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実は恥ずかしいこと

 ユリウスは魔力の流れを感じ取るために強く集中してしまい、気が付けば日が暮れていた。


 丁度集中も切れてしまい、キリも良かったので終わりにしようとヴィクトリアに提案した。

 ヴィクトリアは変わらず覆いかぶさる姿勢のままだ。


 「ヴィカ、だいたい分かってきたよ。これをどれくらいやればいいんだい?」


 「毎日やればいいと思うわ。慣れてきたら少しずつ魂の欠片を返しますわ」


 ユリウスは、神童と呼ばれた経験があっただけあり、集中力といった魂以外の才能にもたけていた。

 努力する才能と言い換えてもいい。


 その集中力によってヴィクトリアの禁断の感触から逃れていたが、鼻腔からヴィクトリアの酸っぱい匂いを感じて、ユリウスは慌てていた。


 「ん”っ、もういいんじゃないかな。というかちょっと体勢が恥ずかしいかな。この修行、他に方法はないの?」


 ユリウスとしては、正直な所、非常に惜しい感触だった。

 だがしかし、そのような邪念を持ちたくなかったのでヴィクトリアに提案した。


 「それがねぇ。魔力を優しく送り込むために、ユリウスに密着しなければならないの。この方法を辞めるなら、しょ、正面から抱き合うことに、なるわね……」



 ヴィクトリアはそう呟き、少し台詞をかんだ。ヴィクトリアとしては、魔女の矜持(ヴィクトリアが勝手に思っているものだが)として、大人のお姉さん的な態度を出したかった。


 噛んでしまうと台無しであるのだが、ユリウスも動揺しているので問題なかったが。


 「しょ、正面!? それは、ちょっと、早い……かな。し、しばらくは後ろからで……」


 息を大きく吸って分かりやすい表情を作るユリウスはかろうじてヴィクトリアにそれを伝え、魔女は内心安堵した。

 魔女のプライドは守られたのだ。


 「そういうことですわ。慣れたら正面からでも……。とにかく、明日もやりましょうね」


 お互いそう確認し、ヴィクトリアがユリウスから離れた。

 正面に向き合うと、ユリウスはとんでもないことに気付く。


 ヴィクトリアは長時間ユリウスに抱き着いていたことは間違いない。

 そして魔力を優しく送るという繊細な作業をしながらだ。


 つまるところ長時間の間くっついていたせいか、ヴィクトリアの衣服は汗で濡れていた。

 ユリウスも同様であるが、ヴィクトリアの場合は話が違う。


 衣服はヴィクトリアのたっぷり詰まったお肉にビタリと張り付き、その女性的なプロポーションを凶悪に主張していた。


 「ヴィ、ヴィカ。衣服を着替えてくるよ」


 ユリウスは何とかそう誤魔化して家に戻ろうとした。

 ユリウスにしては気を利かせた言葉だったので、ヴィクトリアは最初は気付かなかった。


 「あら、そんなに疲れたのかしら……。確かに集中はしていたけど……」


 ヴィクトリアはそう思案して、ふと目線を下にやった。

 ヴィクトリアは、ユリウスが何を気にして家に戻ったのか気付き、そして急激に恥ずかしくなった。 


 「あっ……。私ってば、大胆なことを。これは……、やっちゃったわね……」


 冷静に思い返すと、今日一日は大変大胆にやってしまった気がした。

 魔力に慣れるためとはいえ、言い換えれば後ろから長時間抱き着いただけであり、しかも汗もびっしょりと来ている。


 それも相手はユリウス。ヴィクトリアにとって大切な相手である。


 「魔女というより、痴女ね……」


 ヴィクトリアは、改めて恥ずかしくなった。しかし明日も同じようにすると言ってしまったことまで思い出した。


 「私、明日は耐えれるかしら。今日は気付かなかったけど、あんな大胆な事を毎日だなんて」


 頬を赤く染めて、ユリウスの後を追いかけるように、ヴィクトリアも家に戻った。


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