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落とし物


 ユリウスは街の清掃に精を出していた。乱雑と捨てられたゴミを拾い、好きなように伸びた雑草を抜いていた。


 ユリウスは、仕事に対して真摯だった。手を抜くこともなく、誰もが掃除しないような道端も清掃していた。だからと言って、人に認められることはない。

 

 気が付けば日が暮れ始めたので、仕事を切り上げようとしたその時、ユリウスは金貨袋を見つけた。


 落とし物だ。


 ユリウスは袋の紐を解いて覗いてみた。そこには白金貨と呼ばれる、もっとも高価な金貨がジャラジャラと入れられていた。白金貨一枚でユリウスは三年は暮らすことができる。よほど裕福なものの財布だろう。


 ユリウスは眩暈がした。これをひっそりと持って帰り、別の街へ逃げれば、今までとは比べものにならないような人生を送ることができる。一生を生きるのに余りある金額である。

 

 振り返ればユリウスは不幸な人生であった。


 ◇◇◇


 ユリウスは名家の生まれだった。その才能から将来を期待され、両親から多大な愛情を受けて育った。そのような豊かな環境は、ユリウスを素直で親切な好青年へと育んでいた。


 しかし……


 「おまえは私の子供ではない、出ていけ! ユリウスは死んだ! おまえの魂は、魔力は、欠けている。誰が私のユリウスを奪ったのだ!」


 ユリウスは父から暴言を吐かれ、追い出されていた。父曰く、ユリウスはユリウスでないらしかった。神童ユリウスが持っていたはずの魂は欠け、魔力は無くなっていた。それは別人と同義であった。

 

 父にとって信じがたいことであり、子供の魂の形が変わってしまうなど前代未聞であった。だから、父はユリウスがユリウスでないと結論づけて、ユリウスを追い出したのだった。

 

 ユリウスにとって、父の理論は理解できた。魂が欠け、力を失ったユリウスは、ユリウスと同じ形をしているだけで、本質的にユリウスでないということであった。


 ユリウスはそれを証明するための魂が欠けていたので仕方ないかと納得し、愛すべき家族から追い出されたのだった。


 ◇◇◇


 「あー、いやなぁ、神様は見てるっていうけど、これはなぁ。まぁ届けるか」


 ユリウスは少し迷った後、それを遺失物として届け出ることにした。

 ユリウスは街の端まで歩き、それをガードと呼ばれる街の警備人に手渡した。

 ガードは、街を守る守護者であり門番であった。勿論、落とし物をこうやって受け取ってくれたりもする。

 

 ガードは強く驚きながらも、それを受け取った。ユリウスは、一つ良い事をしたと思い、また酒場へ向かうのだった。

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