ジャンケン大会
ほとんどの高校では、委員会というものが存在する。
学校によっては全員が入らなくても良いような所もあるけど、残念ながらここは全員参加型らしい。
「はーい。じゃあ今日は委員会を決めるぞ。まず最初に学級委員だが……誰かやってくれる人いないか?」
担任の黒田 隆先生が、皆を見回して大きな声で尋ねる。
黒田先生はどちらかというと熱血系やけど、鬱陶しい感じではない。
むしろ、話も面白いし、親しみやすいから早くも生徒に人気が出てきてる。
でもまぁこういう時ってシーンっとなるのがお決まり。
皆が俯いているのがひしひしと伝わってくる。誰か手挙げたら良いのに、と思いながら皆で黙りこむ。
「決まりそうにないから、ジャンケンで良いか?」
先生がやれやれといった様子で皆に聞く。何度もこういうシーンを経験してるんやろうな。
皆からは不満の声が上がってるけど、誰も立候補がおらんねんやったらしょうがない。
「男女一名ずつ選出するからな。負けても文句言うなよー」
不満げな顔をしながら、皆ぞろぞろと席を立って集まってくる。
ちなみにうちも不満な一人やけどな。
学級委員なんて一番面倒くさい委員や。クラスの代表やし、決め事する時は前に多々なアカンし。
目立つのが嫌いなうちには、一番向いてない。
でもまぁ、こんだけおったら最後まで負けるって事はないやろ。
「さーいしょーはグー! じゃーんけーん……」
ホイ、とうちが出したのはチョキ。うちの横はグーグーグーグー………あれ?
ちょっと待って、んなアホな。普通こんな大人数でやったら最初はあいこやろ。
やのに周りを見たらグーとチョキしか見当たらへん。どんな確率やねん。
「やったー! 勝った勝った」
女の子達がキャピキャピと喜んでいるのを横目に、必死でチョキの人を探す。
いきなり五人しか残らんかった。これで負けたら相当運悪いで。
運で思い出したけど、今日水瓶座最下位やったやん。嫌なこと思い出してもうた。
「……ーン、ホイ」
余計なこと考えてたら知らん間に掛け声が始まってた。咄嗟に出したうちの手はシッカリと握られてる。
この前テレビでやってたけど、咄嗟にジャンケンしたらグー出す確率が高いらしいな。
恐る恐る周りを見ると、パーが四人、グーが一人。……決定や。
「女子決まったら前に出てこーい」
皆が嬉しそうに席に着く中、うちは渋々と先生の前に行く。
学級委員なんか人生でやったことないのに。水瓶座のアホー。
「おぉ、笹本か。一年間よろしくな」
「はい。よろしくお願いします」
うちは先生に頭を下げて、隠れて大きなため息をつく。残る希望は男子の学級委員。
目立つのが大好きで仕切るのが上手な子やったら、責任を全部押し付けよ。