その2
ふかふか・・・イイ匂い・・・この匂いはオレの好きな・・・
「?!」
目を覚ますと見たことのある・・・けれど最近では馴染みのなかった風景。っつかオレ待合室に・・・いたよな・・・なんで・・・あいつの・・・部屋にっ?!
ガチャ・・・
「・・・」
「っ!!!!!お・・・起きた!?お腹減ってる!?」
風呂でも入ってきたのか上半身裸の田町が部屋へ入って来るなりそうやってテンパってるんだ。ホントにコイツオレより一回りも年上なのかよ・・・
「お腹空いてるならボク・・・作るよ?あ・・・の・・・おかゆとかっ」
「・・・てめぇが作るのかよっ?じゃあいらねぇ」
「っ・・・あの・・・ボク自信あるよ?おかゆぐらいなら」
「変なモン喰わされたらたまったもんじゃねぇし」
「・・・」
田町は黙るとオレの顔を恨めしそうに見てからタンスを開ける。そして着替えを手にすると何故か再び出て行った。なんだよあいつ。っていうかなんでオレ田町の部屋で寝かされてるんだよ!誠二は・・・誠二は・・・あいつに変なことされてねぇだろうなっ!!!
「田町ーっ!!!」
ガシャンガチャガターンッ
部屋の外で何かを落とす音や倒す音が聞こえてから廊下を走る音が聞こえて田町が飛び込んでくる。
「どうした!?」
「・・・誠二はどこだ?」
「あぁ、誠二くんは親父とお袋の所・・・今多分お昼ご飯食べたと思う。・・・ごめん」
「あぁん?」
「・・・優一くんも熱高くて・・・解熱剤入れたらすごくよく寝てたから・・・お昼お袋の食べたかったよね?」
田町はしょげたような顔をしてオレを見つめる。田町のおばさんが作るご飯は絶品だ。ホントに美味しい。母親の手料理なんて殆ど食べたことがないオレがおばさんの料理が好きなことを田町はよく知ってた。
「別に・・・オレ、帰る。誠二にはおばさんの夕飯も食べさせて栄養つけてやって」
「ちょ・・・ちょっと待って・・・っと・・・触らないからっ!もう少し休んで行ってよ?」
「・・・お前足・・・」
「ん?足?・・・!!!うわぁっ!なんだこれー!!」
田町の足下に血溜まりが出来ていた。あぁ・・・さっき何か落としたときに尖ったもの踏んだなこいつ
「痛くねぇの?」
「ん・・・気付いたら痛い」
「血、拭いてやろうか?」
「え・・・?」
「足の裏、お前体硬いから上手く拭いたり見たり消毒したり出来ないだろ?」
田町が生唾を飲み込む音が離れているのに響いた。田町は子供しか愛せない。だからオレはフラれたわけだ。でも、オレは・・・
実はずっとずっと田町のことを引き摺ってる。黙ってればイイ男なんだ。ロリコンじゃなかったらホントにイイ男なんだ。
オレは触れたい。でも触れられたくない。ホントは優しくしたい。でも優しくされたくない。
「・・・ホント?」
「ん?」
「優一くん・・・ボクのこと・・・嫌いでしょ?」
「・・・そうだな・・・でもケガぐらいは診てやれるよ。っつかどっちが医者だかわかんねぇ会話だな・・・」
「・・・うん」
田町は押し入れから救急箱を取り出すとベッドの上にタオルを敷いてからイスに座って足をタオルの上に載せた。うぇぇー・・・すっげぇ血!痛そうなのに・・・オレが名前呼んで焦らせたかなぁ・・・
「っ・・・」
「痛かったか?」
「大丈夫・・・何か刺さってる?」
「んー・・・刺さってはない。穴開いてるけど」
「そっか・・・何が刺さったんだろ・・・」
オレたちの間に会話なんて存在しない。あのときから存在しない。オレの中学卒業式から・・・
「も・・・イイ・・・ありがと!」
「ちょ・・・まだ包帯」
「いや・・・もう・・・イイからっ!」
田町はオレの腕を振り払って立ち上がろうとする。なんだよ・・・子供じゃないオレはイヤだってことか!そんなにイヤなのか・・・くそっ
「田町っ!」
「はいっ!」
「座れ」
オレは子供じゃなくなってからも今まで通りオレが命令すれば従う田町だってことも知ってる。叱られる子供のように泣きそうな顔をして座る田町。なんだよ・・・オレ・・・悪いコトしてるみたいじゃねぇか・・・
「優一くん・・・ごめん・・・」
「はぁ?」
よく見ると泣いてるのかこいつ?!いや・・・赤くなってるだけ?!・・・って・・・はぁぁぁっ?!何で・・・何でコイツ・・・
勃ってんの!?