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第十話◇2 宝条にメールしたばかりに 

→『お前なにうちに来とんねんのドアホ』

←『さあ言え』

車から宝条らしき人影が降りてきたし。うわこっちみんな。

→『駄目だと言ったら』

←『挨拶しに行く』

→『駄目』

宝条が玄関に向かって歩き出しやがった。おい待て冗談ですよ!

→『冗談冗談』

だめだ! 全く携帯を見ていない!

「冗談ですから! ホント止めてくださいうちの親はそういうのしつこいんですって! 堪忍してつかあさい!」

俺は精一杯大声で叫ぶ。宝条は二階の俺を向く。

「じゃあ出してくれる!?」

なんでだよ……なんであなたはそこまでこだわるのですか。

「……」

俺は何も言えなかった。だからスタスタ行っちゃうのかあなたは。

「待って! じゃあ男として出すのはどう?」

これなら良いだろ。

「駄目だ」

ぬおおおおおおおお! 八方ふさがりではないか! 

「じゃあ宝条出さなければいいじゃん! 俺なんか出さずに書けばいいじゃないか!」

それが一番楽なんじゃないか。

「だって出さないとつまらないんですもの」

俺はお前の何だ?

「……とにかく、分かった。お前はそんなに俺を出したくて、そして俺にお前を出して欲しいんだな?」

宝条はこくりとうなずく。ここは大人な私が折れてやるしか無かろう。怖いほどの執念だ、理由が分からないからさらに怖い。

「分かったならお引き取り願いたい。回れ右」

俺はさっさと宝条を帰らせるべく指示をする。宝条はきびすを返し歩き出した。しかし、門を過ぎたところで一度立ち止まり、此方を振り返る。

「どうした?」

「一つ言い忘れた。村山は私の下僕役で出すのだった」

俺は二階から飛び降り、奇襲しようとしたが怖くなって止めた。おれはすぐに自分の机に戻る。

 宝条は去った。誰だ宝条を産んだのは、親の顔が見てみたいわ全く!

「西暁寺先輩は……いいややっぱり」

 さて、小説と言うものは主軸が必要だ。さっきまで考えていた戦記物は宝条のせいで設定を大幅に変更する必要が出てきた。だが! 切り替えの早い俺のことだ。多分良いアイデアが浮かぶはず。

 丁度その時、下で玄関の開いて閉まる音がした。妹が帰ってきたらしい。そしてそのまま急ぎ足で二階に上がってくる音がする。おかしいな、いつもならリビングである程度の時間を過ごすはずだ……。

「バカアニキ!!」

部屋のドアに警戒していた俺はしっかりと身構えていたがでもやっぱり本当に来るとは思っていなかったからびっくりした。

「突然なんだ? 入るときはノックをして失礼しますだろバカチンが」

「そんなことじゃねえよ! それよりもあんた彼女できたの!?」

いきなりなんだこの妹は。俺の彼女はアサルトライフルだってこの前語って聞かせた記憶はないが彼女がいると言った記憶もない。

「誰に聞いたか答えなさい。折檻してくるから」

「何かリビングにすごく綺麗な人がいてさ! 母さんと楽しそうに話してた!」

「髪型は」

「長かった。すごく綺麗に縛ってあった」

宝条だ。

「いいか、そいつの言ってることは十中八九嘘だ」

俺はそう言ってさあリビングへ。しかし宝条ってこんないたずらキャラだったとは知らなかったよ。ぶっ殺してやりたくなるぜ。

 リビングの扉の前。宝条がドアの先にいて母と話していると言う。どういった内容だろうか。

「初対面で告白された!? うちの息子にそんな度胸があるなんて」

宝条、お前一体何を言った?

「ええ、私もその時は驚きましたよ。そのまま押し切られて無理矢理OKと言わされ。そして……そのあとの密会の内容ですがここから先はR-18です」

身に覚えないって言うか想像すらしてないって言うか……。とにかく突入だ! これ以上変な偏見を植え付けられるとまずい! 家族の中での立ち位置が! ガチャッバン!

「宝条! 貴様なにを言う!」

俺はまず大声で宝条にかみつく。

「犯罪者が来たわ」

母がそんな事を言ってきた。宝条も冷たい目線で此方を見ている。ふざけるな、と言いたいですね。

「私は……ああ」

宝条がさも悲しそうな顔で頭を抱えてうなる。

「母さん! この女の言ってることは全て嘘だ! 信じちゃいけない!」

俺は声高々に主張。しかし宝条、お前はまだ知り合って一日目だってのに飛ばしすぎだ。

「女の子の言うことは正しいのよ。あなたが悪いの」

どういう理論だか知らないがとにかく息子の俺の方が宝条より信用度が低いと言うことだけは分かった。駄目じゃんそれ。

「とにかく宝条の言っていることはまるっきり嘘だすよ!」

「村山は覚えていないのか……あんな仕打ち……」

おい、しつこいぞ貴様。。

「とにかく! 宝条は帰れ! お前がいると駄目だ!」

俺は宝条を無理矢理引っ張って立ち上がらせ、玄関まで後ろから押し出す。

「こんな美人が来ているのにそんな扱いはないだろう」

「変人の間違いだ。さあ帰った帰った」

「そうか、帰るよ」

宝条は一瞬いままで見せたことのない暗く、寂しい顔を見せた。だがその程度でぶれてたまるか。

 俺が無言で立っていると宝条はゆっくりとドアを開けて出て行こうとする。しかし、その過程に何度も静止するので聞いてみた。

「なんでそんなにちょくちょく静止するんだお前は!」

「いや、ここは呼び止める所だろう? できるだけチャンスを与えようと思ってな」

やっぱり演技じゃねえか。

「いらんわそんなチャンス」

「そうか……」

また宝条が暗い顔になる。いいからお前は早くいけよ。

 そうして、ドアは閉められた。もやもやしたものは残らず、すがすがしい気持ちで一杯でした。

「長い件だった……」

粘りすぎだぞあの女。いやそれどころじゃなくて早く母の誤解を解かないといけないか。俺はそう考えながらリビングへ向かった。

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