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かげろう  作者: 竹叢
8/8

8

それからしばらく姉と親しくすると言うこともなかった。姉は気にしてはいなかったろうが、僕は自分の不可思議な言葉をひそかに恥じていたし、姉も翌日からは以前と同じ冷たい目をした人形のような態度だったので、話すきっかけもなかった。

母は違った。以前よりも姉に優しくなった。嫌な優しさだった。食事の支度も率先してしたし、僕の弁当は自分で作った。姉はそれを口許だけで喜んでいた。キムラさんは姉に少しだけ冷たくなった。僕には相変わらず優しく、結果として姉だけが異質なもののようになった。

その頃、学校では姉が少し話題になっていた。僕が言うのも変な話だが、姉はどちらかと言うと美少女だったし、たまに弁当を忘れる僕のために一年の教室に来ていた。そのせいで一年の間ではちょっとした有名人になっていたが、本人はどこ吹く風で、全く頓着していなかった。

僕の下品な同級生は姉の性的な場面を見たことがあるかと聞いてきたり、家に来ようとした。僕は面倒だったからその手の話には取り合わなかったが、あるとき姉を困らせたくなって、二、三人の友達を連れて帰ることにした。

姉は案の定困ったようだ。彼らは特に話しかけたりはしないが、変な視線は送るしすくす笑ったりもする。姉の部屋を見たいとすら言い出した。さすがにそれは断ったが、僕は何となく優越感を感じていた。

こうして興味を持ちながらも余所余所しく自分のプライドを守って生活する時代は、生ぬるく居心地がよかった。

僕はいつでも、微妙な均衡の上で暮らしている感覚だった。ふと足元を見ると、子供時代の大切なものが壊れているのを発見しそうで、僕は手元しか見れなかった。


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