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第十六話◇ 猫と三奈

動物を飼うことは原則として俺は禁止している。なぜなら子供がペットを飼う、といっても実際は他人が世話をすることになるのが基本だからだ。

「つまり、お前はその猫を再び元あった場所に戻してやらなければならない」

 妹が連れてきた猫を指さして俺はそう言った。俺が帰ると何故か誰かがシャワーに入っていて確認すると妹が猫を洗っていたらしい。俺は勿論激怒した。説教した。迫った。でも三奈は頑として首を縦に振ってくれないのだ。

「私が世話をしないという証明も無いじゃない」

「そう言う奴に限ってだな―――」

「兄貴はいちいちうるさいのよ! 私が飼いたいと言っているのになんで許可してくれないの!?」

なんでってそりゃあ、

「いいか!? そいつは生き物だ! お前は一人の子供を授かった、その位の事を考えて世話をしてやらなければならない! お前にそれが出来るのか!?」

「できるわ! やってやるわよ! あんたが何と言おうと私はこの子を守るわ! 路上にうち捨てられている姿はもう見たくない!」

 驚いた……三奈はそこまで深い覚悟があったのか。

「問おう、お前はその猫を死ぬまで看取り、そいつの最期まで共に過ごすことを誓うか?」

「誓うわ!」

俺も頑固親父にはなりたくない。ここは兄として素直に退く所だろう。

「まあ、とりあえず仮許可だけは出しておいてやろう。ただし、猫の毛一本落ちていたらそいつは"あぼん"だ。いいな?」

「良いわ。あなたの期待はせいぜい裏切ってやるわよ」

「良かろう」

俺はため息をつきながら答えた。

「良かったわね! 綾音!」

三奈が猫に向かって唐突に言った。

「ん? その猫綾音というのか?」

俺が聞くと三奈が口を押さえて何故か驚愕の表情を浮かべている。いったいどうしたというのだろうか。

「え、ええ綾音って言うの。雌なのよ」

少し焦ったように此方に向かって言う三奈。怪しいが、どう怪しめばいいか分からん。

「……そうか。よし綾音」

俺が猫に対してそう言うと猫は此方を向いてきた。日本語が理解できるのか?

「お前は三奈と助け合って生きるんだぞ。いいな?」

心なしか猫は頷いた気がした。俺はフッと一回笑ってから立ち上がる。

「まあ、頑張れよ」

俺はとっとと自分の部屋に戻っていった。宿題あるし。


 私こと三奈は猫を拾った。兄に話したらおそらく反対されることを承知していた。しかし拾った。

「良かったね綾音。これでなんとかあなたの飼い主が探せるようになったわ」

「うむ、私としてもありがたい」

そう―――この猫は喋るのだから。


 ―――帰り道にて 

 喋る猫というのは非常に好奇心をそそるものがある。私は学校帰りの道に塀の上に猫が一匹座っているのを見た。その猫を見つつ素通りしようとすると何者かの声がした。

「やはり、私を拾ってくれる飼い主は居ないのか……」

私はとっさに上を向いた。神の声だと思ったからだ。

「……気のせいかしら」

私は一回嘆息する。

「まさか!? あなたは私の声が聞けるのか!?」

私が上を向いている間に横から声がかかる。かかった方向を向くとそちらには目を見開いた猫が居た。

「……疲れてるのかしら」

まさか喋る猫なんて存在するはずないしねえ。私は気味が悪いのでとっとと歩いて行こうとした。

「おおおい! 待ってくれよ!」

やはり同じ声だ。後ろを振り向くと猫が私の後ろを付いてきていた。

「……まさか?」

私は自分が信じられないと言ったような口ぶりでそう呟いた。

「そのまさかだよ」

猫は、明らかに口を開いていた。


 

 現在部屋で二人(一匹と一人)で向かい合って話す私たち。猫は妙に偉そうにベッドの上にて座っている。

「でも、なんで綾音は喋ることができるようになったのかしら?」

「私にもそこは分からないよ。神のいたずらかもしれないな」

この猫は猫のくせにいちいち芝居ぶった口ぶりなのだ。猫のくせに私より年上なんじゃないかという錯覚さえも起こさせるのだ。

「……そう、でもあなた兄貴の言葉に反応していたけど、結構兄貴鋭いからもしかすると気付かれたかも知れないわよ?」

「いやそれはないだろう」

「そうかしら。まあ兄貴に気付かれてもそこまで問題はないのだけれど。ところであなたの飼い主って誰なの?」

私がそう聞くと猫は目を閉じて足で頬を掻く仕草をする。

「実際はビジョンがあまり無い」

「どういうことかしら?」

もしや飼い主を覚えていないとか言う場合ではないのでしょうか?

「だから覚えていないと言ったのだ」

「えええええええええ!? それは困るわよ! じゃあどうやって探すのよ!?」

「私は超能力も使えない。まあ、過ごしているうちに分かるだろう」

「……まあとりあえず毛とかはなるべく落とさないようにしてちょうだい。お父さんは良いけれど兄貴は結構そう言う所うるさいから」

「三奈の所は兄が一家の大黒柱なのか?」

どちらかと言えばそんな感じなのだろうか、いや母か?

「うーん。分からないけどとりあえずうるさいのは二番目の兄貴ということだけは分かるわ」

「うむ、承知した。二番目の兄の前ではなるべく素晴らしい猫のように振る舞うとしよう」

「お願いね」

こうして、私と猫の共同生活が始まった。

次は科学者がでます。

美少女の科学者じゃなくて三十歳くらいのおっさんです。

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