海、山、川、公園
「千幸おはよ」
「おはよー」
次の日、学校に着くと優衣が声をかけてくれた。
マクドで喋ってたのは昨日やのに、もっと前に感じる。
自分の席に座って辺りを見渡す。まだ喋ったことない人ばっかりや。
その中で一際目立つのが、茶髪の翔太くん。
顔を伏せて寝てるけど、それでもやっぱり目立つ。茶髪やからとかじゃなくて、雰囲気が違うねん。
ああやって皆と一緒にいても、凄い存在感があるんやなぁ。
グダグダと考えこんでたら、先生が教室に入ってきた。
そのままSHRが始まる。事務連絡を早く済ませて先生は帰っていく。
今日も普通に5時間授業を終えた。
弁当は、嬉しいことに優衣と二人で食べた。初めてやから嬉しくて、メッチャ喋った。
他の授業は、まぁ普通かな。
レベルを下げて入って来た高校やから、勉強はそんなにしんどいって事はないから安心。
多分、欠らんと思う。英語は心配やけど……。
そして六時間目は
「校外学習の場所決めるぞ。学級委員の二人よろしくー」
と、先生に責任を任せられたうちと翔太くんは、教卓の前に並んで立った。
昨日は何の意識もなかったけど、イケメンやと思ったせいで、隣にいるだけで緊張する。
それに、昨日の夜のこともあるし。
「遊園地とか?」
「遊園地は毎年駄目らしいよ」
「川とか海は?」
「いやぁ、まだ寒いっしょ」
「山登りとかどーよ」
「疲れるー」
「公園とかで良いんじゃない?」
「そんなとこで何すんの?」
学級委員が何も言わんでも、勝手にクラスは盛り上がってる。
校外学習っていうのは高校の日帰り遠足みたいなもので、自分達で行き先が決めれるらしい。
仲良くなろうの会、みたいなもんやな。
色々意見が出るんは良いけど、こういうのってなかなか決めかねる。
「俺、黒板に書くから、まとめといて」
翔太くんはそれだけうちに伝えて、黒板に文字を書き始める。
あれ?なんか今日、元気ないなぁ。どーしたんやろ。
「えーっと、川と海と山と公園以外で、何か意見ある人いませんか?」
出来る限り声を張って聞くと、皆黙り込んだ。他に案はないみたい。
なんかパッとする意見がないなぁ。
うちが悩んでると、皆ドンドン違う話していってる。昨日の晩ご飯とか、今話さんんでも良いやん。
こうなると、だんだん雑談が多くなってグダグダになんねんなぁ。
「じゃあさ、明日までに各自行きたい場所を具体的に決めてきてよ。んじゃ、今日は終わり」
翔太くんが今まで黙ってたくせに、いきなりまとめて席に座る。
えぇ。そんなんで良いんか?ってうちが困惑してたら、先生が前に出てきた。
「俺も場所考えてくるわ。じゃあ今日はこれで解散します。号令」
先生に言われて、号令係が掛け声をかけて、今日は終わった。
各自考えるって難しいわぁ。