花火と南瓜とガラスの靴
「文月、聞こえない」
彼は大きめの声で私に伝えた。
打ち上げられた花火の音は私の声をかき消し、彼と初めて会った時に私が団扇に描いたかぼちゃの絵を照らした。
シンデレラが好きだった私は、その日どうしてもこの絵が描きたかった。
今思うと、シンデレラに出てくるかぼちゃはおそらくpumpkinで、私が描いたのはsquashだけど。…お腹が空いてたのかな。
「それならガラスの靴を描けば良かったのに」
「いいの。結果的にこのかぼちゃが、私達を結びつけてくれたんだから。あなたの手料理、美味しかったよ」
「腹が減ってたのかと思ってさ」
そう言った彼は笑っていた。
「あっちで話そう」
彼との一生をかけた私の気持ち、今度はちゃんと届きますように。