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最強魔法使い、クビにされる。⑥

「この後どうする予定なの?」

「決まってる。この後すぐに探索者ギルドに行って登録するんだよ」


 ダンジョンに潜るには探索者ギルドで、探索者登録をする必要がある。

 ダンジョンの入り口を覆うように探索者ギルドの建物が立っているので探索者ギルドに登録せずに潜ることは不可能だ。


 登録といっても名前を登録するだけの簡単なものだ。

 それに、探索者ギルドの運営費は国から出されているらしく、特にお金を取られることはない。


 探索者ギルドの役割は、ダンジョンに潜る探索者の管理とダンジョンからモンスターが出てくるのを防ぐことだ。

 一番重要なのは魔物が出てくることを防ぐことなので、探索者の管理はそのついでだ。


 だから、登録料とかも特にかからない。

 その代わり、管理も適当で、ダンジョンに潜ったまま一ヶ月放置されるとかもあるらしい。


 ダンジョンから帰ってこない場合、その探索者は大体死んでいるので、そこまで問題にはならないが。


「もしかして、これからダンジョンに潜るつもりなの?」

「そのつもりだけど?」

「やめときなさい! 夜は人がいない分モンスターも多くなるのよ!」


 浅層や中層は日帰りで探索に行けるので、日中は人が多くて夜間は人が少ない。

 国立魔導士団などの組織もダンジョン内のモンスターの間引きをするのは昼だけだ。


 そのせいで昼と夜とではダンジョンの危険度は変わってしまう。


 どういう原理でモンスターが生まれるかはわかっていない。

 だが、発生速度は昼も夜も変わらないらしい。


 そのため、倒される数が少ない夜のほうが昼よりモンスターの数が増えるのだ。

 モンスターから得られるものもあるから、夜のほうが稼げるが、そんなことをする探索者はいない。


「それに、最初はパーティーメンバーを探すんでしょ? この時間からだと、見つからないわよ」

「それもそうか」


 キャサリンに装備とかを選んでもらっているうちに外は真っ暗になっている。

 これから探索者ギルドに行ってももう誰もいないだろう。


「……そういえば、ジン。今日はどこに泊まるの?」

「あ、宿もまだとってないな」


 魔導士団の寮を出てからまっすぐキャサリンのところに来た。

 だから、今日の宿はまだ決めていない。

 もうかなり遅い時間だが、この街にはかなりたくさんの探索者がいる。

 その辺のボロ宿なら空きがあるだろ。


 まあ、それでもできるだけ早くに宿を探した方がいいだろう。

 いい宿から埋まって行くはずだからな。


「じゃあ、今日はありがとう」

「気を付けてね」

「あぁ」


 俺は荷物をもって武器店を出る。

 キャサリンは店の入り口まで見送りに出てきてくれる。


 よく見ると、周りの店はもう店じまいしていた。

 おそらくキャサリンの武器店も普段なら既に閉店している時間なのだろう。

 どうやら、俺のためにキャサリンは残業してくれたようだ。


 俺は感謝の気持ちを持ちながら手を振ってキャサリンの武器店を後にした。


○○○


 キャサリンはジンの背中が見えなくなるまで手を振り続けた。


「じゃあ、ちゃっちゃと店じまいしましょうか」


 そして、ジンの姿が見えなくなると閉店の準備を始めた。

 閉店準備といっても、ジンが来る前に売り上げの計算などの難しい作業は終わらせていたので、すぐに終わるような簡単な作業しか残っていない。


「……いいパーティーメンバーに出会えればいいんだけど」


 店じまいをしながらも気になるのはやはりジンのことだ。


 ジンはダンジョンに潜ったことはあまりないらしい。


 国立魔導師団では入隊して一年くらいでダンジョンに潜り始めるそうだ。

 だが、支部長が変わったせいでジンは雑用ばかりしかさせてもらえないと前に愚痴っていた。


 潜ったのも支部長が変わるまでに数回、しかも、新人として浅層のかなり浅い部分だといっていた。

 浅層の浅い部分ではジンの敵になるモンスターはいなかっただろう。


 それでは、ダンジョンの怖さはわからない。

 ダンジョンは魔界に繋がっていて、深い階層に行けば行くほどモンスターは強くなって行くのだ。


 浅層と中層ではモンスターの強さが千倍は違う。

 モンスターの強さ以外にも浅層の奥に行けばトラップなんかも出てくる。


 単純な強さだけではダンジョンは攻略できない。

 ダンジョンの中ではパーティメンバーの力が不可欠なのだ。

 特にジンは抜けている部分もあるし、助けてもらわないと大怪我を負うかもしれない。


 ジンがどれだけ強くてもいいパーティーメンバーに出会えなければ中層に行くなど不可能だ。

 深層に潜るような探索者でも一人で中層に行ったりはしない。

 どんな事態に陥るか分からないからだ。


「うーん。でも、ジンは友達少ないのよねー」


 ジンは昔から人付き合いが苦手そうだった。

 友達はキャサリンと前に紹介してもらったレオナルドという人くらいしかいないそうだ。


 ジンは悪い奴ではないのだが、どうも他人に合わせるというのが苦手らしく、相手をよく怒らせてしまう。

 親しくなればジンの良さもわかるようになるのだが。


 ダンジョン探索は実力がものをいう世界だ。

 魔法使いであればある程度人付き合いが苦手でもパーティを組むことはできると思うが……。


「……明日様子を見て、ダメそうなら何人か声をかけてみようかしら」


 キャサリンの武具店を贔屓にしてくれている中層を探索する冒険者は少なくない。

 

 ジンも実力だけなら中層でも通用しそうだし、紹介だけならしてもいいだろう。

 紹介してもパーティを組んでもらえるかは分からないが。


 気づけばキャサリンは誰を紹介するべきか手を止めて考え込んでいた。

 次話は明日投稿予定です。


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