本屋
本屋に入って直ぐ左には、新刊と話題の作品が置いてある。
そこで一通り題名を見ていると、面白そうなのがいくつかあった。
毎回、買いすぎるのに、時間がなくて読めへんかったりする事が多い。
「新刊出てるやん!」
思わず声に出して言ってしまったから、他のお客さんの目が痛い。
だって、好きなシリーズの新刊出てたら、テンション上がりますやん。
「あっ、千幸ちゃんじゃん」
恥ずかしくて小さくなって新刊を手に取ると、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
顔を上げると、私服の翔太くんが笑って手を振ってる。
私服って新鮮やなぁ。っていうか、この服のセンスうち好きかも。
「聞き覚えのある声が聞こえたなぁと思ったら、千幸ちゃんだったか」
どうやらさっきの声でうちに気づいたらしい。恥ずかしい。
それにしても、この人とはよくバッタリ会うなぁ。運命?なわけないか。
「そのシリーズ、面白いよね。俺も読んでるよ」
うちが手に取った新刊を見て、翔太くんは楽しそうに喋る。
「ホンマに!? メッチャ面白いねん。毎回ハラハラドキドキで目が離せへんっていうか……」
そこまで一気に喋って、また自分の声が大きくなってる事に気づいた。
またあの子?みたいな目で他のお客さんがこっちを見ている。
翔太くんは、目の前で笑い堪えてるし。
なんかうちって、テンション上がりすぎたら、周りが見えへんようになるタイプらしい。
「この小説家の作品、他にも持ってるよ。見に来る?」
笑いが引いてから翔太くんが言う。
それは是非とも読みたい!あっ、でも家に行くのってさすがにマズイかな。
というかこの人は、何を考えてるんか分からん。
「おいでよ。大丈夫、家に誰もいないから」
そんな爽やかスマイルで言われたら、断れないじゃないか。と自分に言い訳をする。
「行く」
ハッキリとうちが返事すると、翔太くんは嬉しそうにオッケー、と返した。
そんなに笑顔向けられたら、ちょっと勘違いするとか、考えへんのかこの人は。
既に、クラス内でも彼の事が好きって女の子が急上昇中。
うちはそういうのに、流されるのは嫌いやけど。
それにしても、男の子の家に行くのって小学生以来な気がする。
中学生になると、男女の間に大きな溝が出来たからなぁ。
小学校は男女関係なく仲良しやったのに。