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前世からのー2


昇降口で舞花と別れた俺は自教室へと向かう。


教室に入ると、数人の女子と仲睦まじげに話をしていたサラがこちらに気付き、小さく手を振ってくる。それに他の女子は驚きの声を上げるが、サラは恥ずかしそうに昨日親切にしてくれたのと誤魔化していた。


俺はそれを横目に見ながら自分の席に着くと、昨日の彼女の発言を考える。


サラは俺を前世の旦那だと言った。


前世とはこれまたきな臭い話ではあるのだが、彼女の言い分を聞いたところ、どうやら俺は前世で勇者であったらしい。最近流行りの異世界であろうか。そんなファンタジックな事があれば人生苦労はしない。


ともあれ、俺はその世界の勇者で魔王討伐後、勇者パーティの副リーダーであり、俺の右腕たる存在であったサラと結婚して末長く幸せに暮らしたのだと言う。


しかしだ、これが本当であったとしても、今世まで共に過ごすと言う必要性までは感じない訳で、その上彼女の言葉をまったく全て信じることも出来るはずがなく、彼女に何を言うわけでもなく、「そうなんだ」と。


自分でもコミュ力のカケラすら見られないこの返しはまずいと思っている。


またサラもそんな簡単に信じてもらえるなんてはなから思っていなかったのだろう。

彼女は俺をじっとその碧眼で見据えて言うのだ。


『たとえ私の言葉が嘘でも、貴方を慕っている気持ちは本物ですから』


何度練習したのだろうか、先程までのたどたどしさなど微塵も感じられなかった。


それで俺は確信した。彼女の言ってる事は本当だと。


(だけど、そうは言ってもな……)


「あ…あの!」


唐突にかけられた声に身体がビクッと跳ね上がる。


「サプライズするつもりはなかったですが……」


顔をあげるとサラがこちらを申し訳なさそうに覗き込んでいた。


「いや、考え事してたから、サラさんは悪くないよ。それで何か用?」


「はい……えっと……ランチご一緒しませんか?」


「お昼ご飯を?」


サラはこくんと頷く。


昼は基本的には舞花と一緒に食べている。舞花が友達と一緒に食べるとか気まぐれな事を言わない限りだ。まあそんな事は一週間に一回あるかないか程度なのだが。


舞花とサラを合わせるのはいささか怖いところがあるので出来るだけ避けたいわけだが……


「ダメでしょうか?」


サラは不安そうな上目遣いでこちらを見てくる。

男ならば、このように誘われて断れと言う方が無理でなかろうか。


「うん、わかったよ」


「リアリ!?やったー!!」


と少々子供っぽく跳ねるサラ。しっかりとした雰囲気のある娘なので、こう言うところには一種のギャップ萌えを感じる。


やはり海外で育っただけあって、異性に対する立ち回りがうまいなぁと一人でしみじみ思っていると、サラはではまた後でと、自分の席に戻っていった。俺も小さく手を振る。


また一人になった俺は、舞花に対する言い訳を考えて練り上げるとメールを送ったのだった。


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