第三節
「連隊長殿! 一中隊、二中隊、集合しましたァ!!」
連隊副官の大尉が馬上の連隊長に敬礼と共に報告した。馬上にはケルトケッハ子爵マリエスタ陸軍教導連隊連隊長カージルト・ヨハイツ・モデルトレデト大佐。
「壮観だな」
「はい!」
モデルトレデト大佐が馬上から臨むのは、帝都郊外の練兵場に整列した総勢三百の近代歩兵。そのすべてが最新式の歩兵銃で武装している。小隊付の下士官たちが掲げる松明の灯りが彼らの赤い軍服を闇夜に照らし出す。
先帝から下賜されたはためく連隊旗が誇らしい。中世の意匠を据えた近代的な連隊旗。
「しかし、騎兵も砲兵も間に合いませんが?」
「構わん。帝都で砲撃するわけにもいかんからな。ただし、騎砲を一門用意しろ」
「は、はい! 直ちに!」
大城壁の向こうに火の手が上がっておよそ三刻。最寄りの城門に伝令をやっても門衛からは碌に情報を得られない。混乱だけでなく、マリエスタ陸軍に対する反発もあるのだろう。
騎砲が隊列に加わるのを待って、モデルトレデト大佐は告げた。
「ヴェリアリープ帝国の誇る近代陸軍の諸君!」
貴族、教会、魔術師、守旧派、あらゆる旧弊から忌み嫌われた新式陸軍が、今夜、帝都の危機に際して初めて本格的な戦闘に挑む。ついにこの日が来た。
「帝都に如何なる敵があるか今もわかってはいない!」
ここ二日訓練に当たったアルテプラーノ教官団はこの新しい軍隊を「使い物にならない」と言った。モデルトレデト大佐にも一抹の不安はあれど、今日こそ力を示さねばならない。
ヴェリアリープ帝国千年の歴史にとっても、モデルトレデト大佐とその思想にとっても、今夜が勝負なのだ。必ず、目的を果たさねばならない。
「しかし! 何者が立ち塞がろうとも、余の連隊は鉄火を以てそれを粉砕するだろう!」
モデルトレデト大佐は三百の精鋭を見つめると、高らかに下命した。
「マリエスタ陸軍教導連隊、出撃ッ!!」




