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扉を開けるとそこにはたくさんのプレイヤーが既に集まっていた。
「おっほぉーー、集まってんな~~!」
「日本のプレイヤーだけでこの人数だからな、もし20カ国同時だったら【バーチャルワールド】でさえラグるかもな」
「それだけ、蒼の【Crest】の性能とかデザインがいいのかな~。これは期待できるね、トーマ君」
「そ、そうだなっ」
なんで【亜夜/アヤ】は俺に振ってくるんだ?やべぇ、ドキッっとしちまう。
「ん、トーマ何赤くなってんだwww?もしかし」バキィッッ!!
「何か言った、ナオ?」「何でもありまへん」
『プレイヤー諸君、こちらに注目してください』
お、ようやく始まるのか。
『今から蒼の【Crest】取得イベントを開催します』
『これから、グループ毎に特設マップへと転送します』
『20分以内に、イベント用デュランを倒し、アイテムを取得してください』
『20分後には強制的にこのマップへと飛ばされるため注意してください』
『それでは転送を始めます』
「デュランの強さはパーティLvに合わせているんだよな?」「それでも20分って、間に合うかな・・・」
「リュウの言うとおりパーティLvならちょっと強いからめんどくさいなぁ」
((誰のせいでパーティの平均Lvが高くなってると思ってんだよ!!))
「早く倒してさっさと【Crest】を取るぞ」「リュウはもうちっと楽しめよ~ww」「戦闘好きのどっかの脳筋ゴリラとは違うんでね」「まだそのネタ引っ張る!!?」
「あ、転送が来たよ」「そいじゃ、いっちょ頑張るか~」
「全員そろったし、さっそく行くか!」「えーっと、マップの南西部に反応があるよ。」「よし、みんなダッシュだぁ~~!!」
「おい、俺はSTR─VIT型だから足速くねーんだよ!おいてくなぁ~!」「【ステップ】でも使えば良いだろう、脳筋ゴリラ!」「おぉ、それは気が付かなかったぜ!」
ガハハ、と笑うナオ。どこまでアホなんだコイツは。
「あれぇ、【ステップ】使えねーぞ!?」
ついに頭が壊れたか・・・
「ホントだ。私も何個かスキル使試したけど発動しなかったよ?」「運営のミスかな?」
珍しいな。いくらイベントだからって運営は手を抜いたことはないのに・・・
「まあイベントなんだから攻撃スキルとか無しでも十分倒せるよ」「そうだろうが、何か嫌な予感がするな・・・」「リュウは無駄に心配性だな~。大丈夫だろ」
「お前は早く追いつけよ、いくらなんでも足遅すぎだ」「悪かったなノ・ロ・マで」
「居たぞ、お喋りはそこまでだ」
さっきよりも低い声色で呼びかける。その声に全員の顔つきが一変し、各々の武器を出現させる。このデュランは通常固体よりかなり大きいようだ。強さも大きさに比例するほどと見て間違いないだろう。
(3・・・2・・・1・・・ッ!!)
目で合図を送り一斉にデュランへと襲い掛かる。不意を衝かれたようで対応しきれていない。アヤとケイが同時にダガーで斬りつける。が、相手が大きすぎるため急所には届かず、ダメージがあまり入っていない。
「急所まで届かない!?」
「まかせろ!」
そう叫んでリュウが跳んだ。回転させ、威力を高めた両手のトンファーで叩きつける。続いてナオも両手斧を振りかざし、大上段から斬りつける。威力自体はあるのだが、やはりこのサイズでは防御力もかなりのものなのだろう。リュウの攻撃が弾かれたようだ。リュウがバランスを崩した隙にデュランが巨体に見合わないスピードで詰め寄ってくる。なんとか体を捻り攻撃をかわそうとするが避けきれなかったようだ。HPゲージの2割が削られる。
「ダメージ入んないし、攻撃は強いし・・・」「運営はゲームバランス考えろよ!!」
ナオが若干キレ気味に叫ぶ。やはり今までとは勝手が違うだろう。ゲーム内で重要な役割を果たす【Crest】を取るためにはエリアのボスと戦う必要がある。今回のデュランはボスとほとんどサイズは変わらないが、普通ボスと対峙するときには何グループかでレイドを組み、大人数で戦うのが基本であり、30人で挑んでも時間もかなりかかってしまう。少なくとも5人で戦うような相手じゃないという事は確かだ。やはり俺がやるしかないだろう。そう考え、巨大なランスを出現させる。
「どうしたんだ、トーマ?ランスなんかじゃ急所には届かないぞ!」「こうするんだよ」
そう言って俺はランスを静かに構え、投擲のフォームで勢いよく投げつける。ビュウッ、と風を切り真っ直ぐとデュランに向かっていく。しかしデュランも先ほど見せた素早さでランスを避ける。ただしこれは計算の内。ランスを投げてすぐに俺はデュランの近くにあるオブジェクト、木に向かって走る。もうすぐ激突する寸前で跳躍し、三角跳びの要領で巨大なデュランの頭まで跳んだ。そして先ほど投げたランスを手元へと呼び戻し自分の背丈ほどの太刀へと形を変える。【Crest】ではこのような使い方もできるため、他のゲームであるような投擲用アイテムのストックがなくなる、ということがないため非常に便利である。スキルは使えない上、滞空時間も限られるため3回斬りつけるだけに留まる。しかし急所に当てたという事、そして鍛え上げられたSTRとAGI補正によって鋭く重い連撃を与えたため、先ほどのリュウ達を凌ぐダメージを与えたようだ。
「・・・さすが最前線プレイヤー、だな」「あぁ、だがスキルが使えないからいつもより手こずるだろうな」
軽いやり取りを交わし、間髪入れずにまた攻める。オブジェクトを利用し急所にどんどん攻撃を叩き込む。リュウもポーションで回復したようで、また攻撃に参加し始めた。・・・アイテムは使う事ができるのか?となるとやはりスキルが使えないのはバグか・・・?
「トーマ、あと少しだ!早く来い!!」
考えている内にナオ達は既にゲージの6割を削っていた。オブジェクトを利用した立ち回りで、被ダメージも少ないようだ。俺も攻撃に参加し、残り7分を残したところでデュランを倒した。
「あ~!【LastAttack】取り損ねた~~!!」「ドンマイドンマイww」「お前が取ったんだろうが!!」
「でも【スキル】とか【装備魔法】使えたらもっと楽だったな~」「装備魔法はトーマ君しか持ってないでしょ!ずるいなぁ・・・」
そんな話をしている内に制限時間の20分が過ぎたようで転送が始まった。