崩御
何が起きたのか?
何もわからなかった。
気がついてたら 有力者は倒れていた。
気がついてたら クラスのみんなが私を見ていた。
恐怖と憎悪の入り混じった目で。
「涼子!大丈夫?!しっかりして!」
有力者の取り巻きが急いで駆け寄って その名を叫んでいた。
あぁ、この有力者は涼子さんっていうんだ。
この状況なのに 妙に冷静な私がただただぽつんと立っていた。
まるで、他人事のように ぽけっとしている私にその取り巻きが近づき、平手打ちをしてきた。
乾いた音が 湿った体育館の中に響いた。
でも痛くなかった。
頬をぶたれたのに
体ごと倒れたのに。
止める先生の手を振り払って そのひとは
叫んだ。
「てめぇわざとだろ!まじふざけんな!涼子に謝れよ!ほら!」
胸ぐらを掴まれ、無理やり私の体を起こし、涼子という人の方に体を向けさせられた。
涼子さんは 私を睨みつけていた。
憎しみが溢れんばかりのその瞳は
もはや人間のものではないと言っていい位だった。
「ブ チ コ ロ ス」
そう言っていたように見えた。
そのあと、先生や他の生徒の手によって、
涼子さんは運ばれて行った。
周りには私を突き刺すような冷たい目線。
囲っているのは私を睨みつけて罵倒する取り巻き。
一番遠くにいたのは 愛弓。
ただ、怯えるその目が一番遠くに見えた。
こんなときこそ、一番近くにいて欲しいのに。。。