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かげろう  作者: 竹叢
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あの時の僕たちは不思議な時間の狭間にいた。あの年代の子供に有りがちな空想癖のようなものを抱えて、それでもその空想に霞がかかって感じる程には子供でもない。本人は子供の、あるいは大人のつもりでいたが、実際のところ、僕たちは何でもなかった。あのよくわからない時間の狭間で、僕と姉は二匹の蛇のように鎌首をもたげて、互いが互いに噛みついてやろうとしていた。

僕が小学校二年の夏に、僕の父は亡くなった。交通事故だった。父がいつも僕を送ってくれていた道で、飛び出してきた自転車を避けてハンドルを切ったところ、ガードレールに接触、車体はスピンして横転、自転車を運転していた子供は無事だったものの父は助からなかった。

それから二年後の春、母は再婚した。新しい父親はキムラさんと言って、優しい人だった。父と同じ会社の人で、どうやら父の部下だったらしい。キムラさんには僕よりもひとつ上の娘がいて、その子はミユキと言った。キムラさんは僕のことをユキと呼んで可愛がってくれた。

ミユキは僕の新しい家族になったが、キムラさんも母も、僕らの名前が似ているのを喜んで本当の姉弟みたいだと笑った。ミユキはいつもにこにこと笑っていた。何も言わずにただ人形のように笑っていた。母に似て色の黒い僕と、キムラさんに似て色の白いミユキは、似ても似つかない。僕は二重で甘った

れた目をしているが、ミユキは奥二重で切れ長な冷たい目だ。硬い骨と大きな体の僕と並ぶと、ミユキは小さく今にも壊れてしまいそうだった。

ミユキは僕を、キムラさんに習ってユキと呼んだ。僕はいつの間にか姉さんと呼ぶようになった。キムラさんと母はいつまで経っても仲が良く、僕たちが高校に入る頃になってもまだ新婚のようだったが、ある日突然キムラさんは死んだ。

自殺だった。最初に発見したのは姉だった。高校から帰ってきた姉がキムラさんの部屋に入ると、血塗れのキムラさんがいたそうだ。僕は父親を亡くすのは二度めだったが、キムラさんの死の方がはるかに打ちのめされた。

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