埃が溜まりすぎている
ユリウスは掃除をしていた。頭と口に布を巻き、竹箒で床を掃いていた。この魔女の家、数千年ほったらかされていたので、埃がすごいのである。
「けほっ、けほっ」
咳混んでいるのは魔女のヴィクトリアである。魔法で掃除をしないのかと聞いたが、ユリウスと一緒にやりたいとの返事で、魔法なしで掃除を手伝ってくれている。別にそこまで合わしてくれなくてもとユリウスは断ったが、一緒に何かをするということが重要らしく、ヴィクトリアに押し切られてしまった。
ヴィクトリアは白いエプロン姿に、三角巾をつけている。ヴェーブしている長い銀髪はポニーテールに括っていて、可愛らしい。というか可愛すぎた。彼女が咳き込むたびに、ポニーテールと溢れんばかりの果実が揺れていて、迫力がある。
ただ魔法なしの掃除には慣れてないらしい。咳き込んでいるヴィクトリアを見ると、体に悪そうだから辞めてほしいと思った。ユリウスはこういった埃には慣れているので、特に問題はない。
ヴィクトリアの家は小さく、二階建てであった。二階は魔女の研究室で、特別な空間らしく、立入禁止らしい。詳しく聞くと、魔法が使えない内はユリウスの身が危険だから辞めた方がいいとのことだった。
居住区は一階だけであり、リビングと台所、ベッドルームがあるだけの簡素さであった。おかげで掃除もすぐに終わる。掃除が終わればお茶が飲みたくなるが、そういえばあるのだろうか。
「ヴィカ、掃除も一段落ついた。お茶でもあれば淹れるんだが、あるのかな?」
「あるにはあるのだけれも、古いから辞めておいた方がいいわ」
そう、ヴィクトリアの家は何もない。数千年も開けていたらしいので当然だが、嗜好品もそうだ。これは買い出しに行く必要がある。うん、折角だしな。街にでもでかけるか。ユリウスがヴィクトリアに提案するとヴィクトリアは可愛らしい笑みを浮かべた。
「それは素晴らしい考えね。早速行きましょう!」
ヴィクトリアが何か魔法を呟くと、茶と黒基調のローブに変わった。ヴィクトリアの体をすっぽりと覆い、少し野暮ったい。まぁ隠しきれてないパーツもあるが。さらにフードが付いており、顔を隠せるようなデザインである。一般的な魔法でこの様な真似は出来ないはずだが、そこは魔滅の魔女といった所なのだろう。すごいものである。
「地味にしないと街中で目立つからね。可愛い服もあるから、それは今度ね。さぁ、貴方も着替えて」
そう言って俺の服を叩くと、ヴィクトリアの魔法だろう。地味めな村人服へと着替えさせられた。絶妙にデザインが古く、ダサイ。センスの無さに絶望するが、ヴィクトリアの基準だとそうなるのだろう。
「まぁまぁね。お似合いよ。さぁ、転移するわよ。私の手を握って」
ヴィクトリアが褒めてくれるが、似合っているとはいいがたい。村人Bって感じである。手を伸ばしてヴィクトリアの手を握る。前も思ったことだがやはり柔らかい。それに銀髪から柔らかな匂いがする。少し埃っぽいけどそれがまた現実感があって良かった。
そしてヒュイッという音とともに風景が変わり、気が付けば街の外にいた。