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高校生活  作者: 黒猫
17/23

告白?


 彩さんの事が、不思議で不思議で仕方なかった。

 でも、考えても分かるわけないから、とりあえずその事は頭から追い出した。

 今は慣れていないお粥を作るんに、全力を尽くそう。


「お粥とか一回作ったぐらいやからなぁ」


 全然自信なく作ったけど、だんだんいい匂いがしてきた。

 味見してみるけど、普通に美味しい。いける。

 案外作れるもんやん。と、自分に感動してたら、うちの携帯がなった。


「もしもし。うん、そう……うん…大丈夫。はーい、おやすみ」


 電話を切ってちょっとため息。お父さん、今日は仕事で帰って来れへんらしい。

 あっ、でも、今日は帰って来られても困るな。

 翔太くんが家で寝てるん見たら、ビックリして気絶しそうやし。


「彼氏君?」


 いつの間にか起きてた翔太くんが、楽しそうに笑いながら聞いてくる。

 顔色がさっきより良くなってるから、安心した。


「んなわけないやん。彼氏おったらアンタなんか家に入れへんわ」


 キツイ言い方になったけど、彼は全然凹んでるようには見えへんから大丈夫やろ。

 体温計を渡して測ってもらったら、だいぶ熱は下がってた。

 凄まじい回復力やなぁ。


「食欲ある? お粥作ってんけど、食べる?」

「うん」


 これで食べへんって言われたらどうしよかと思ったけど、食べてくれるらしい。

 お父さんのお茶碗に入れて渡す。


「熱いから気ぃつけてな」

「ありがとう」

「……あっ、おいしいよ」


 一口食べて、うちが感想を待ってる事に気づいて、おいしいって言ってくれた。

 心の中でガッツポーズ。うちはやれば出来る子や。


「あのさ、彩さんって誰?」


 無言で食べ続けてた翔太くんの手が、ピタッと止まった。


「誰に聞いた?」


 そう言う彼の顔は、すごく怖くて思わず身を引いた。

 すごい突っ込んだらアカン事を聞いてしまったらしい。

 でも、ここまで来たら引き下がれへん。


「翔太くんが、さっき寝ぼけて言ってた」


 うちが彩さんになりきってたんは、黙っておこう。怒られそうやから。

 そしたら翔太くんは、ため息をついてお粥を食べ直す。


「聞いたらアカンって思ってんけど、だって、しゃあないやん! そっちが勝手に言ってんから!」


 焦って思ったより大きな声が出てしもた。

 翔太くんはもう一回ため息をついて、うちの顔を見る。


「俺が好きだった人。それだけ。報われなかったけどね」


 なんや、付き合ってなかったんか。でも、だいたいは想像と合ってた。

 でも、それでもまだモヤモヤしてんのは、きっとこいつの涙のせいや。

 何で泣いてたんかが気になってしゃあない。


「泣いてた、何で?」


 恐る恐る片言で聞くと、また翔太くんの手が止まった。

 あぁ、地雷踏んだな。って反省してると、怖い顔でこっちを見てくる。


「何でアンタに言わなきゃなんないの? アンタ俺の何さ。興味本位で何でも聞いてくんな」


 一言一言がグサッと突き刺さる。泣きそうになるんを耐えるので精一杯。

 そんな冷たいこと言わんで良いやんか。そりゃ、興味本位っていうのはあるかもしれへんけど。


「ごめん。でも、気になるから。自分でも何でか分からんけど、アンタの事気になんねんもん」


 言ってから気づいたけど、これって告白?

 いやいやいや、好きじゃない。ただ、気になるだけ。何を考えてんのか、知りたいだけ。


「それって告白? 悪いけど、俺彼女いるから」


 なんか断られた。別に告白したわけじゃないけど、悲しくなってくる。

 止められるわけない涙が次々出てくる。


「ごちそっさん」


 翔太くんはお粥を全部食べ終わって、服を着替えて荷物をまとめている。

 女の子が泣いてる前で、こいつはよく冷静でいれるな。


「お粥ありがと。んじゃ、また明日学校で」


 そう言って靴を履いて帰ろうとするから、うちは慌てて腕を掴んだ。

 別に何か言いたいわけじゃない。口開いたら大声で泣きそうやから、何も言えへん。

 でも、帰ってほしくなかったのはホンマ。


「……俺はやめとけ」


 最後に意味深な言葉を残して、翔太くんは腕を振り払って家を出て行った。


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