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日常系、時勢・時事問題のエッセイシリーズ

このアニメフィルムを作ったのは誰だぁ! ~まさかの藤子・F・不二雄先生における歴史的な発見か~

 仕事帰りの夜。


 突如として知り合いからツィッターのアドレスが送信される。

 どうせ例の爆発関係かなんかだろうと思ってみてみると、そこには妙な画像のツイートが。


 とある人間が自身の事務所の掃除をしていたところ、アニメフィルムが出てきたというのだ。

 詳しくは下記を見てほしい。

 https://twitter.com/kariko0505/status/1291163073093537797


 問題はこの作品である。

 一見すると手塚作品のようなオジサンキャラと一緒に見えるのは、どこかで見たようなロボットの見た目。


「すすめロボケットじゃんか!? 嘘だろ!?」


 流石に電車内だったので心の声で押しとどめたが、興奮は収まらなかった。

 ともすると漫画並びにアニメ史における偉大な発見の可能性があるからだ。


 一体どういうことかというと……

 一行で説明できる。


「かねてよりトキワ荘関係の研究者が長年噂していた藤子F作品の初アニメはオバQではなく、すすめロボケットだった」――という話を立証する幻のアニメが発掘されたかもしれない。


 つまりは、藤子F先生がまだ大規模なヒットを出しておらず、他のトキワ荘メンバーと異なり完全に羽ばたいていない状況で、まるで未来を見越したように商品化とアニメ化を同時に企画した人間が実在したのではないのかと同時に、オバQこそが初アニメだったという歴史的事実が覆るかもしれないということだ。


 オバQは合作だったことを考えると、とてつもない発見かもしれないのである。


 ではまず「すすめロボケット」について説明しよう。


 本作品は藤子不二雄名義による、藤子F先生単独執筆による連載作品としては三作目にあたる漫画である。


 当時は藤子不二雄名義でどちらも出していたが、後に藤子F先生が語るように、オバQと異なり合作ではない。


 つまり、正真正銘の藤子F先生の作品だ。


 内容としては当時としては実は案外珍しくないロボット物SF漫画。

 正義のヒーローともいえる主人公がロボットと共に活動する作品。


 ただし内容はフワっとしていてめちゃくちゃシリアスというわけでもなくギャグにも振り切れていない当時のSFとしてはやや珍しい作品だ。


 マイルドヒーローアニメと言えばいいのだろうか。

 パーマンに近い要素があるかもしれない。


 この作品についてだが、残念ながら当時の人気からいうと後の世において他作品に対して大きな影響を及ぼした作品ではないと言える一方で、本作品は藤子F作品としては非常に重要な要素を複数もつ。


 1つ、等身大のロボットが登場すること。

 2つ、等身大のロボットは意思を持っている自立型であること。(会話が可能)

 3つ、主人公はロボットと共に活動するが、お互いに助け合う展開が多々あり、お互いに信用しあっている友達であること。(主人公はロボットを物扱いしたりしない)


 特に当時として自立型等身大のロボットというのは漫画としてはさしてめずらしくない。

 そもそもが彼らの育ての親ともいえる手塚先生のアトムの例がある。


 しかし、等身大のロボットに搭乗するパターンというのは非常に珍しい。


 さらに言うと、それが自立型の意思を持つロボットというのは極めて珍しい。(意思があっても会話は出来ないパターンが多い)


 もっと言うと、そいつがロケットになったり車になったりロボットになったりして、主人公が搭乗できるのに意思を持っているというのは極めて珍しい。


 このあたりからすでに藤子ワールドというものは出来上がっていたのだというのは、すすめロボケットそのものを見てみればよくわかる。


 特に主人公が正義感溢れる男である一方で割とドジな点とか、同じく相棒のロボットが生真面目で常識がありそうなのにどこか抜けている点なんかは……


 後に国民的アニメになるアイツとアイツに通じるものがあり、原典の1つとも言われるわけだ。


 さて、重要なのはここからだ。


 じつはこの「すすめロボケット」……藤子先生関係のムック本では何度も「アニメ化の話があった」などといわれる、藤子先生七不思議的なものを持つ作品だったりするのだ。


 というのも、この作品連載時を前後して実は藤子先生は石ノ森先生やつのだじろう先生らと共にスタジオ・ゼロを立ち上げているわけなのだが……


 このスタジオは少し調べてみてもらえばわかる通り、アニメと漫画どちらも作っていたスタジオなのである。


 そして実はこのスタジオ・ゼロ、かなりの数のパイロットフィルムを作っていて、オバQ以外にも藤子作品のパイロットフィルムまたは短編作品を作っていたという話がかねてよりあり……


