公園
「優衣。仮入部どこ行くん?」
放課後、うちと優衣は学校近くの公園で喋っていた。
ちなみに仮入部とは、部活動に新入生が練習に参加させてもらう行事のこと。
期間は一週間で、何個の部活動に参加しても良いらしい。
もちろん、うちはバドミントン部に行く予定。
「んー、私はバイトしたいから、入らないでおこうかな」
ブランコで立ちこぎしながら優衣が答える。グングン高くなる。
うちはその横で座って乗っている。実は、ブランコに乗ってると何故か酔う体質やねん。
小さい頃は乗れててんけどなぁ。
「そっかぁ。バイトもしたいよなぁ」
確かに部活をせずに、バイトでお小遣いを稼ぐっていうのもアリやな。
っていうか、よく考えたら、うちが部活したら家事する人おらんくなってまうやん。
あーあ。部活は無理かなぁ。
「どーしたの?」
大きなため息をつくと、優衣が心配そうな顔でこっちを見ている。
漕ぐのを止めた優衣のブランコは、だんだん揺れが小さくなっていく。
「ううん。何でもない」
ニッと出来るだけ明るい笑顔を返して、ダイジョーブと言ってみせる。
しょうがない。そうやって諦めやなアカン事って、これからいっぱい出てくるやろ。
「そんな事よりさ、校外学習の場所どうする?」
そう聞いて、うちはブランコを下りて次はシーソーに乗る。
優衣も黙ってシーソーに来てくれた。シーソーとか乗るんメッチャ久しぶり。
「うーん。やっぱり定番だとBBQとか?」
なるほど。バーベキューは定番なんか。皆で食べれるし、良いやん。
となると、やっぱり川かなぁ。
「バーベキュー出来る場所、知ってるよ。そこならアスレチックもあるし。良いんじゃない?」
おぉ。それはかなりナイスアイデアや!
バーベキュー食べてから、自由行動でアスレチック。完璧やん。
第一候補として入れとこ。
「よーし、じゃあ候補決まったし、マクドにでも寄る?」
ルンルンの気持ちでうちは聞いてんけど、優衣は用事があるからって帰ってしもた。
まぁ、いつでも暇ってわけじゃないしな。
バイバイして、うちは無駄に遠回りして家路を歩く。
帰っても特にすることないし。あっ、そう言えばバイト探さんな。
「こんなとこに本屋あったんや」
知らんかった、と思いながら駅の近くの本屋に立ち寄った。
読書はうちの唯一の趣味。本を読んでる間だけは、その世界に浸れるから。