鬱屈
いそいそと着替える準備を始めつつ
隣の席の女の子に目をやるとすでにその体は 女 の体だった。凹凸のはっきりしたボディラインに目を奪われつつ、いけないいけない と
自分自身を急かしつつ、体操服に着替えた。
この女の子に比べたら 私の体はまだ子供だ。
だって まだ胸もないし、お腹だって寸胴だ。
神様って不公平ね。
なんとなく ねたみつつ、愛弓の席にいった。
「愛弓、もー着替え終わったー?」
愛弓はニコッと笑って うん と返事をした。
「「じゃ、いこっか」」
はもったその言葉の響きは微妙に違ったけど
それもまたいつも通りだった。
じめっとした 体育館に入ると 嫌な汗をかいた。
私はこの時期の体育館が大嫌いだ。暑いし、臭いし、床はいつもより汚いし 全てにおいて最悪だった。
整列させられるとき、とても窮屈な感じがした。
あぁ、めんどくさい
私はこんなことをするために、朝早起きしていつもこんな檻のなかに自ら行くんだ。
まるで家畜だ。
整列させられたあと、先生は何かいってた。
興味がなさすぎて何もわからない。
とりあえずみんなが走り始めたので、走り始めた。
みんな、めんどくさい とか だるい とか
言いつつ走ってたが、その割りには楽しそうだったのが。いつも不思議だった。
本当は楽しい というのを ひた隠しにしているようだった。
たしかに表面ではめんどくさい って気持ちに同調してないと 何こいつ。と思われてしまうのだから 無理はない。
学校って そういうところだから。
同調してないと 浮いてしまう。
一度でも浮いてしまったら、浮きっぱなし
下手したらいじめられる。
そんな面倒な 檻のようなところなのだ。
走りおわると、先生は
また並べ!と叫び
ドッヂボールのルールを説明しはじめた。
だるー、めんどくさいー
そう言いながら 準備するみんなが
やっぱりめんどくさそうには 見えなかった。
チームわけをしたら、みんな所定の位置にいき、ピーっという笛とともに ゲームは始まった。
ドッヂボールでボールをもってぶつける人は何故かいつも決まっている。
誰が、と決めたわけでもないのに 決まっている。そしてそれは大抵、クラスの有力者だということに私は気づいていた。
とにかく、痛い思いはしたくないから
いつも当たらないように頑張ってみる。
ボールとって!とか聞こえるけど 必死な私は逃げ惑うばかり。
そんな私にイライラする クラスの"有力者"が
私をにらみつつ、ボールをとって相手チームに投げ続ける。
あぁ、嫌だ 本当に 嫌だ。
コンナコトスルタメニ イキテイルワケジャナイ
イヤだ イヤダイヤダイヤダイヤダ!!!
ずっと私を攻撃しようとしてくるボールをよけては ずっとそうこころの中で叫んでいた。
そして遂に、ボールをあてられしまった。
しかもお腹 急所だったためか ひどいダメージを負った。
「ナイス!私が投げるからこっちパスして!」
有力者がそう叫んでたので 言われたとおり
投げた。しかし、いつも逃げるばかりで相手にボールをなげることがなかったせいか、力加減がわからず、思いっきり投げてしまった。
「はいっ!」
と叫んでパスした瞬間、有力者は床に叩きつけられた。
その瞬間 空気は凍った。まるでスローモーションのように 有力者は倒れていって 周りはムンクの叫びのような顔をしていた。そのあと
周りは私を鬼のような目で睨みつけてきた。
愛弓を除いて。