第十話 "化け物"
「......ティーバ、言うことある?」
「イライラしてやった、後悔はしている。」
「本音は?」
「問題無いし別に良くねぇ〜?」
「........すぅ.........大問題じゃぁ!!!」
ビィゴァッ!!!
「ぷょぎぇぁぁ!?!!?!」
イッテェェェ!!?!?が、顔面に?!俺の端正な顔面に正拳突きかましやがったぞ?!!このアマ?!?!
「な、殴ったね...!」
「殴って何故悪いか!!...じゃないんだよコノヤロー!!!」
「いぃっ!?!」
や、やっばい...!エリクトマジでキレてる!??何で!?俺、世剣使っただけだぞ?!そんな怒る事か??!
「今回どう考えても囮だろうから、可能な限り余力を残してザナルカンドに帰ろうって言ったのは何処の王様なんですか!?」
......あっ
「もし教団の奇襲があったら大変なの!アイツらの魔術が全く効かないのは貴方だけ!その肝心の貴方が、イライラしたからって理由で本気を出して...それで奇襲の時に、魔力切れで動けなかったらどうするんですか!!」
「いやっ、その...ほら、兵の負傷とか全然ないし、思ったよりさっさと帰れるって事でさ。...な?、良いだろう?」
「ふん!!!」
バッツィィ!!!
「ビェタァァ!?!!?」
こっ今度はビンタァ?!!しかも、鞭のようにしならせてきやがった?!!?
「私が聞きたいのは言い訳じゃ無い、反省です!」
マズい...このままじゃ説教30分超濃縮コース...!!!何とかして、話を逸らさないと...!コイツの説教は心にくる...!!
「二度もぶった...!
親父にもぶたれたことないのに!!!」
「そろそろ本気で怒りますよ!!!」
「ハイサーセンっしたァァァ!!!」ドゲザァ!!
あぁ、話を逸らそうとしたのが間違いだった...これ多分長引くよなぁ...嫌だなぁ...
...ザッザッザッ
「ティーバ様!エリクト様!夫婦のお時間だとは思いますが失礼します!!」
「これのどこが夫婦の時間だと???」
シュバ!「何があった?できる限り長く、そしてゆっくり話すが良い。」
「あっ!」
助かったぁ...!これで説教から逃げられるぞぅ!!...なんか後ろから恐ろしいプレッシャーを感じるけど...!!!
「それが!」
「...?」
...何だ?その表情は?
「ザナルカンドが襲撃されました!!!」
ザナルカンド城内
...正直な話、予言はティーバ様だと思っていた。
...あの方の強さ、人柄、その全てが...伝承に残っている"バルド・ザナルカンド"に似ていたから。
...しかし、あの方は言った...
直感だけど...多分俺じゃない。
その時は謙遜かと思った。...しかし、忘れていた。...あの方は、"絶対の確信"がある事を言うお方だった。勘であれば、確信がなければ絶対に口にしないと。
...エリーテ様と話している時の彼の顔は、とても暖かかった。それで、ティーバ様と同じなのかと思った。...しかし、我等と話す時の顔は...冷たいなどではなかった。
...ただすさまじく、我らに興味がなかった。
興味があった様に見えたのは、初めて騎士と言うものを見たからだろう。エリーテ様によれば...彼はこちらのことを全く知らないそうだ。
我等が騎士だったから話していただけで、騎士で無い者が話し掛けたら...不快に思って、手を出すかもしれない。
そのぐらい、他人に興味がなく、人を傷つけても気にしない様な恐ろしさを感じさせた。
...エリーテ様と仲良く話していたのは、彼女がバルドの血を引いているからだ。...そうでなければ、助ける理由がない。興味が湧くはずもない。
アインの発言にあれ程まで怒っていた。...ティーザ君の意識を奪ってまで。
...あの恐ろしいプレッシャー。己と己を想う者以外を何とも思わない独尊ぶり。...それもまた伝承に残されているバルド・ザナルカンドの行動であった。
だからって、彼自身にその自覚は無い。恐らく、前にティーバ様の言っていた仮説通りなのだろう。
「......あの時、アインと話していた時の君は...ティーザ君ではなかった。もっと違う、別の存在だった。」
「......シュイノ.....」
「我々でも感じ取れる様な...魔力とは違うあの力...恐らく、バルド様の持っていた力だろう...」
「.......おい...」
「君は、あの瞬間、意識が無かったとはいえ...自分の意思で出していた。...竜人が持っているはずの無い力を。......それは君が」
「やめてやれ!!!!」
...驚いた。急にアインが怒鳴った....?
「.......どうした?」
「......坊主の顔.....見てみろよ......!」
......そこにあったのは、少女の様な可憐な顔ではなく。
...今にも泣き出しそうな...迷子の顔だった。
「......僕は....ティーザじゃ無いって....事ですか?」
「っ......いやっ....違う!」
「僕は......あの人の子じゃないってことですか...?」
「..................」
「ちゃんと......あの人のお腹で育ったのに.......?」
「っっっっっ!!!」
失念していた。
例え転生体であろうと...彼は子供だった。
まだ......守られなくてはいけない存在だった...!!
「いや......バルド様は...亡くなったのではなく、お眠りになっただけだ。」
「......................」
「魂まで転生したわけでは無い。...予言にもそう残って」
「だとしても、この身体は人では無い物だ。」
「................」
「......僕は.....母さんに.........ティーサに........化け物を......産ませてしまったって......事でしょう....?」
.......何だと.....??
「.......君.....今なんて」
ズゴゴゴゴ!!!!!
「?!」
「おわ!!?」
「何だ??!!」
その時、別の神の転生体がその場に舞い降りた。
......とても救世神とは言えないほどに、
歪んだ笑顔を浮かべた青年だった。