 それに連動するかのようにおもちゃ企画も各所で動いていたという話があった。


 ただし、それらは証明するフィルムもなければおもちゃも無いといった状況であり、多くの話は噂話の領域を超えなかったものの……


 ある作品についてだけ、試作品のソフビ人形が発見されているのである。


 それこそが「すすめロボケット」なのだ。


 当時スタジオ・ゼロの誰がそれを企画として持ち込み、どこが試作品を作ったかすらわかっていない。


 ただ、これが発見されてからもっぱら言われているのは「おもちゃの企画の先行なんてあるわけがない」ということだ。


 時代的に言って「放送と同時」か「放送よりやや遅れて」が当然の頃である。

 60年代だからね。


 つまり、パイロットフィルムか短編映画、どちらかがあったのではないかという噂は長年あった。


 そして前述のURLにあるのがまさに「おもちゃ企画と同時に存在した幻のスタジオ・ゼロのパイロットフィルム」ではないのかということだ。


 フィルムの画像をみた上で「オバケのQ太郎 - パイロットフィルム」で検索してほしい。

 恐らく映像を見ることができるだろう。


 するとどうだろう。

 どこかアメリカ風なオバQのパイロットフィルム映像が見えるはず。


 今回の映像を合わせてみてほしい。

 ものすごく似ていないか?


 いや、件のフィルムは間違いなくスタジオ・ゼロ作だ。

 私の目には間違いなくそう見える。

 偽物じゃない。


 鈴木伸一氏が関与したパイロットフィルムそのものに見える。


 となると問題は「どちらが先か」――である。


 オバQのパイロットフィルムはスタジオ・ゼロが黎明期の頃に作り上げ、アニメ化を模索して作り上げたもの。


 いわゆる「史上初の藤子作品のアニメ化」というのは、こういったマニア界隈の中では「パイロット版オバQ」だったのである。


 長年その認識だったのだ。


 しかしそれが引っくり返ったならばどうなる?

