その3
「ごめ・・・ホント・・・ごめん」
「・・・」
何で?・・・オレ、何もしてない・・・っつかそもそもオレじゃ・・・オレは田町を見上げる。顔を真っ赤にして俯く田町。
やべぇ・・・触れたい。田町に触れたい。あいつをイかせたい。オレが田町と付き合ってたときは何度か触らせて貰ったこともあった。でも、基本的に田町がオレを気持ちよくしてくれて終わり。挿入なんかは一度もナシ。オレから触れたいだなんて思ったこともなかったけど・・・
や、とりあえず包帯巻ききろう。もし血が止まらなかったら大先生に頼むしかないけど、多分コレで血も止まるとオレは思う。
包帯を巻ききると田町は静かに足をベッドから下ろすと立ち上がる。
「どこ行くんだよ?」
「・・・うん・・・隣・・・」
さっきよりも気力が感じられない声。オレで勃ったのがそんなにイヤだったのか?ショックだったのか?
どうしたらイイんだよっ!オレはお前に触れたくてホントはお前に触れて欲しいのに・・・
「ごめんね。ボクのこともっと嫌いになったでしょ」
「は?」
「・・・ごめんね。でも、心配だからもう少しゆっくりしてから帰るとイイよ。夕飯は優一くんの分もお袋に頼んでおくから・・・」
「おいっ!喋るときはオレの目見て喋れっ!」
オレに目も合わせようとしない田町に心底腹が立った。怒鳴っても振り返らないこいつがムカついた。
腹が立って腹が立って・・・そしてどうしようもなく切なくて悲しかった。
「気持ち悪いでしょ?ボクのこと」
「・・・」
「っていうか・・・ボク、耐えられそうになかったから・・・」
「そんなにオレのことがイヤなのか?子供の頃は『ユウくん大好き』とか優しくしといてっ!!」
「?!そんなわけっ!!!・・・優一くん・・・?」
オレは泣きたくないのに流れる涙にムカついた。オレの顔を見て驚いてる田町をからかってやりたいのにからかう言葉が出てこないのにもムカついた。
「お前なんか嫌いだっ!!」
「・・・うん・・・」
「嫌いだっ!!!嫌いなんだっ!!!」
「判ってる・・・だからボクは隣の部屋に・・・」
「オレがお前を大好きだって気付かないお前なんて嫌いだっ!!!!」
田町の下を向いたままの顔が勢いよく上げられた。そして田町だとは思えないスピードでオレの側に跪いた。慰めの言葉ぐらいくれるんだろうか?今日は特別に抱きしめてくれたりはするんだろうか?
キス・・・いや、オレは風邪引きだからそれはムリだよな・・・高望みしすぎ?いや・・・もう・・・いい加減惚れ続けるのも疲れたんだ。だから記念に・・・告白頑張ったご褒美に抱きしめるぐらいしてくれないかな・・・
「優一くん・・・ホント?」
「バカ田町っ!オレはどうしたらいいんだよっ!子供しか好きになれないお前に好きになって貰うにはどうしたらいいんだよっ!どうしたら前みたいにオレのこと好きになるんだよっ!!」
「・・・触れてもイイの?」
「ヤだっ!!!オレに触るなっ!!!」
田町は出した手を再び下ろすとオレを真っ直ぐ見つめる。
この目・・・だよ・・・ずっとオレだけを見てて欲しかった目は・・・
「ボクのこと好きなの?ホント?いつから?」
「っ・・・ずっとだよっ!お前がもう一緒にいられないなんて言ってもどうしたらいいのか判らなくてずっと引き摺ってんだよっ!!このバカヤロウ!」
「・・・優一くん・・・やっぱり触ってイイ?」
「イヤだっ!」
触れられたら溢れちゃう。きっとオレは田町を強姦・・・ん?オレが挿れられる場合でも強姦?まぁ、イイ。襲うことは確定だ。
・・・ダメだって言ってるのに田町はそっとオレを抱きしめてくれる。こいつ震えてる。イヤイヤなのか?
「・・・ごめん。ボクも我慢できなくて触っちゃった」
「ぇ?」
「大好きだよ。優一くん・・・子供好きだとかなんか優一くん勘違いしてるけどボクが好きなのは優一くんだけだよ」
「でもっ!!」
「・・・どんどん色っぽくなる優一くんにいつまで理性がもつか自信がなかったんだよ。だから・・・」