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ある森の奥に、変わり者の魔女が暮らしていた。魔女のことは人々の間で噂にはなっていたが、あまりに入り組んだ場所に住んでいたため、魔法使いや鬼の友人が十年に一度か二度来る他は、誰も訪ねて来なかった。
だから魔女は、ある夜こんな声を聞いて耳を疑った。
「お兄ちゃん、見て! この家お菓子でできてる!」
「本当だ……お菓子でできてるね。少し食べたいな」
(私の渾身の作を食べたいだって? 冗談じゃない)
「どうしたんだい? お腹が空いているなら、中に食べ物があるよ」
家を壊されたくない思いと、ほんの少しの親切心から、魔女は子供達を家に招き入れた。魔女には、子供達が少し笑ったように見えた。
「ありがとう、おばさん!」
「パンはいかが?」
「いただきます。おいしい!」
「スープもあるよ」
「おいしい!」
「シチューもどうだい?」
「おいしい!」
久しぶりに人に会った喜びと、お腹を空かせた子供達の表情に負けて、魔女はあるだけの食べ物を与えた。
「ジュースとお菓子もあるよ」
「わあ、すてき!」
子供達はとても喜んだ。
「あんた達は迷子なのかい?」
「うん。木こりをしてるお父さんと一緒に森に来たんだけど、気づいたらはぐれちゃって」
おおかた、口減らしのために捨てられたというところだろうと魔女は考えた。
「そうかい。じゃあ、親が見つかるまでここに住むかい?」
「いいの?」
「ああ、もちろん。その代り、家事を手伝ってほしいのだが」
「分かった!」
「ありがとう、おばさん」
(久しぶりに、賑やかな生活というのも悪くない)