 史上初のアニメ化作品は合作のオバQではなく、藤子F先生単独だったということになる。


 でも仮に先に作ったのがこちらならばどうしてなのかという話になる。

 そこにはきちんとした背景事情があったのだ。


 実はオバQの場合は、ヒットになる前の段階からパイロット版を作っていた。


 ヒット作品を飛ばしてアニメ化するにあたり、事前にパイロットフィルムを作っていたわけだ。


 いわゆるアニメの持込という今では考えられない手法も、当時はアニメ制作手法が確立していなかったので存在した。


 漫画のようにパイロットフィルムを作って各所に持ち込んで企画を練り上げてーっていうのはルパン三世なども通った道なのである。


 だから「すすめロボケット」が作られていても全く不思議じゃない。


 でも、合作ではなくなぜ藤子F先生のものなのか……ということになる。


 ちなみにパイロット版がアメリカっぽいアニメにされているのは、手塚先生を超えてアメリカアニメ……すなわちディズニーなどを目指したから。


 これは1996年に放送された特番にて藤子A先生がそう発言しており、同時にパイロットフィルムはかなり作っていたことを話されている。


 よって本作品は間違いなくスタジオ・ゼロのとてつもない遺産と思われるが……


 問題はここから。


 実はすすめロボケットに関しては、オバQ放送以降にグッズ展開がされており、お面や面子などが作られていた事実がある。


 これはオバQがヒットしたので「こいつもどうだ!」というような流れがあってのこと。


 版権管理上でもスタジオ・ゼロと藤子プロダクションが併設されていて管理できたのでそういう展開が楽だったのだという。


 となると、本作は初代オバQヒット後に「流れの勢いに任せて」作られた可能性もある。


 考えられる可能性はこれらだ。


 ・オバQの売り上げがすさまじいので、その勢いでオバQとは同じないし別の放送局に優秀な藤子作品を売り込もうとパイロットフィルムを作った。

 ・なんらかの理由で短編映画として作られていたがお蔵入りになった。


 ――が、私はこれを否定したい。


 私の所有するムック本にはテレビで放映されたF先生によるコメントが挿入されたものもある。


 その中で彼は「パイロットフィルムについては殆ど記憶に無い」とした上で「~(中略)国産で生活ギャグ漫画のアニメ化ってのはなかったわけですよ……こっちとしても手探りで見当がつかなくて普通の雑誌に描いた漫画をそのまま動かしてそのままセリフを喋らせて……それでギャグがギャグになるのかどうか。ついやっぱり、イメージとしまして、向こうのアメリカ漫画みたいな感じが雰囲気に入っちゃったんですね。で、これはこれでね、結局空振りにおわっちゃったんですよ~略」


 ――このように、他ならぬ藤子F先生がテレビ番組も含めてこう述べているのだ。


 そう、パイロットフィルムは空振りに終わったのは事実。

 そしてもう1つはアメリカ漫画みたいな感じが雰囲気に入ったという事実。


 そしてスタジオ・ゼロはギャグ漫画のアニメ化を目指していたので、1966年のおそ松君以降はそういうものを一切作らず、オバQのTVアニメが作られた1965年以降はまともにパイロットフィルムは作っていない。


 その頃にはおそ松君をもう作り始めている。

 自分達がやりたかったギャグ漫画のアニメ化を。


 わずか数年の期間しかないが、オバQ放送の後はパイロットフィルムなんて作らずにやってきたので、1963年~1965のわずか2年の間に存在していたと言って過言ではない。


 つまりこの2年でどちらが先なのかを考えるべきなのだ。


 オバQパイロット版は本当にギャグっぽさがない日常作品で、ともすれば「日本アニメ史上初の日常物」といえなくも無いのだが……


 それと同時に、すすめロボケットが存在していたと。


 そして連載はオバQより前にされていたのが「すすめロボケット」である。


 となると……放映されてないだけで、オバQより最初に作られたのはこちらではないのかということだ。


 ようは筆者は、下記の説を提唱したいわけである。


 ・スタジオ・ゼロはオバQのパイロットフィルムを作る前の段階で、藤子F先生がアニメに興味を示していたので共同制作する意味で、藤子F先生も参加する形で自身の漫画を母体にパイロットフィルムとして「すすめロボケット」を作っていた。


 放映された藤子作品の初のアニメが「オバQ」だとするならば、幻の藤子F史上初のアニメ作品こそが「パイロット版すすめロボケット」なのではないかと筆者は考えているのだ。


 そうすれば長年の謎のいくつもが解ける。


 オバQのグッズ展開が異様に早く、当初から基盤が出来上がっていたとしか思えない速度でブーム化できたこととか……


 "何故か"「すすめロボケット」だけがオバQ放送前後で小規模ながらグッズ展開された事実とか。


 こういう長年の謎が解ける歴史的発見なのではないか。


 それと同時に、誰でもいいから人脈ある人が藤子A先生にこの件について報告してほしい。


 そしてフィルムについて是非公開してほしい。


 私は見たいんだ。

 パイロット版には音声もついていたはずだが、ロボケットの声はどんなイメージだったのか。


 あの、藤子ワールド特有の少し抜けたようなキャラを想起させる声だったのだとしたら……

 先生は猫ロボットについて偶然浮かんできたというが、それは外見だけで要素は大昔から自らの内にあったということになる。


 そういう夢を抱いてしまうのだ。

 私のような漫画・アニメ好きというのは。


 多くのムック本にて噂されたすすめロボケットの白黒アニメ。


 ついにその姿を現した存在は……果たして我々が見ることが出来るのだろうか。


 今後の動きに注目したい。


 真面目に本当に藤子プロと動いてほしいなあ……

 少なくても藤子A先生の耳に入ってほしいなあ……

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― 新着の感想 ―
[一言] ロボケットってドラえもん本編でも未来で出木杉の息子が作ってましたね、確か。
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