特に
次の日になっても、昨日の彼の行動の不思議でしゃあなかった。
あの時はただただ怖くて、考える暇もなかったけど。
何にイライラしてたんやろ? なんであんな泣きそうな顔してたんやろ?
そういえば、学校でも元気なかったし、昨日どうしたんやろ?
「千幸。何考え込んでるの?」
ずっと難しい顔をしてると、優衣が心配そうに声をかけてきた。
ホンマにこの子は優しいなぁ。しみじみ感じるわ。
「何もないよ。せや、何かいいバイト先ない?」
笑顔でこっちも応じて、話題を別のものに変える。
出来れば家の近くが良いな。ガッツリ働けるようなところ。
「中学の時の先輩、マックで働いてるんだけど、かなりガッツリ働けるらしいよ。人間関係も良いみたいだし、オススメかな」
ナイス優衣。こういう時に決まって良い返事をしてくれる。
ホンマに頼れる姉貴肌やわ。
ガッツリ働けて、人間関係も良いなら、一回見に行ってみよう。
「優衣も一緒に行かん?」
一人で行くより、知り合いがいた方が心強いし。
「うーん、先輩と一緒ってちょっとやりにくいから、違うとこ探すね」
って言って断られた。うーん、確かにやりにくいかも。気まずいしな。
まー、良いや。バイトの友達も頑張って作ろ。
「有力情報ありがとうございます、社長」
「いやいや、大したことじゃないよ。まぁ頑張りたまえ」
意味の分からない高校生ノリを入れて笑ってると、急に優衣の笑い声がピタッと止まった。
あれ? 笑い冷めるんえらい急やな。
「ずっと言おうと思ってたんだけど……」
口ごもって言いにくそうにしている優衣を見てると、なんだか胸騒ぎがする。
なんかアカン事したんかな? 不安で、何?と聞き返す。
「翔太の事」
翔太くんの名前が出た途端、ドキッと胸の音が鳴ったような気がした。そんくらい驚いた。
昨日のことが頭の中を駆け巡る。あれがバレたん?
「アイツ、気をつけたほうが良いよ」
「え?」
「女ったらしっていうのもあるけど、千幸は特に」
「うちが?」
気をつけたほうが良いっていうのは、すごくよく分かった。昨日もあんなコトあったし。
でも、特にうちってどういう意味?気をつけろってもはや手遅れじゃない?
「実は、昨日……」
うちは我慢出来んくなって、昨日の出来事を全部優衣に話した。
喋ってたら泣くんちゃうかと思ったけど、案外平気で話せた。