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高校生活  作者: 黒猫
22/23

父とラーメン


「全員バスに乗ったかー? 学級委員」


 先生に呼ばれて、うちは点呼を取って先生に伝える。

 全員乗ってからバスはゆっくりと走りだした。

 行きは酔っちゃったから、帰りは一番前の席に谷くんと並んで座った。

 気まずかったけど優衣と隣になるよりもマシな気がした。


 バスに乗り込む前に優衣に話しかけられた。


「途中ではぐれちゃった。ごめんね」

「ううん。大丈夫やで。うちこそはぐれてごめん」


 普通に話せたと思う。優衣はホンマに申し訳なさそうやった。

 怖くて、何かあったのかを聞き出すことは出来ひんかった。



 バスが着いて直ぐに解散した。そのままどっか遊びに行く人らもいたけど、うちはパス。

 今日は色々とありすぎて疲れてたから、直ぐに帰りたかってん。


「ただいまーって、えぇ!」


 家に帰ると何故かお父さんがテレビを見てくつろいでいた。

 いつもはそんな事ないからビックリして大声を出してまうわ。


「おかえり。今日は珍しく外食しよか」


 ニッコリと笑う優しい笑顔のお父さん。娘を大事に思ってくれてるって凄い感じる。

 うちは服を着替えて急いで支度する。外食とかこっちに来て初めてや。


「何食べに行きたい?」

「ラーメン」


 父の質問にうちはほとんど声を重ねるようにして答える。

 全く女の子らしくないけど、うちの大好物はラーメンやねん。

 ラーメン食べてる時は凄い幸せやなぁって感じる。


「ホンマ千幸はラーメン好きやなぁ」


 呆れるようにそう言うけど、いつもうちの食べたいものに合わせてくれるのも知ってる。

 こうやっていつまでも甘えるだけの子供でいたいけど、そうもいかへんよなぁ。


「ここのラーメン美味しいねて。仕事先の人に教えてもらってん」


 父がそう言って連れていってくれた店は、小じんまりとした、店主が優しそうな店やった。

 うちは醤油ラーメンを頼んで、父はチャーハン定食。

 おいしいなぁ、なんて言いながら熱いラーメンを二人で食べる。


「学校どうや? 友達できたか?」

「うん。優衣って言うすっごい美人さんと友達になった」


 うちが嬉しそうに言うと、今度家に連れてこいって言われた。

 また今度な、って言ってまた会話を変える。

 幼い頃からうちは、人に話を聞いてもらうのが好きやった。

 学校であったことを家族に話して、家であったことを友達に話す。

 よくネタ尽きひんなぁ、って皆に言われるぐらい。


「好きな男の子は?」

「おらんよー。出来たらお父さん寂しいやろ?」


 そんな質問をされて、一瞬翔太くんが頭の中に浮かぶけど直ぐにかき消して笑って答える。

 あれは、好きってわけではないんやと思う。

 気になるけど好きじゃない。色々あって意識してるだけや、って自分に言い聞かせる。


「あんな、千幸。大事な話があんねん」


 ラーメンは全部食べ終わって、スープを飲んでる時に、いきなり父の声が真剣になった。

 あぁ、これは嫌な感じや。一回経験した。

 この声とこの言い方は、絶対良いことじゃない。離婚を切り出す時と被る。

 でもうちは良い子ぶって、どうしたん? って何にも気づかへんふりして聞く。


「お父さん、新しいお母さんと再婚してもええか?」

「なんやいきなりやなぁ」


 ビックリしたけど、うちは冗談っぽくリアクションをとる。こういう時、真剣になるんは苦手や。


「千幸に家の事全部させてんのも悪いと思ってな、探しててん」


 そうか。うちの為を思ってやねんな。そんなんで簡単に再婚して良いん?


「凄い良い人やから千幸も気に入ると思う。五歳の女の子もおんねんけど」

「うん。うちも家事大変やったし、良いと思う」


 アカンなんか言えるわけないやん。そんな言葉は飲み込んで、うちは良い子でいる。

 いきなりで頭がついていかへんけど、賛成しやなアカン気がして。


「そっかぁ、良かったわ。明日一回会ってほしいから家に連れてくるわな」


 そんな嬉しそうな顔されたら、嫌とか言えへんやん。

 うちは出来る限り笑顔を作って、うん、と返事をした。

 いつもやったら半分ぐらい飲むスープをほぼ全部残して、うちらは家に帰った。

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