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計画

伊達政宗像も、牛タン弁当もない仙台駅周辺は、他の都市と変わらず人々がのんびりと昼下がりを満喫している。広場には天鬼像が立っていて、他の都市との見分けはますます難しい。

「思ったんだけどさ…ここはどこもご当地色がないよね」

「そうだね。画一的な都市計画の賜物ってね」

情報統制、都市計画。あらゆるところにテングルの影が見え隠れする。それでも、往来を行く人々は穏やかな表情で、存分に自由を享受できないことに不満をもらす者はいない。いや、比較対象がないのだから自分達が不自由だと思うこともない。

「早く終わらせましょう」

黒いローブに身を包んだテセアラが急かす。どういった風の吹き回しか彼女は今日に限って、テングル教徒の格好に身をやつし、自分達について来たのだ。兄に聞くといよいよだからね、と曖昧な答えが返ってきただけだった。

「了解。しかしどいつもこいつも行ったり来たり…働かなくていいのか?」

「お兄ちゃんがそれを言う?」

労働力の低さはアジアでも五本の指に入ると日頃豪語している兄には言われたくないだろう。

「よし!終わった」

兄が嬉しそうに両手を天に突き上げた。


作戦の概要はこうだった。

まず天野との交友がある仁と奈々華が、テングル教会本部奥まで進み、天野と合流。例の秘密兵器を使って姿を消したテセアラは天野暗殺の決定的証拠を掴んで、三人に合流。

仁が暗殺首謀者、木原きはらという男を捕まえる。そしてその犯行の全容を暴露する。


「何か随分簡単そうだけど、大丈夫なの?」

緊張感のない兄の説明のせいもあってか、いまいち精確さに欠けるような気がした。

「そうですね。一応抜かりはないはずです」

「もっとしっかりしろ。君にかかっていると言っても過言じゃないんだよ」

兄がふざけた調子で、奈々華を指差す。

「私?」

「そう、君はテングル教会次期教祖のテストを受けに来たってことになるんだから、相手を油断させる大事な役目なんだ」

「はい?」

私が?次期教祖?相手を油断させる?


「どうしてそういう大切なこと黙ってるかな?」

言葉ほどには責める気は起きない。本当に反省しているのかしょんぼりとした様子で、上目遣いに自分を見上げる兄が可愛くて今すぐ撫で回したいくらいだ。

「だって言いにくいだろ?」

全く。連れて来ておいて今更遠慮してもしょうがないだろうに。恐らく自分が協力を拒めば、兄は強要することもなく、少々無茶でも強行突破して天野を助けるつもりだったのだろう。

「私からもその件については謝ります」

奈々華が本気で怒っているとでも思ったのか、テセアラが深々と頭を下げた。

その姿が可笑しくて、兄と奈々華は二人して笑ってしまった。

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