぺらい偽善ってことぐらいはな!!!」
ドバァッ!!!
瞬間、シュイノが翔んだ。
何も言わずに、ただ殺す為だけに
「シュイノ!!!」
「ブチ殺す!!!!!」
「......俺に嘘をつくからだろ。」
(悪りぃ坊主...!アイツを追いかけねぇと!!)
(......あなたまで死ぬ気ですか...?)
(死ぬ気はねぇ!!...だかシュイノは死ぬ気だ。)
(...................)
(すまん、エリーテちゃんを頼む...!
あの子も感じ取っちまったと思う...!)
(………………………)
(エリーテちゃんの部屋は東側の部屋にあるから!)
(…………………………えっ?)
(出来る限り早く行ってやってくれ!!)
(いやっあの!?)
(じゃあ、頼むぞ!!!)
(ちょっ、ちょっと待って!?)
(悪りぃ、無理だ!!!じゃあ!!!)
......急いでいたのは分かるんだよ?ひょっとしたら親友が死ぬのかもしれないんだから...分かるよ。
...でもさぁ......
東の何処だよ!!!!!
アインさん、東って情報しかいわなかったんだけど!?
何処の部屋?!部屋ありすぎて全然分かんないんだけど!!
ぁあ全く!こんなに部屋いらないでしょ!!!
無駄にでかいくせに、無駄に部屋があって訳分かんないんだけど!!!
(本当に何処なんだよ...!)
「いや〜まさかエリーテ様がもう帰ってくるなんてな?」
「しかも、助けたのは十歳の子供だってよ?」
「マジか!?うわぁ〜自信なくすなぁ〜!」
呑気なものだなほんとに!!!
その子供は今こうやって姫を探して......はっ!
ダンッダンッダンッ!!!
「ん?何だこの足お」
ズバァッ!!!!
「すみません!そこの騎士方!!」
「おわっ!?」
「ふへぁ!!?」
「エリーテちゃんの部屋は何処ですか!!!」
「ぇ......えっと」
躊躇わないでくれよ全く!!!
ザッザッザッ!「何処ですか!!!!!」
「ひ、東の二階!!」
「の何処!!!!!!!」
「ひぇっ!?い、一番奥の部屋!!」
「よし!!!」
最初からこうしとけば良かったよ全く!!!
ダンッダンッダンッ!!!
「......な、なぁさっきの......」
「あ、あぁ.....」
「......ティーバ様みたいじゃなかったか?」
「......だ、だよなぁ.....?」
「...ここか!」
やっと着いた...!
やっぱりこの城広すぎるでしょ...!
城を壊しても良いならすぐに辿り着けるけど...流石に壊す訳にはいかないし...
「まぁいいや...」
文句を言っても変わる訳じゃない。
...早く部屋に入ろう.....
コンッコンッコンッ
「あぁえっと、エリーテちゃん...起きてる?」
………………………………
「…………………エリーテちゃん?」
(―――――――――――――――)
っ?!何だ!?
......心の音が全く聴こえない!??
「こめん!入るよ!!」
どう考えても普通じゃない!
間違えなく何かあった...!!
ガチャッ!
「っ!」
鍵か!?早く開けて......
あぁ、そんな時間が惜しい事できるか!!!
「...ふん!!!」
バキャッ!!!
よし!開いた!!
「…………………えっ......?」
......そこに居たのは...今にも壊れそうな少女だった
「――――――――」
......何で?
...怯えてしまうのなら分かる。あんな恐ろしい気配を感じ取れたら誰だって怯えてしまう。
......シュイノさんやアインさんのような騎士が、あんな感じになったのだ。
ただの子供が感じたら、失神してもおかしくはない。
「―――――――――――――」
でも、何か違う。
エリーテのこの反応は、何かに裏切られた人の反応だ。
「……エリーテ?」
放っておけない...
あの時より明らかにおかしくなってる...!
「.......うそだった………」
「………何が...?」
...エリーテの指差した所には、血塗れになった二人の騎士と何かが立っていた。
側から見て恐らく...あの何かが気配の本人だろう。
「……………何だアレは...?」
あの二人には、きっと人に見えているのだろう。
僕には、真っ黒の...真ん中に怖気のする笑顔を浮かべている"化け物"にしか見えない。
「…………けがしてると.....おもってた......」
「………えっ?」
「…………たすけようとしたの……」
「………………」
「………でもとうぞくにつかまって………」
「…………あのひとはだいじょうぶかなって……おもってたの……」
(えっと...この辺り?)
(いや、ちがう!...ちがうけど...)
(?)
(......だいじょーぶだったみたい!)
(...何が〜?)
(なんでもな〜い!)
......あの時の変な行動は、そういうことか....
「……いなかったから……あんしんしたの………」
―――――――――――
「………だれかがたすけてくれたんだなって.....」
―――――――――――――
「............でも.......ちがった.........」
――――――――――――――――
「..................なんで..........?」
...それは
「...................なんでこんなめにあわなきゃいけないの......?」
............とても辛い涙だった
「..............なんで」
「エリーテ。」
......ゆっくりと、こっちを向いてくれた。
......君の涙は見たくない。
..........転生体だからじゃない、僕の願いだ。
「願いを言って?......何でも叶えるから。」
「―――――――――」
「大丈夫だから。」
どんな願いでも叶えて見せよう。
...殺したければ殺してくれと願ってもいい。
実際に殺すのは僕だ。君じゃない。
........だから、何でも言って?
「...........エリーテ。」
...例えどんな事を願われようと......
「..........言いなさい?」
............君の願いは叶えてみせる。
「................おねがい.......」
......言った。
........."自分はいいから、他のみんなを助けて"と。
.................今にも壊れそうな心の声で...................
ドグォアッッッ!!!
「「「??!!」」」
突然城が爆発した様に見えた。
男は思った。
(.........俺以外には居ない筈だ......)
奇襲を仕掛けたのは、己のみ。それ以外はかえって邪魔になる。...そう思ったから、誰も連れて来ていない。
しかし、騎士達は何があったのか一瞬で理解できた。
......今ザナルカンド城にいるものでこの様な事が出来るものは、もう一人しか居ないと
ボヒュウ!!!
爆煙の中から、何かが飛び出して来た。
流れ星の様な軌跡を残して、こちらに翔んで来た
ドグラァァァ!!!!
......そして、その戦場に流れ降りて来た。
「――――――――――お前が?」
......瞬間、男によぎった思考。
コレがバルドか!?
それは、容姿が少女の様に見えたからではなく...
自分よりも遥かに強い事が分かって出た思考
「.......覚悟はできてる?」
「......何のだ?」
「..........分からなくていい。」
その時、僕は初めて、
「ぶ っ 殺 し て や る ... !」
......殺意を抱いた。




